自信なしが原因の問題

緊張する原因を解説。人前で話すのがなぜ苦手か理解できる考察

投稿日:2019-03-15 更新日:

緊張する原因を解説。人前で話すのがなぜ苦手か理解できる考察

震えてうまく話せない。強い不安を感じる。緊張をほぐすように対処したいけれど、反対にますます慌ててしまう。

子供の頃はそれほどでもなかったのに、会社に入ってから急に緊張するようになった

簡単なプレゼンなのに、意味もなく体が震えてしまう……。

日常生活では多くの場面で緊張と向き合わなければなりません。

どうして緊張をするのでしょうか?

自信より認められない不安が上回ってしまうからです。

まずは緊張のメカニズムを知り、能力を最大限に発揮する方法を探しましょう。

失敗への恐怖が緊張の原因に

安心できない環境だから、不安になる

もしあなたが自室に1人でいるなら、一度周りを見渡してください。確かに誰もいませんよね。

つまりあなたが今からすることは、誰にも見られることはないんです。

では何かモノマネをしてください。どうせなら似せられない人のほうが面白い。そうですね、アントニオ猪木さんのマネをしましょうか。

あごを突き出し、口角を上げ、眉間にシワを寄せながら、隣の部屋の人に聞こえない程度の声で「元気ですか〜!」と言ってみましょう。

……言えましたか?

当然言えますよね。誰にも見られないのですから。

しかし静まり返った教室でいきなり、隣の席の友だちから「アントニオ猪木さんのモノマネをして」ってむちゃ振りされたら、したいとは思わないでしょう。

きっと先生に怒られますし、「勉強の邪魔だ」と思う友だちもいるでしょう。そもそもまったく似ていないのですから、笑いを誘う自信がありません。

つまり安心できる環境ならできるのに、安心できない環境だったら恥ずかしいことはできない、ということです。

もし安心できない環境でむりやり恥ずかしいことをしようとしたら、心臓がバクバクいって呼吸が浅くなるなどの状態、いわゆる緊張の状態になってしまう。

失敗の予測がストレスを高める

「誰もいない場所でなら何でもできる」というわけではありません。

誰もいない急斜面の山道を下らなければいけない。少ない足場を頼って慎重に進む。一歩間違えたら滑落してしまう。

そんな状況ではやはり緊張してしまい、手足が思うように動かないかもしれません。

緊張のトリガーは失敗の予測です。

ケガへの恐怖とも言えます。

授業中にアントニオ猪木さんのモノマネをして、先生に注意されたり、友だちに迷惑がられたりしても肉体はケガをしませんよね。

しかし心は傷つきます。

心への傷は、体への傷と同様に恐ろしいことなのです。

普段の生活でも失敗すると心が傷つくでしょう。例えば、

  • 期待を一身に背負ったピアノのコンクールで、ミスが重なり落選するかも
  • 重役が参加した会議でプレゼンするのに、まるで興味を持たれないかも
  • 好きな異性に思い切って愛の告白をしたいのに、フラレるかも

このシーンが期待通りに進んだら、欲しかった重大な結果が得られます。

しかし失敗しすると積み上げてきた評価を失ってしまう

さて自分だったら気軽にのぞめますか?それとも緊張しそうですか?

成功の期待より失敗の不安が上回ると、自分の実力が出せなくなる。

つまり人によってはチャレンジするような場面で緊張しやすくなるのです。

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人前で話すときに緊張するのは、他者を気にするから

身体反応を恐れると緊張が促進される

過度に緊張すると、いつもの実力が発揮されませんよね。

まるで自分の体では無くなったように、自由に動いてくれないのです。

なぜ自由に動いてくれないのでしょうか?

理由を知るために、以下の文章表現を見てみましょう。

  • 胸がどきどき張り詰めてくるのを感じる
  • 膝が震えて体がすくみ上がるような堅苦しい気詰まり
  • 肌着がぐっしょりするほど全身に脂汗が吹き出る

緊張するの表現・描写・類語|緊張|ネガティブな感情:感情表現の一覧

緊張している状態ははっきりと自覚できます。

体の様子がおかしくなったり、集中力が散漫になったりする。

人は傷つくことを予感すると、体に力を入れ危険に立ち向かう、または回避しようとします。

そのことを「闘争・逃走反応」と呼ぶ。

闘争・逃走反応が生じると、敵と戦ったり逃げたりする危機状態に対処するために、体に力が入る

これは多くの動物が持つ本能です。

しかし体の傷だけではなく、心の傷を予感しても、闘争・逃走反応は起こるのではないかと考えられています。

「しっかりしなきゃ」「がんばんなきゃ」と思うほど体に力が入る。

力んでいることに自分自身で気づくと「緊張していたらだめだ」と抗いたくなり、さらに力が入ってしまう。

つまり「落ち着こう」と思い意識を高めてしまうと、反対に緊張が激しくなってしまうというメカニズムなのです。

適度に緊張するだけなら、むしろ運動能力が高まります。

しかし過度な緊張におちいってしまうと、舌や脚がもつれるなど、なんでもない運動すら自在にできなくなる。

「歩くとき、手と足が同じ向きに動く」という情景がよく描写されますよね。

緊張のせいで体を自在に動かせている感覚がなくなると、身体活動に影響が出ます。

普段の動作は無意識のほうがスムーズなのですが、ギクシャクしてしまうと意識してしまい、わけが分からなくなるのです。

わけが分からなくなると、スピーチや楽器の演奏が上手にできなくなってしまいます

自信より心配が上回ってしまう

試合・テスト・発表・告白などの重要な場面で緊張すると実力は発揮できません。

ではなぜ緊張するのでしょうか?

多くの場合、悪い評価を恐れていると考えられます。

重要な場面では以下のような成果を期待しますよね。

  • 実績
  • 名誉
  • 金銭収入の向上
  • 告白のOK

このように明確な(言語化できる)成果を期待するのは当然でしょう。

しかし手に入らないと感じたら、悲しい

達成できる自信より、達成できない不安が強くなると、緊張が強まります。

しかし明確な成果以外にも、私たちはほぼ無意識で願っていることがある。それは、

他者からの承認です。

このことで1つ例を出します。僕が昔ギターを引いていたときの話です。

練習スタジオでギターを弾いてもまったく緊張しないのに、コンサート本番では緊張してしまい、簡単なプレーでもミスが頻発してしまいます。

実は全てのコンサートで緊張するわけではありません。

憧れのギタリストAさんが観覧に来ているなど、特定の人を意識してしまうと、いつもより力が入ってしまったと記憶しています。

つまり「Aさんの前で失敗してしまったらどうしよう」と不安を感じていたんですね。

僕はAさんから認められたかったので、以下のような反応を期待していました。

  • 上手いな
  • すごいな
  • 君には負けたよ

相手の反応を意識しすぎると、緊張が高まってしまう。

また僕はポジティブな評価を得る自信よりも、ネガティブな評価を下される心配に悩まされていました。

  • 下手だな
  • レベルが低い
  • 私のほうがうまいな

というように、相手に見下されることを恐れていたわけです。

(恥ずかしながら)練習をあまりしなかったということもあり、自分が下手だと思いこんでいたんです。

そのくせ「見下されると悔しい」と予想してしまい、体に力が入りすぎてしまったんですね。

つまり相手に認められることを期待していたが、認められる自信が少なく、劣等感で傷つくことを恐れてしまったので、緊張したというわけでしょう。

このように称賛を期待しても、失敗する可能性を低く見積もると、緊張してしまいます

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集団から追放されることを恐れる

一方で称賛は求めていないけれど、失敗を恐れて緊張をするケースもあります。

例えば学校で国語の教科書にある文章を、一人ずつ席の順番で読んでいくようなケースでも、緊張して声が詰まったりする人がいますよね。

国語の教科書を読むくらいでは称賛を求める人は少ないでしょう。

しかしなぜ失敗を恐れてしまうのでしょうか?

  • 失敗すると責められるかもしれない
  • バカにされていじめられるかもしれない
  • 頭が悪いと思われるかもしれない

学校などの集団で、自分の立場が悪くなることを恐れてしまうと、過度に緊張してしまう。

集団から仲間だと認められたい欲求が働くので、「上手くできなかったらどうしよう」という自信のなさが心の傷を予感してしまうのです。

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バレていないのにバレていると思ってしまう

相手がウソに気づいていないうちから慌ててしまう。このようにウソが苦手な人は異常な反応を見せるので、すぐにバレてしまいます。

心配になったせいで「もしかしたらバレているかも」と不安になってしまうのですね。

同様に会社でプレゼンをしているときも、自分の緊張がオーディエンスに伝わってしまったと錯覚をして、さらに慌ててしまうことがあります。

このような心理状態は「透明性錯覚」という概念で説明できます。

透明性錯覚(illusion of transparency)とは,自分の感情や思考などの内面が露わなものとして他者に伝わった,と実際以上にその程度を過度に推測することをいう

自己紹介場面での緊張と透明性錯覚

つまり緊張がバレたと思いこんで自分が無様に感じてしまい、さらに自信を失ってしまう。

しかし透明性錯覚は、勘違いの可能性が高いのです。

例えば僕はスピーチ中、緊張のあまり頭が真っ白になってしまい、話の論理構造がめちゃくちゃになったことがあります。

緊張がバレて恥ずかしいと思ったのですが、スピーチを聞いた人からは「堂々と話しをしていて、すごいなと思った」と評されました。

実際のところ発表者の様子はそれほど相手に注目されていません。基本的にはスピーチでも楽器の演奏でもオーディエンスは内容を重視するからです。

もちろん発表者の緊張は少なからず伝わるでしょうが、それ以上に自分自身が単に気にしすぎているだけというケースが多いんですね。

どうして透明性錯覚は生じてしまうのでしょうか?

原因の1つは誤った内的体験、すなわち勘違いが強すぎるからと考えられます。

周りの人に認められたいと思いすぎた結果、心配して妄想を繰り返し、勘違いが止まらなくなる。

赤面症の人は、赤面していない段階でも「顔が赤くなった事がバレた」と思ってしまう傾向があるそうです。

透明性錯覚は自分の感情を誤って認知し、相手の気持ちを決めつける、少々身勝手な心理的ゆがみだと捉えられます。

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おさらい

どんな状況でも緊張するわけではありません。むしろ特定の状況で緊張は起こります

特に周りの人の注目を集めている状況では、体に力が入ってしまいがちですよね。

発表などの身体的なリスクが少ない環境で緊張するのは、認められたいからと言う理由が大多数をしめます。

特定の人・不特定の人・または自分自身に「認められたいなぁ」と思っているわけです。

しかし成功する自信よりも、失敗する心配のほうが上回ったら、緊張は増大して体が自在に動いてくれません。

実力が発揮できないと苦しいですよね。

では緊張を緩和するためにはどうしたらいいのでしょうか?

次の記事でお伝えします。

  • この記事を書いた人

やくしじ

産業カウンセラー。個人向けの心理カウンセリングと、少年院のキャリアカウンセリングをしています。すべての行動には目的がある。熱意・不安・焦り・イライラなどの制御できない溢れ出す思いを全人的に受容し、自己理解を支援する。単発的な傾聴のニーズや、継続カウンセリングを通しての自己変容や目標達成を支援します。ご依頼はお問い合わせへご連絡ください。詳しいプロフィールはこちら

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