仕事でミスが続くと「視野が狭い」と上司からチクリ。
心に刺さった無慈悲な針はジクジクと痛み、会社に向かう足取りを重くします。
視野を広げて楽しく仕事をしたい。
発想を豊かにするにはどうしたらいいのでしょうか?
類推をする習慣が付けば、偏った思考回路が柔軟に変化する。
自由な発想力を得る方法を7つのステップでご紹介します。
目次
1.視野が狭い現状を認め、成長する覚悟を持つ
発想力は一朝一夕で身につくものではない。時間をかけて改善していく必要があります。
しばらくは誰かに「視野が狭い」と言われるかもしれません。それでも自分なりに努力する。
あきらめて一生ずっと視野の狭さに苦しめられるよりも、少しずつ見解が豊かになれば仕事が楽しく彩られます。
自分のペースを見つけて努力をする。僕はそれを「坂の理論」といって提案しています。以下は生活習慣を変えたい人の例です。
改善のためにできることを知り、実践が続くことから始める。視野を広げる努力も同じ仕組みを持ちます。
努力を続ける基本戦術は、1カ月で1つの目標を立て、その行動を確実に実行する。たとえば
- 毎朝10分間ブレインダンプ(手を止めずに思っていることを書き続ける)をしよう
- 毎日1時間は読書をしよう
- 何かをする時間がない。スマホゲームをやめよう
というように現状の自分をよく観察して「無理ではなく、簡単すぎない、少しきつい目標」を立てる。
行動をしなければ何も変わらないということを理解し、1つずつ成長を楽しみましょう。
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2.仕事に解決志向で取り組む
視野が狭い人の考え方は以下のような傾向があります。
トラブルが有ると感情が揺さぶられて、誰か(自分を含む)・なにかのせいにしてしまう
その責任転嫁は止める。今後トラブルにあったら、解決志向で対応します。
問題に対して自分ができることを考えて実行するのが解決志向です。この態度がなければ、自力の問題解決はありえません。
もしウェブサイトでつかうパスワードがわからなくなったとき、解決策を知らないのならどうしますか?
責任転嫁→えっパスワード?そんなもの知らないよ。面倒だな。だからオンラインサービスって苦手なんだよな。もうしたくない。
解決志向→どこに保管したかわからないな。問い合わせ窓口は?こんなとき他の人はどうしてる?聞いてみよう。パスワードはいつ作ったのかな?記憶をたどって書き出してみよう。
というように解決志向は行動を求めます。責任転嫁をすると何も進展しないので経験できることが少なくなる。
不安になると誰かのせいにしたくなりますよね。しかしそれは無意味な自己正当化です。自分が成長できないばかりか、周りの人にも嫌がられる。
難しい問題は責任転嫁をしたくなりますが、必ず解決志向であり続けます。
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3.学ぶ態度が視野を広げる
問題に気づいたり斬新なアイデアをひらめいたりすることは、"ぱっ”と起きるわけではないんです。
思考を続けて無意識にある知識が関心と結びついたときに、ひらめきは起こります。
この無意識下の活動をプライミングという概念で表せます。プライミングとは
あらかじめある事柄を見聞きしておくことにより、別の事柄が覚えやすくなったり、思い出しやすくなること
つまり経験が後の気付きに影響するということです。
経験は記憶、または知識と言い換えられます。知識をたくさん持てば、プライミングは起こりやすくなる。
仕事では新人スタッフに比べてベテランスタッフのほうが、問題や解決策によく気づく傾向があります。
新人とベテランの一番の違いは「経験」の量ですよね。つまり対象の物事に対する経験が多ければ視野も広がる。
まずは気づくためのトレーニングをする前に、知識を蓄える習慣を持てばよい。
- 仕事に関連する書籍や資料を読む
- 自分の行動を振り返る
- 仲間の行動を観察する
いちばん簡単なのは書籍や資料から知見を得ることでしょう。これは簡単にできるので必ず実行する。
そして自ら見聞きしたことも詳しく分析します。
知識は「見よう」とすれば具体的になる。気にしなかったら心に留められません。日常から物事を観察する意識を持ちます。
また遊びやテレビなどからも知識は得られます。気になることはないか自分なりに考えてみる。この積み重ねがユニークな発想につながるんです。
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4.視野が広い仕事ができる人をマネる
発想を豊かにするコツは体を動かすことからも得られます。たとえば視野が広く仕事ができる人の行動をマネてみる。
- 対話の内容
- 話の口調
- 行動パターン
- 読んでいる本や雑誌
- 表情・姿勢・服装などの外見
……など相手に乗り移ったつもりで動くのですが、そのためにはよく観察する必要があります。
マネをして動くと思わぬ気付きがあります。たとえば
- 考えを深ぼるような接続詞を多用する
- 考えるときに上を向く
- 仕事と関係がなさそうな学術雑誌を愛読している
など。気になるけれどイマイチ意味がわからない行動があったら、本人にインタビューして意味を教えてもらう。
もし恥ずかしければ一人きりになれる場所でシミュレーションするだけでも効果的です。
全てではありませんが、意識や気分に対応して体は動く。視野が広い人は発想が生まれやすい動きになっているはずです。
5.掘り下げて考えを深め、視野の狭さを補う
ここからは詳しい視野を広げるテクニックを話します。視野が狭い人は、
表面的な物事しか見えていない
という傾向を持つ。これを主体的に解消するために考えを掘り下げていく。
このテクニックでは対象の物事に関する情報をたくさん集められます。
ここでは3つの方法を紹介します。
- 「5つのなぜ」を用いた質問をする
- 上位概念の視点で考える
- 5W1Hで要素を広げる
「5つのなぜ」を用いた質問をする
5つのなぜは考えを一方向に掘り下げていく手法です。
元ネタは自動車メーカーのトヨタが製造工程で用いた改善手法らしい。
僕はリーン・スタートアップでこの手法を知り、長年に渡り活用し続けています。
5つのなぜは問題解決に向いています。たとえば「接客販売で新人スタッフの営業成績が向上しない」という問題に対して、
- クロージング(購入決定)ができる確率が低いからだ
- 顧客がどの商品を選んだらよいか決められず迷っているからだ
- 紹介する商品が多すぎるからだ
- 顧客の希望を把握していないため、商品を絞れていないからだ
- 顧客の希望を引き出すような質問ができていないからだ
というように一つの質問を5段階掘り下げます。次は解決方法の仮説を立てる。
顧客の希望を引き出すような質問を繰り返し、紹介する商品を最大3つに絞る
というアイデアで新人スタッフを教育できます。
上位概念の視点で考える
仕事というのは多くの場合「上司→部下」という方向で発生します。
仕事の内容を言葉通り単純に解釈すると、お互いの意図が正確に伝わらず「思った結果と違う」と感じられる。
そうすると上司から「視野が狭いな」という印象を持たれてしまいます(このケースではどっちもどっちなのですが)。
そうならないために前もって上司の考えを推察し、適切な対応を試みるのです。
たとえば「商談の事例をレポートにまとめる」という仕事を依頼されたら、
- そのレポートで知りたい情報の要点はなんだろう?
- どうしてその情報を知りたいのだろう?
- 得た情報をどうやって活用するのだろう?
- 一過性の仕事なのか、今後も依頼されるのか?
- 他の人(上司の上司など)に公開するのだろうか?
……などの疑問を思いつく限り列挙する。可能であれば上司に質問して尋ねられますが、不可能なら自分独自の解釈を試みます。
もし上司が想定できなかったレベルの高い情報を提示できたら「視野が広い」と驚かれ、好意的な評価につながるでしょう。
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5W1Hで要素を広げる
1つの物事や行動は、複数の要素が組み合わさってできています。
たとえば「電卓」なら「液晶・キー・スイッチ・太陽電池・四角のゴム・基盤・文字のインク……」。
その要素を5W1Hを参考にして、明らかにしていく手法です。5W1Hとは
- WHEN→いつ(時間)
- WHERE→どこで(場所・空間)
- WHO→だれが(人・対象物)
- WHAT→なにを(行動)
- WHY→なぜ(理由)
- HOW→どうやって
ですね。よく知られている考え方です。たとえば
- いつ→昔はどんな姿だった?未来はどうなる?いつ使用する?かかる時間は?
- どこで→使用する場所は?どんな工場で?水辺だったら?しまうときは?
- 誰が→使用する人は?誰に向かって?得する人は?損する人は?
- 何を→できることは?失われるものは?変化するものは?破棄するときは?
- なぜ→それが起きる理由は?それじゃなきゃだめな理由は?それを続ける理由は?
- どうやって→使い方は?お金は?使わないなら?形がないなら?
のように質問を考えて検討します。そうすると多彩な要素が見つかり、解釈が柔軟になる。知識を深めるエクササイズとしても最適です。
以上の3つは主に
- 視野を広げる基礎力をつける
- 原因を究明し問題を改善する
ということに力を発揮します。考える素材を増やせるので、何度も練習しましょう。
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6.別のものと関連付ければ視野は広がる
対象を別の物事と関連付けるテクニックです。素材を生かした発想を生むために、掘り下げ同様に練習します。
たとえば電卓だったら
- 電卓は素早い計算を正確にしなくてはならない
- 押しやすい大きなボタンのほうが使いやすいな
- スマホのフリック入力も押しやすいボタンを実現するためにあるんだ
のような関連性があります。仕事で考えると
- 新人スタッフの営業成績が悪いのは質問が足りないからだよね
- お客さんは自分が商品に何を求めているのか明確になっていない
- 上司にも質問をすれば、求めてくる仕事の質が変わったりしないだろうか
と視野の広さにつながり、取れる行動パターンが増えます。
関連付けは同じ種類のもの(機械→電卓・スマホ)(人→新人・上司)だけではありません。
- 属性について(機械・人・生き物・場所など、まとめられるもの)
- 関係について(会社・部署:電車・座席、ステージ・アイドルグループ:畑・キャベツ)
- 特徴について(プログラミング:臓器、虫:ひまわりの花)
- 動きについて(時間:自転車、太陽系:陸上競技のコース)
どんな物事でも何かしらに(無理やり)結びつけて考えられます。
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ここまでは情報を引き出すことに主眼をおいていました。
それだけでも多くの知識が得られるので、既に視野は広くなったかもしれません。
しかしこれだけでは、ありがちな考えしか生まれない。
できれば自分なりの斬新な発想をしてみたいですよね。
実はこれ以上、難しい方法は覚えなくてよい。
あとはこれまでの努力で豊富になった
知識を組み合わせる習慣を築くだけです。
7.類推を習慣化し、仕事を攻略する
最後の項目は「類推(るいすい)」です。未知の問題を既知の情報を用いて推理する手法になる。
前項でも、ちらっと類推していました。
顧客の潜在欲求を引き出す質問は、上司との関係改善にも用いられる。
類推は非常にシンプルです。素材さえ引き出せれば、簡単に結びつきます。
すべての人は必ず類推をした経験があるはずです。たとえば外国語のフレーズでは、
”I love you”ってことは、「好き」を「嫌い」に変えたら……"I hate you!"
こんな類推は中学生一年生なら誰もが考えたのではないでしょうか。
”Let's make it happen.”は「実現させよう」か。だから"let's make it"は「〇〇しよう」になるから……”Let's make it five.”なら「5(時)にしよう」だな。
というように類推が働くと知識が応用できるので、行動の幅を広げます。
はじめてリースした大型コピー機でエラーが出ても、インクジェットプリンターと関連付けて修正を試みる。
カレーの具が足りない。……液体つながりで、みそ汁。みそ汁に入っている油揚げをカリッと焼いて入れたらおいしいかな?と考える。
エクセルファイルが見づらいと、うっすら感じている。チョコレートのDARSを開けて「あっ段落に分けたほうがいいや」と思いつく。
ウォーリーをさがせ!で遊んだ後に、机の上にある文字がぎっしり詰まった業務レポートを見て「そりゃ誰も見る気にならないよな」と気づく。
「5.掘り下げて考える」「6.別のものと関連付ける」を繰り返せば、主体的にひらめきを生み出せます。
しかしそれ以上に重要なのは「無意識に問いを立てる」ことです。
誰か・なにかのせいにして終わらせず、問題解決を目指す態度を持ちます。
物事に関心を持ち続けてください。
さっきまでちんぷんかんぷんだったのに急に気づく。それは無意識で考え続けたからひらめいたんですよ。
おさらい
視野の狭さは主に反応的な行動が原因です。
- 嫌なことがあった→嫌な気分を拭おうとする
- 対象物を見た→その表面だけを見て評価する
- 考えつかない→ストレスに負けて楽な行動に逃げる
では何をすればよかったのでしょうか?一言でまとめると
- どんなことでも詳しく見て解析し理解する態度を持つ
要するに「科学的であれ」ということです。
知識が増えて類推の習慣が付けば、視野は確実に広がります。
僕が伝えるテクニックはすぐに使える。しかし習慣化するには一定の努力が必要なものばかりです。
考える習慣が身に付くと、成長した!って実感できますよ。