ふとマンネリした生活を振り返った。能力の成長を実感した覚えは、しばらくない。
特に社会人の行動には答えがありません。仕事は千差万別です。自ら最適な手段を見つける必要がある。
自分の能力はトライアルアンドエラーによって磨かれます。しかし失敗の痛みを恐れ、試行錯誤を忘れた自分がいる……。
試行錯誤を重ねる方法とは?
最適な課題設定がやる気を見いだし、能力を効率よく高める。
努力の習慣をつけて、試行錯誤を続ける方法を考えます。
目次
試行錯誤を重ねる動機づけ
努力ができない理由
試行錯誤とは「新しい方法にチャレンジし行動の効率を高め、より良い成果を目指す一連の繰り返し」です。
つまり成果向上を目指して努力を続けることです。努力ができない人は継続的なチャレンジができない。
試行錯誤を習慣づけるために「なぜ努力をするのか」という命題を持たなければなりません。
努力……能力を高めるには必要です。しかし自発的な努力はなかなかできないですよね。
どうして努力ができないのでしょうか?
これには3つの理由が考えられます。
- 難しいことはできない
- 慣れないことは、つらさが際立つ
- 手に入りやすい楽しみがたくさんある
難しいことはできない
困難にぶつかって挫折を繰り返すと、できないと決めつける信念「学習性無力感」が根付きます。
今のやり方を捨て、新しい方法にチャレンジするのが試行錯誤です。しかし難しいことにチャレンジしても失敗するかもしれない。
失敗を怖がると挑戦する気持ちが失われる。そして挑戦しないことが当たり前になり、試行錯誤するという発想すらなくなります。
慣れないことは、つらさが際立つ
挑戦した経験が少ないと、成功体験も少ない。成功体験は努力を支える意欲を生み出します。つまり経験が少ないと意欲が出にくい。
少しでもつらいことがあったら苦しく感じる。努力はスタート時点が難しいんです。
手に入りやすい楽しみがたくさんある
基本的に人は快感を求めて行動します。試行錯誤で能力や成果が高まると多くの楽しみが待ち受けている。しかし経験を積まないと得られませんよね。
私たちの身の回りにはたくさんの快楽物質がある。その多くは努力を必要とせず、楽に気持ちよくなれます。
- 多くのテレビ番組
- ネットサーフィン
- コンビニスイーツ
- 酒
- ギャンブル
……数え切れないほどありますが、これらに頼っても一時的に気持ちよいだけです。持続的な幸福感は得られない。
しかし短絡的に手に入る快楽物質に依存しては、努力をする時間と意欲は失われます。
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始めは緩やかな成長を目指す
努力を始めるとき、無謀な行動計画を立ててはいけません。
無謀な行動計画とは
自転車に乗ったことがない小学1年生が、いきなり補助がない大人向けの自転車に乗る
というイメージでとらえられます。
失敗すると大きな自転車が体を巻き込んで勢いよく倒れます。押しつぶされた膝や腕は強烈に痛み、自転車が恐ろしくなる……。
もちろん小学1年生向けの補助輪を付けた小さな自転車を用い、大人にサポートしてもらいながら運転の練習をしたいですよね。
挑戦に慣れていない人は
- 適度な目標設定をして
- 一つの目標に集中する
という原則に従って行動する。
はじめは思うようにできなくてつらいでしょう。しかし簡単な課題に立ち向かい、小さな成功体験を積むことが求められます。
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自分の理想を明確にする
やる気を高めるには、自分が
どのような存在になりたくて(理想の状況・仕事での理想の姿)
それがかなったら
どのように幸せになるのか(理想をかなえたときの自分の姿や気持ち)
を知っておきます。
まずは理想の状況を書き出しましょう。ノートやスマホのメモを使います。たとえばショップ販売員なら、
- 売り場でお客さんに声をかけると好意的に話を聞いてくれる
- 求められた商品以外で役立つ他の商品を勧めると、喜んで購入してくれる
- 自分のリピーターが増える
- お客さんが別のお客さんを紹介してくれる
- 他のスタッフが自分のテクニックを学びたいと望まれる
できるだけ多く書き出します。ある程度は具体的な方が書き出した情報を扱いやすい。
続いて理想をかなえたときの自分の姿や気持ちを想像する。
- 他のスタッフに慕われる
- 上司に信頼され、難しい仕事を任される
- 昇進の話が来る
- ボーナスの査定が良くなる
- 楽しく仕事ができる
……思いつく限りまで書き出します。メリットを認識すれば努力への動機は芽吹く。
しかし「緩やかな成長を目指す」という基本は忘れてはなりません。
謙虚に自分の実力を認め、向上への喜びが感じられる心を育むことが先決です。
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以上のように努力は初めの一歩が肝心です。そして努力は試行錯誤が伴わないと、ただの苦労性になってしまう。
試行錯誤はどのように行うのでしょうか?
短いスパンで行動→評価を繰り返せばよいのです。
試行錯誤を実践し強みを育てる方法
短期目標の策定
前節で理想の状態を書き出しましたが、それが短期的な目標になる。
始めは達成が可能で高い効果を持つ目標から目指します。たとえば
- 売り場でお客さんに声をかけると好意的に話を聞いてくれる
という状態が目指しやすいと判断したら、それをかなえるために試行錯誤を重ねる。
試行錯誤にはアイデアの評価が必要です。
つまり具体的に数値で表せる量的目標がほしい。上記の目標なら、
- 好意的に話を聞いてくれるとは?
カウンターへの誘導が成功する
- 量的な目標は?
目標:カウンター誘導数/売り場での声かけ数=50%
現状は20%だから30%の向上が必要
というように設定します。目標の設定は根拠があるとよい。接客が上手なスタッフを調査して、適切な目標を検討する。
周りの人を調査すると、試行錯誤のアイデアを出す知識も得られるので、積極的に実行します。
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アイデアの設定と行動・データ収集
基本は一つのアイデアをスピーディに繰り返して学びを深めていきます。
試行錯誤の要となる行動は、3つの手順を踏む。
- アイデアを決める
- サンプル数を決める
- 結果をアウトプットする
アイデアを決める
目標達成に向けてのアイデアを決めます。
大まかに手順を変えるアイデアを作ると、どの変更が効果的だったかわからなくなる。なので手順は1つずつ変える必要があります。たとえば
- カウンターへの誘導を成功させるアイデアその1
仮説:お客さんが抱える問題を聞き出せば、商品に関心が向く。
声をかけて→商品の特徴を一言で説明して→「どうしてこの商品に興味を持ったんですか?」と質問する。
このように具体的な行動を決めてしまいます。
サンプル数を決める
効果がでているか判断するために、サンプルを収集します。サンプルとは試行で手に入れたデータのことです。
区切りをつけるために、アイデアを試す回数を決める。たとえば前述の例だと
成功確率の目標が50%だから……このアイデアで確率を10%向上したい。
まず10回試して様子を見よう。目標を下回るようなら、問題点を検証しよう。
回数が多すぎるとスピーディーな学びは実践できません。反対に少なすぎると信頼性がなくなる。
結果をアウトプットする
実践で得た情報を毎回書き出します。効果の可否、感想や反省点に注目する。
書く量は面倒にならない程度に調整します。最低でも効果の可否と一言のメモがほしい。
失敗。質問が不自然だったので心配そうな顔をされた。焦りが伝わったのかもしれない。
慣れてくると気づきが増えます。着目するポイントもわかってくる。
アイデアを見直す
サンプルが集まったらアイデアの評価をします。結果が良好ならアイデアを継続して実践する。
結果がそれほど良くなかったら、アイデアを見直します。
見直しは3つの方法がある。
- ずらす
- ひっくり返す
- 別のアイデアに変える
ずらす
サンプル収集で得た内容を参考にして、少しだけ改良する方法です。マイナーチェンジとも言える。
「この商品はどんなふうに使えると思いますか?」と言葉を変えてみる
結果が良くなるまで繰り返して取り組みます。何度実行しても良い傾向に変わらなければ、以下の手法を試す。
ひっくり返す
まったく反対のパターンを試して、アイデアの方向性が正しいのか試します。
反対のパターン:質問をせず、商品の説明を続ける
もしひっくり返して成果が向上したら、別のアイデアを試したほうが良いでしょう。
成果が低下したら、元に戻してマイナーチェンジを続けます。
別のアイデアを試す
進行中のアイデアを止めて、他のアイデアを先に試してもよい。
他のアイデア:先に欠点を説明し、それを補ってあまりあるほどのメリットを説明する。
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これらのように試行錯誤は計画から始まり、改善案を策定するといった一連の流れがあります。
流れを繰り返すことでアイデアが磨き上げられ良い成果につながる。そして成功体験を得られます。
しかし成功体験の少ない序盤は試行錯誤に取り組むのが困難と説明しました。
大変な序盤を乗り切るにはどうしたらよいのでしょうか?
負荷の軽い目標を立てればいいんでしたよね!
実際に試行錯誤を重ねよう。序盤は成功体験を積み上げ効率化
簡単な課題を何度もこなす
成功体験を身につけるとやる気につながる。なぜかというと「やればできる」という信念を築けるからです。
やればできる信念がないと、失敗を自分の資質や才能のせいにしてしまう。
つまり「自分にはできないんだ……」と感じ、学習性無力感が再発してしまいます。
また序盤は
- 失敗をしてしまうという恐れ
- 面倒な作業が増えることへの嫌い
のようなネガティブな予測に負けて、意欲を維持しづらい傾向があります。
しかし簡単な課題は成功しやすいので、ネガティブな予測を感じにくい。
参考文献:課題動機づけにおける困難度情報が課題努力に及ぼす影響
着実に成功体験を積む105%課題
105%課題とは、自分の限界を少しだけ乗り越えるという強化プランです。
腕立て伏せが20回だけできる人に「なんとか後1回がんばってみよう」という課題を設定する
というイメージです。
たとえば前述の接客課題だと、1.5%の向上があれば成功と認識します。
また今の行動を生かせるアイデアを考えれば、行動への気負いも少なくなる。いきなり難しいチャレンジはしなくてもよい。
とにかく難しいことを考えるよりも、行動を繰り返して成功体験を積む必要があります。
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学びを習慣化する
実践を繰り返せば生きたデータが回収できます。
しかし知識が少ないと、ありきたりなアイデアや気づきしか生まれません。
なるべく空いている時間を作って新しい知識を得るために学びを習慣化しましょう。
仲間にアドバイスをもらったり、読書をしたり……基礎の力がつけば、試行錯誤は楽になる。
たとえば読書なら難しい本を読む必要はありません。105%課題に従って読み進められるレベルの本を選びます。
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これらを実践すると成功体験が積み上がり、やればできる信念の基礎ができたはずです。
しかし簡単な課題ばかりでは、大きな成長は見込めません。
最後に試行錯誤に慣れた後のコツをお話します。
試行錯誤に慣れてきたら難しい課題に挑戦する
自分を乗り越える120%課題
120%課題はハードな目標に挑戦してみる手法です。たとえば
腕立てがギリギリ40回できる人に、48回挑戦させる
「いやいや無理でしょ」と今までの自分なら言っていたくらいの、負荷が高いアイデアを実践する。
これまでと一線を画す革新的なアイデアに挑戦したり、量的目標を高く設定したりします。
試行錯誤の精度を高めないと、難しい課題はクリアできません。
しかし成功した場合は「やればできる」信念はとても強固になる。
万が一失敗しても、きつい努力で考えたアイデアや気づきは、次の機会に生きてきます。
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主体的に行動する
どんなに難しく感じることでも、できることを探して実行する。それが主体的な試行錯誤の態度と言えます。
できない理由を他人や環境のせいにして、成長することを放り投げてはいけません。
不可能だと感じたら、いったん行動をリセットして、できることを見つける。「不可能なんてない」と考えるくらいでよい。
問題を解決するために何ができるのか?自分が変わっていくしかありえません。
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集中と分散を切り替える
行動は1つの卓越した能力により専門性を増します。
広い分野の知識を持つと、専門さはオリジナリティを持ちます。
一つのことだけ突き詰めて、成長に陰りがでてきたら、経験が少ない分野を鍛えてみるとヒントを得られるかもしれません。
能力は複数組み合わさることで、交互作用(シナジー)効果が得られます。
行き詰まってきたら、自分のしたいことをリストアップして、いろいろと挑戦すると良いかもしれませんね。
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おさらい
試行錯誤を重ねると新しい経験が蓄積される。経験が自己成長を促します。
「今より良くする」態度を持てば、主体的に行動できます。嫌なことがあっても責任転嫁しない。リーダーシップも育つ。
努力は初めが大変です。焦らず着実に試行錯誤を重ねる計画を立てましょう。
成功体験を積み、自信がついたら困難なチャレンジに取り組む。
それを乗り越えれば自己成長が加速します。
自分を高める経験は、持続的な幸せになる。