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非行に走る子供の特徴を理解。責任転嫁をやめてよりよい社会を

投稿日:2020-06-26 更新日:

非行に走る子供の特徴を理解。責任転嫁をやめてよりよい社会を

子供の非行をやめさせたい。そう思った支援者は原因を探ろうとする。

しかし「親のせいだ」「学校のせいだ」「発達障害のせいだ」といって、誰かに責任を押し付けたところでは何も解決しないのだ。

非行に走ってしまった子供の背景には、環境と個人的特性の影響が考えられます。

しかしどんな子供でも不良になる可能性がある一方で、誰だって更生して社会に適応できる。

私たちができることは、非行の背景を十分に理解し、建設的な行動を続けることなんです。

今回の記事で、非行につながりやすい子供の特性を一緒に考えていきましょう。

誰でも非行に走る可能性がある

問題解決を求めて非行に走ってしまう

具体的な特性について考える前に、誰でも非行に走る可能性がある事実をお話しします。

非行というのは反社会的な行動、つまり他者もしくは自分を害する行為のことです。

どうして子供たちはわざわざ非行に走ってしまうのでしょうか?

社会に適応した生き方をせず、非行に走る理由をここで一緒に考えてみましょう。

まず子供たちの非行を促進する要因は以下の2つにまとめられます。

  • 環境
  • 個人特性

まず環境とは「家庭」「学校」「友人」などの人間関係や、地域特性・その家の暮らしぶりのような、個人を取り巻く周囲の状況です。

特に家庭における虐待や阻害感、学校でのいじめは、非行に影響すると古くから考えられています。

次に個人特性とは性格や認知能力・問題場面での行動パターンなど、その時点の個人に含まれる要素です。これも子供の非行化に影響を及ぼすと考えられる。

  • 怒りっぽい(性格)
  • 相手が話している内容の理解が難しい(認知能力)
  • 失敗したら嘘をついて隠そうとする(行動パターン)

というようなものが例としてあげられます。

これらの要因があると絶対に非行に走る……もちろんそんなわけありません。

虐待を受けていても犯罪に走らない子供は多くいますし、キレやすい性格の子供でも次第に落ち着いてくることはよくあるでしょう。

一方で多くの非行事例を見てみると、環境要因と個人特性要因が相互作用を起こし、非行に至るケースを観察できます。

実のところ個人特性に関しては、周囲のサポートによってわりと適応的に発達していく傾向があります。

しかし劣悪な環境は子供に対してネガティブな影響を及ぼす可能性が高い。

つらい環境下にある子供は、犯罪に手を染めなかったとしても、自傷行為をしてしまったり、長きに渡り対人不安を抱えることになったりします。

つまり環境の悪影響によって健全な心身を手に入れなれなかったら、子供は感じている不安や不満を解消するために、不適切な行動を選んでしまう

不器用な子供は、非行によって今の苦しさから逃れようとしているんですね。

環境は人を狂わせる

ここまでを踏まえて「非行の責任」を考えたいと思います。

もちろん犯罪行為の結果に対する責任は本人にあり、それに応じた処罰を受けたり賠償を支払ったりしなければなりません。

しかし責任を果たすというのは、悪人を吊るし上げることではない。

そもそも問題の当事者には、誰がなってもおかしくありません。

その理由の一つとして、環境要因があげられます。

劣悪な環境が及ぼす悪影響が、本人の資質では受け止められないのなら、善良な人間でも、まともなままではいられないんです。

例えば、反社会的行為に参加したことのない人物の集団が刑務所の看守役を演じた「スタンフォード模擬監獄実験」という研究があります。

参加者が看守の役割になりきってしまった結果、たった2日間で約半数もの囚人役に精神的不調が生じました。

攻撃行動が激しくなりすぎて、結局6日目で実験を中止せざるを得ませんでした。

また、スタンレー・ミルグラムの「服従実験」という、別の研究があります。

こちらでは普通の健康的な大人でも、強大な権威を目の前にすると非人道的な命令に従ってしまうことを示したのです。

脳の状態によって、人は性格が変わる

環境ではなく個人のどうしようもない変化によっても、犯罪傾向が高まる可能性があります。

例えば、何か脳に重大な変化が起こるのなら、自己統制力は低下してしまう。このことを示したのが以下の事例です。

鉄道工事の現場監督だった「フィネアス・ゲージ」という人は、みんなから信頼をあつめるような、安定した性格を持っていました。

そんな彼は不運にも爆発事故によって、前頭前野周辺(前頭眼窩野と前頭葉の先端部)を損傷してしまったのです。

療養したあとにゲージは現場へ復帰したのですが、粗暴で直情的な性格に変わってしまいました。

ゲージが損傷した前頭前野は、人が目的を持った行動をするように司ります。

この部分の機能が十分に働かなくなったので、彼は他者へ攻撃的になり、信頼を失ってしまったのです。

生まれつき前頭前野の活動が低く、衝動性を抑えるのが苦手な人もいますし、深刻なダメージを受けたり腫瘍ができたりして、性格が変わってしまう人もいます。

参考:心理学ビジュアル百科(スタンフォード模擬監獄実験・服従実験・フィネアス・ゲージの例)

これは現実味のない話ですが、もしわたしの意思や魂が犯罪傾向の強い人物に乗り移ったとしたら、おそらく自己制御が難しくなり、罪を犯す可能性は高まるでしょう。

まともな教育理論を学ぶ環境が乏しい

少年犯罪のニュースが出ると、ワイドショーやSNSで誰かを吊るし上げるような声が多発しますよね。

非行少年本人だけが責められるケースもあれば、養育者や指導者に矛先が向かうこともあります。

その声が重なり続けると過大なストレスとなって、言われた当人は心身を害し、最悪の場合は自殺に陥ることもあるでしょう。

彼らはそこまで言われて当然なのでしょうか?

上手に生きづらくなるような特性を持つ子供が劣悪な環境下に置かれたから、不器用にも非行に走ってしまったのです。

そんな彼らも特性が理解され、支援を受けられるような環境であれば、少年法における責任を果たした後の人生を、自分らしく生きられるのではないでしょうか。

だからといって養育者や指導者が全部悪いわけではありません。

彼らは適切な教育ができなかったせいで、子供にとって劣悪な環境を作ってしまいましたが、それもしかたない部分があるのです。

適切な教育とは

  • 知識
  • スキル
  • 活用する態度

この3つがそろってこそ成り立ちます。

しかし子供の個性にもれなく配慮できるほどの高い能力を、すべての教師が持っているわけではありません。

能力は鍛えれば伸びていきますが、それを実現するトレーニング体系が整っていないのです。

今のところ教育の力は個人の資質に依存しているので、自己研鑽が苦手な人は不適切な指導をしていることにすら気づけていません。

そして親のほうがもっと事態は深刻です。

親は教育に必要な能力を身につけられる環境が、そもそも用意されていないのですから

自己研鑽どころか、そもそも自分の何を育くめばいいのかを理解できていない人が多いのです。

だからといって、できない人を排斥するように、誹謗中傷してもいいのでしょうか?

私たちが非行を目の当たりにしてすべきことは、原因探しをして吊るし上げることではありません。

事件から問題点を見つけて改善案を生み出し、自分の行動を最適化する。

これが養育環境を良くすることであり、ひいては非行をなくすことにつながるのではないでしょうか。

問題点を見つけて改善案を生み出すには、非行についての広い理解が必要です。

その一要素である、非行に走りやすい子供の具体的な特徴について、考えていきましょう。

非行に走りやすい性格・特性の傾向4つ

1.自己意識が高い

自意識過剰だと非行に走る傾向が高い……

というのは正しい表現ではないかもしれませんが、非行を経験した子供は、公的自己意識特性・私的自己意識特性が高い傾向にあることが研究により示されました。

参考:非行への認識による自己意識特性の違いに関する研究(PDFファイル)

  • 公的自己意識とは、自己の外見など他者から容易に知ることのできる面について注意を向けやすい傾向のこと
  • 私的自己意識とは、他者からは容易に知ることのできない、態度や動機や考え方といった自己の内面に注意を向けやすい傾向のこと

引用:三重大学教育学部:zenntaiyouyakuより

以上から、

公的自己意識特性が高いと、社会に映る自分への意識が高いため、社会が奨励する基準を採用しやすい傾向がある

私的自己意識特性が高いと、内面世界に注意を向けるため、個人的な基準で行動を選ぶ傾向がある

ということがわかります。

高い公的自己意識特性を持つと普通はいい子になりそうですが、反社会的集団にいる場合もそこの基準に従ってしまう。

私的自己意識特性が高いと、社会のルールなどに違和感を持ちやすく、自分なりの価値観を優先しやすいんですね。

つまり私的意見から社会的基準に反発しやすい一方で、不良集団の同調圧力にのまれやすくもある、アンビバレントな性格傾向を持っているといえるでしょう。

しかしこの特性をまっとうに生かせるのなら、高い自己意識は人間的成長に大きく貢献します。

例えば高い公的自己意識があると、清潔感や振る舞い・ビジネスマナーなど、対人関係で生かせるスキルが身につきやすい。

接客業やタレント業など、これらが求められる職業は数多くあります。

また私的自己意識が高いと内省的になれ、自己理解力が高く、個人的な世界観を育てやすい特徴を持つ。

これらは多くの仕事で生かせる能力で、特にアーティストは私的自己意識が高い傾向があるようです。

このように高い自己意識特性を適切な環境下で養っていけるのなら、むしろ個人のキャリアへ貢献できるのです。

2.共通感覚の欠如、高い無気力感と享楽感覚

前述の自己意識特性が高いことも影響してきますが、非行を起こしやすい状態として、共通感覚の欠如・高い無気力感・享楽感覚が挙げられます。

まずは論文の引用を確認してみます。

公的及び私的自己意識のそれぞれから喚起される判断と行動などの不一致から社会における自己の異質性(=共通感覚の欠如)への実感を高める。

次に,その認識から勉学や部活といった活動を通した自己実現や一般生徒との交流を諦め(=無気力感),自己と同じような社会に馴染めない学生との繋がりをもとうと非行への興味を有するようになる。

そして“今その場が楽しければいい”といった感覚(=享楽感覚)を背景に学校生活ではなく逸脱した友人との交流に楽しみを見出し,非行を深化させるということである

引用:非行への認識による自己意識特性の違いに関する研究(PDFファイル)

とあります。難しいので簡単な例を出してみます。

学校の宿題が出されたら、公的自己意識では「ルールだからやらなきゃ」と思い、私的自己意識では「やる意味あるの?」と考える。

宿題をやらなきゃいけないプレッシャーを感じつつ、やることを納得できない葛藤を持つ。

一方で周りのみんなは素直に従っているように見えてしまう。

そのことから「みんなと違う自分は普通じゃないんだ」と感じてしまい(共通感覚の欠如)、学校の活動や普通の生徒との関わりをあきらめてしまう(無気力感)。

次第に同じく関わりをあきらめた者が集まるようになり、一般的なルールから逸脱した行動に惹かれるようになる。

その場の楽しさ(享楽感覚)を求めて先々を考えない問題行動が増えた結果、非行に陥ってしまう。

つまり社会適応できない自分を感じてしまうと、学生に求められる経験や人間関係をあきらめて自分と似ている者同士で集団を築く。

結果として将来への見通しが持てず、その場の雰囲気や、不良集団内の規範・短絡的な利益を優先する気持ちから、非行につながっていくのでしょう。

これら状態になると、ただ叱るなどの指導は効果を発揮しない。

本人の個別性や訴えることの裏側にある欲求や願望をしっかり聞き取り、信頼関係を築くことから始めなければなりません。

3.アンバランスな共感性を持つ

「相手の気持ちがわからないから罪を犯すのだろう」

非行少年は共感性がないと、考える人が多いのではないでしょうか。

しかし青年期においては、むしろ共感性が高いほうが非行に走りやすいことを示した研究があります。

犯罪者は,他者の不運な感情体験や苦しみに対して同情的で,何らかの配慮をすることに方向づけられやすい

引用:青年犯罪者の共感性の特性

共感性が高いからこそ、他者が表す痛みに過剰に反応して、攻撃的になってしまうというのです。

なぜ彼らは攻撃的になってしまうのでしょうか?

ここにはアンバランスな共感性があると考えられています。

共感性はあるものの、他者の立場で物事を考える力が弱いため、相手の痛みをあたかも自分のもののように捉えてしまう。

ほとんどの人は相手から伝わる痛みへの共感が自分で抱えられないほど苦しくなった場合、自己防衛反応によって共感から逃れようとします。

一方で共感の痛みが許容値を超えても、自他の区別をつけられないと、防衛反応が働きません。

結果として混乱をきたし、衝動的行動に出てしまう。

つまり強い共感性を持っているのに、認知能力が乏しくて自他の感情を区別できない人は、非行に陥りやすいのです。

4.知的障害・発達障害を理解されずにいる

人は個性を他者に受容されてのびのびと生活できたなら、自分らしく健全に育っていきます。

自分らしく生き生きと過ごす人は、誰かと関わる中で何かしらの役割をもち、社会的幸福へ貢献できているはずです。

しかし個人特性を周囲に理解されず、虐待にあったり、いじめにあったり、疎外感を強めたりした結果、非適応的な価値観を強めて非行に走ってしまう。

特に軽度の知的障害を持つ子供や発達障害を持つ子供は、普通に生活できているように見えても、実際は多くのシーンでしんどさを感じています。

例えば通常の勉強方法が困難な特性を持っているだけなのに「当たり前のことができない」と子供のせいにされ、無理強いさせられたり冷たくされたりする。

結果として保護者や先生・周りの人との関係はゆがんでしまうので、普通に愛されることができなくなってしまいます。

例えば境界知能(IQ:70〜84)の人は約14%います。また発達障害が疑われる人は約6.5%だということです。

数値参照:ケーキの切れない非行少年たち「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」調査結果について

つまり40人学級において

  • 境界知能の子供は約5〜6名
  • 発達障害の子供は約2〜3名

もいるわけです。

これらは一人に重複する傾向はありますが、約20%ほどの子供は特性のために学習や生活へ自力での適応が難しく、息苦しさを感じていると考えられます。

特性にもよりますが彼らは認知能力が乏しい傾向があるので、人間関係の構築や感情統制・自己理解が難しく、トラブルにつながる場面が多くなる。

特に衝動性が高い子供は、後先を考えずに安易な方法で問題解決を試みるため、暴力・性暴力などに及んでしまうのです。

知的障害・発達障害に限った話ではありませんが、未成熟な子供を養育するにあたって個性の理解と尊重は必要不可欠です

彼らには個別性のある支援が求められています。

差別の憂き目に遭いやすい、生きづらさを感じる子供たちに対しては、特にぬくもりのあるサポートを心がけていきたいですね。

最後に

犯した罪は簡単に許されるべきではない、このように私も感じます。そのために罪を償ったり、矯正教育を受けたりするのは必要なことでしょう。

一方で健康な社会を築いていくには、より良い発展を目指して改善や革新を続けていかなければならない。

つまり進化と向き合っていくことが大切です。

懲罰は司法の責任であり、進化はすべての人々が抱く責任といえます。

非行や犯罪の問題に対しても、前向きな理解と行動を起こすのが人々の勤めなのでしょう。

誰もが個人差に配慮できるような、優しい社会が築けるといいですね。

認知力に着目した、非行少年の理解

精神科医である著者の宮口さんは、10年以上も少年院の法務技官としてお勤めされ、非行少年の矯正教育について考察を続けられております。

本著では認知力の弱い非行少年の思考や感情を垣間見れ、なおかつ支援者に求められる取り組みについて詳しく解説されています。

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

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  • この記事を書いた人

やくしじ

自己成長を支援するブロガー&カウンセラー。心理学検定特一級。アル中で夢を断念し引きこもる。しかし教育の仕事で社会復帰して貢献の喜びを知り復活。主体的な考えを育む・努力を味方にする・性格の悩みを解消するなどの支援を提供中です。期間限定で相談無料。気軽にDMしてね!自分自身と社会に向き合い、素敵な未来を育む人と出会いたい。 詳しいプロフィールはこちら

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