いつか周りの人は私を見放すのではないだろうか?不安な気持ちが細胞分裂を続け、私は暗闇に押し込められてしまった……。
自分のあるがままを信頼する気持ち「自己肯定感」が低いと、自己不信だけでなく次第に周りの人を信頼する気持ちも失ってしまいます。
最終的には社会の中で居場所を見つけられず、自分自身を消してしまいたい衝動に駆られるかもしれません。
自己肯定感を高めるにはどうしたら良いのでしょうか?
学び続ける習慣を持ちましょう。
そんなことで自己肯定感が高まるのか、疑問を感じるかもしれません。しかし学びに取り組むことで、自分を認められる仕組みはあるんです。
目次
自分を認めるために重要な、自己肯定感を知る
自己肯定感とは
心理学をベースにした自己啓発書やビジネス書には「自己〇〇」という言葉が乱立しています。自己啓発・自己研鑽(けんさん)・自己成長……などなど。
自己〇〇というからには、自分自身のことを言っているとわかる。では自己肯定感とは何でしょうか?
平凡社の心の問題辞典では、以下のように説明があります。
ありのままの自分を受け止め,自己の否定的な側面もふくめて,自分が自分であっても大丈夫という感覚である
子どもの自尊感情・自己肯定感等についての定義及び尺度に関する文献検討
自己肯定感を持つと、自分自身を見下さず、自分の全てを許容できる感覚でいられる。
他人と比較して苦しまず、ありのままの自分を表現できます。
安らげる心・挑戦する心
自己肯定感が高まるとQOLも向上する。QOLとはクオリティ・オブ・ライフの略で、以下の定義を持ちます。
日本語に翻訳すれば「人生の質」,「生活の質」あるいは「人生・生活の質」となる.
(中略)...単に疾病がないということではなく,完全に身体的・心理的および社会的に満足のいく状態にあること
QOL の概念と QOL 研究の重要性 - 国立保健医療科学院
他者との比較で卑下を感じたり自分の無能さに苦しんだりすると、多大なストレスを感じる。
ストレスは精神的な不健康を生む。その状態が続くと体を害する可能性が高まります。
つまり自己肯定感を健全に保てば高いQOLが維持できるので、安心して活動に臨めます。
また挑戦に前向きになるので、大きな目標・人生の夢をかなえようと努力ができるのです。
このように自己肯定感は幸せな気持ちを得る一つの要素だと分かりました。
しかしありのままの自分を認めなくても、自分を肯定できますよね。
無根拠に「私はすごい」と言ったり、有りもしない実績を言いふらしたり……。
誤った自己肯定感を持つと、QOLを下げる原因になる。
偽りの自己肯定感では自分を認められない
非現実的なポジティブシンキング
ありのままを見つめるには、良いところも嫌なところも許容しなければいけません。
自分を許すとでも言いましょうか。特に情けない自分を受け入れる心が必要です。許容できる心を持つには、理解に努めなければならない。
その努力を省略してポジティブに考えようとするなら、失敗するリスクが高くなる。
昔(2015年に)ある心理カウンセラーが「最近はポジティブシンキングで逆に精神をやられちゃう人が多いんだよね」と漏らしていたのを覚えています。
- 友だちにバカにされた→弱いところを教えてくれたんだ、ありがとう!
- 取引が直前でキャンセルされた→あと少しだったんだからすごい!
- 子どもが言うことを聞かない→個性があってよいじゃないか、子どもを信じてる!
問題から前向きな点を抜き出して態度を変えるのがポジティブシンキングの基本です。しかし「→」の過程には苦しみがある。
なぜ苦しんだのか理解しないまま、態度の変化を求めるのは危険です。
ネガティブな感情が起こる理由がわからないから、根本的な原因を解消できない。
前向きに考えようとするのは、自己肯定感を高める手段としては正しい。しかし必要なのは心を知る努力、つまり内省する習慣です。
自分の心に関心を持たないと、自己肯定感は維持できず、何度も同じ苦しみに苛まれます。
根拠のない自尊心
見栄とでも言いましょうか。虚構の自尊心を持つと自己肯定感が高まった気になる。
自分が優れていると思うために、能力を高く地位や実績を多く見積もると強くなれた気がします。
理想の自分像を追い求めるあまり、他者から見える姿を偽装する。それが見栄といえるでしょう。
見栄っ張りの人は、自信を持ちたいという願望が強いので、表面上の自己肯定感は強い。
しかし一枚はがすと、劣等感への恐怖におびえ、自信が持てない本質が見える。結局は自分が正しいと思えていない。
またたとえ無意識でも、自分に都合がよく根拠のない自己評価をしてしまう人は傲慢(ごうまん)といえます。
謙虚になれず傲慢な心を持つと、弱さ・愚かさに気づかないので、自己肯定感の基本である「ありのままの自分」を受け入れられません。
見栄を張るのをやめる思考術。コンプレックスに負けない自信を
人気沸騰中のお高いバッグを肩から下げ、さっそうと街を歩く自分に優越さを感じる。 しかしクレジットカードの明細が届くたびに恐ろしくなる。ここ数ヶ月は封を開けた覚えがない。貯金はいつまで持つのだろうか…… ...
集団に同化する人格
優れていると思いたい欲求には、なかなか抗えません。
個人では謙虚なつもりでいても、所属する集団に誇りを持つことで、自分を高めようとしてしまう。
日本人は一般的にへりくだることを美徳としますよね。
これは社会的な要求によるものです。自分を卑下するというよりは、相手のおごり(傲慢さ)を許せない人が多い、と僕は考えています。
社会では自分の有能さを主張しづらい傾向にあります。しかし所属する集団が優秀だと主張しても、自分のおごりと思われない。
そのため所属する集団を高めて、相対的に社会での自分の価値も高めようとします。たとえば
私の妻はすばらしい。何もできない愚かな私にあきれもせず、支え続けてくれる。
ある男性がこのように話しても、聞いている人は夫(私)を愚かだとは思いません。むしろすばらしい妻がいるステキな男性だと思う。
こういった美辞麗句は自己高揚のために無意識で使われます。
実際に謙虚な気持ちで感謝を伝えたとしても、間接的に自尊心を高めようとしていることに違いはない。
"自己肯定化"という人の習性
自分自身を高める表現をしても、集団を高める表現でも、自分を肯定しようとする行為には違いありません。
基本的に人は能力を高く見積もります。
自分が優れていると認められないなら、見積もりと差異が生まれてしまう。
この現象は社会心理学者のレオン・フェスティンガーが提唱した:認知的不協和理論によって説明できます。
個人の中に矛盾する2つの認知があると不快感や心理的緊張が生じるため,人はこれを軽減しようとして態度変容を起こすことがある
引用:よくわかる心理学
多くの人は無意識下では優れていると思っている。それなのに社会から称賛されない。その差異が認知的不協和を起こす可能性があります。
認知的不協和を和らげるために人が行う方略の一つに、社会心理学者のクロード・M・スティールが提唱した「自己肯定化理論」がある。
全体的な”自己”の統合性を肯定・確認する過程。(中略)有能であるといった(中略)自己イメージを維持しようとする(中略)
直接的に防衛するのではなく,より広範で全体的な自己の統合性を肯定・確認することで脅威に対処すると考える。
引用:心理学辞典
単純に「優秀だ」と訴えるわけではなく、活用できる資源を適当に使用して、認知的不協和を解消しようということです。
その方法は人によってさまざまでしょうが、短絡的に考えてしまうと
- SNSで見てもらいたい自分を演出した記事を投稿する
- 自分の会社にいるメンバーがすごいと触れ回る
- 他人をおとしめて自分を価値が高い気持ちになる
このように自己肯定感の定義にある「ありのままを認める」ということはしません。
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以上、適切でない方法で自己肯定感を高めようとしても、安定して幸福な気持ちになれない。
どうしたらよいのでしょうか?
自己肯定感を高めるためには4つの原則があるのです。
自分を認める方法!自己肯定感を高める4原則
1.仲間と協働できる
自己肯定感はソーシャルサポートにより向上すると考えられています。
参考資料:中学生におけるソーシャルサポートと自他への肯定感に関する研究
ソーシャルサポートとは会社・地域・家族など、社会の中でやり取りされる相互支援のことです。
- つらく悲しいときに、友だちが親身になって話を聞いてくれる
- 家族との接し方がわからない子どもに、先生がアドバイスを与える
- 仕事で悩んで落ち込んでいる部下を、上司が励ましてくれる
これらの支援によって低い自己肯定感が高まりやすい。
しかしソーシャルサポートが生まれるためには、良好な関係性が必要です。家族や仲間と支え合いたいと思えなければ実現しない。
そのために自ら周りの人を勇気づけたり、悩みを聞いたりする働きかけに取り組む。
相手を一方的に評価せず、どうしたら状況が良くなるのか一緒になって考える。率先してソーシャルサポートをするのです。
協働は協力して働くと書きますが、同じ問題へ対等の立場で取り組むという意味を合わせて持ちます。
基本的には問題を抱える人が考えて対処方法を決断するようにサポートをする。そうしないと主体性を欠いた人間関係になってしまうからです。
相手の主体性を尊重し、正しく協働できれば、自分が困ったときに助けてもらえる関係性ができるはずです。
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2.自分に公正である
見栄を張ったり、反対に必要以上に卑下をしたりすると、周りの人から信頼されません。
自己肯定感を高めるためには、自分自身の心へ積極的に向き合う必要があるのです。
まずは内省をする習慣を持ちましょう。デジタル大辞泉によると内省とは自分の考えや行動などを深くかえりみること
です。
「近ごろ自信がないな」「意地っ張りになっている」など違和感を覚えたら、必ず内省に取り組みましょう。
- つらい気持ちはなぜ起きるんだろう?
- 自信をなくしていることってなんだろう?
- 私はどのように生きたいんだろう?
と自らに問いかけて、一つでも心の「なぜ?」を解明する。原因が分かれば不安の恐怖は軽減します。
内省を進めると、自分を飾る必要も、へりくだる必要もないと悟ります。
飾る必要もへりくだる必要もないので、自分に誠実でいられる。
それが公正であるということです。
客観的に自らを観察し、指揮官のように戦略と戦術を考えて実行する。そうすれば自己肯定感を維持できるはずです。
もし内省がうまくできなければ「Who am I?」テストをしてみます。方法は
- 「私は、____」と自分を表す言葉を__に書き入れる。20通り記述する。
- 記述を確認して、上から順に好き・嫌いを評定する。「非常に嫌い」「嫌い」「どちらでもない」「好き」「非常に好き」
- 記述を確認して、上から順に変えたいか・変えたくないかを評定する。「絶対に変えたい」「変えたい」「どちらでもない」「変えたくない」「絶対に変えたくない」
の3段階です。たとえば
- 私は会社が怖い[嫌い][絶対に変えたい]
- 私はSNSで癒やされている[どちらでもない][変えたくない]
- 私は頭が悪い[嫌い][変えたい]
- 私は友だちに優しくできる[非常に好き][絶対に変えたくない]
こうすることで自己評価が見えてきます。中でも重要そうな記述を選んで、内省のテーマに据える。
なぜ会社が怖いんだろう?何が?いつ?
というように5W1Hを意識して考えます。理由がわかったら
どうしたら変えられる?変える必要はあるのか?
と考えてみる。これを繰り返すと、自分が抱える悩みの傾向が見えてくるはずです。
たとえば「私は人に嫌われたくないって思っているんだ」のように。それをさらに掘り下げていく。
参考資料:自己肯定感促進のための実験授業が自己意識の変化に及ぼす効果
公正な審判であるように注意しながら心の問題を1つずつ点検すると、ありのままの自分を認められる気持ちが育ちます。
揺るぎない信念を持つ。実践しやすい根本信念の見つけ方を解説
自分を支えるものといえば、家族・ペット・仲間・栄光・地域……いろいろとあるが、最終的に頼れるのは自分だ、と世間ではよく言われている。 自分というのは不確かなものだ。自分を頼るなんてイメージがわかない。 ...
3.感動屋である
強く心が揺さぶられたとき、価値観の変化が起こります。新しい見え方を知ったり、信念が正しかったと納得したり、世界から心を閉ざしたりする。
ポジティブな価値観の変化には感動が伴います。
- 血の滲むような努力が報われた
- 守ってくれた友人の勇気が胸を打った
- 初めて口にした衝撃が忘れられず、そのレストランは自分の誇りになった
時おり涙を流しながら、全身に鳥肌が立ち恍惚に浸った経験が、少なからずあるでしょう。
感動は自己肯定感を高めるという考えを示した研究があります。
参考資料:児童期の感動体験が自己効力感・自己肯定意識に及ぼす影響 - 九州大学
価値観が前向きに変わると、
- 自分を否定する気持ちが和らぐ
- 他者に対して寛容になる
ということです。
これを利用して感動体験を増やせば、自己肯定感を意図的に高められる。
意図的に感動するのはなかなか難しい……。そう思うのもしかたがないですよね。
確かに衝撃的なできごとは自分の意思とは無関係に生まれるような気がします。
ただし意図的に起こせる感動もある。それは
知る感動
です。とめどなく知的好奇心を持ち、知ったかぶりをせずに情報を受け止める。
人によって態度を変えず、素直な気持ちで相手の経験をかみしめる。
小さな驚きも、小さな感動になる。ときどき大きな驚きが、忘れられない感動を生む。
知的好奇心の向上に取り組むのは、自己肯定感を高める活動と呼べます。
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4.学び続ける
これまで話した3つに共通することは、
探究心をもつ
ということでしょうか。
- 困りを解決しようと、仲間を知ろうとする
- 公正であるために、自分を知ろうとする
- 感動を味わうために、経験を知ろうとする
その気持ちを大切にして、学び続ける。
自己肯定感を高めるために必要なのは、
知的好奇心を持ち、科学的な態度で探求し、学び続けることなんです。
そのために他人にも、自分にも興味を持つ。
謙虚な気持ちで知ろうと努力し続けるのです。
学びは自分の成長を助け、そして成長は自己肯定感を高めます。
読書効率を高めたい初心者向けの簡単メソッドを紹介【付箋法】
サイドデスクの上にある私の積読は、さらにホコリが積もっていた。 読書をしたい欲求は十分にあるのですが、どうも面倒になって先延ばしにしてしまう。 楽に本から知識を得る方法ってないの?……そんなものはあり ...
おさらい
力量を証明することは人間の基本的な欲求です。強くあることを目指し、力がないなら別の手段で証明しようとする。
自己肯定感は力量を証明する欲求に対して「正しいことをしている」という感覚です。
社会的な動物である人は、身体能力・知性・地位・実績などの比較ではなく、社会適応の有無で自己肯定を感じられるようになりました。
誰かの上に立つことだけを目指さず、周りの人に良い影響を与えられる形で、自己肯定感を高められれば良いですよね。
自分のこと・多くのことに関心を持ち、学びを続けることが、心を豊かにする習慣といえます。