役職が高くなったときはうれしかったが、責任のある仕事に押しつぶされそうだ。
上司も部下もプレッシャーをかけてくる。キレてはいけないと心を抑え続けていくしかないのか……。
周りから責められなかったら苦しくない。
責任は社会に役立ち自分を成長させる最高の機会だ。
目次
責任って何?プレッシャーに潜む他者との関係性
4種類の責任
責任を辞書で調べると以下の意味が出てくる。
1 立場上当然負わなければならない任務や義務。
2 自分のした事の結果について責めを負うこと。特に、失敗や損失による責めを負うこと。
3 法律上の不利益または制裁を負わされること。特に、違法な行為をした者が法律上の制裁を受ける負担。主要なものに民事責任と刑事責任とがある。
責任のある仕事とは影響力が強い仕事だ。利益を向上させ損失を防ぐことが求められ、立場が上がるほど責任重大になる。
仕事で恐ろしいのは失敗して責められることだ。
少し本題に入る前に責任について整理したい。主に責任は4つのシーンに分けて考えられる。
- 個人的な責任
- 社会的な責任
- 逸脱が許されない責任
- 道徳的な責任
個人的な責任
自分自身の成長に対する責任だ。
人に迷惑をかけないのなら自由は個人の責任により許されるが、怠惰に飲まれてしまっては人生で得られる選択肢が狭まってしまう。
自分がどうありたいかについて、未来志向な選択をすることは個人的な責任と言える。
社会的な責任
会社などの共同体で求められる責任だ。
自分が行う行動により不利益が出た場合に、他者から責めを負わされる。
この記事では主にこの責任について説明をする。
逸脱が許されない責任
法律や共同体のルールにより罰が明確にされている責任だ。
これを逸脱した行動をして見つかると罰を受ける。
基本的には刑罰や社則など明示的なものがルールになる。しかし一般的な行動規範のような暗示的なものがあるので分かりづらい。
道徳的な責任
一つは時間や種族を超えた明確でない責任だ。
未来のために車に乗らないほうがいい、クジラは狩らないほうがいいなど、人それぞれの考え方がある社会の課題ともいえる。
もう一つは個人の信念が求める責任である。
善悪の判断は人によって違う。個人的な信念により罪の意識が芽生える。
社会的な責任には明確な罰がない
以上の責任のうち「逸脱が許されない責任」だけは明確な罰が設けられているが、他の3つについてはない。
つまり罰というのは強制力のない個人的な考え方だ。人を責めようと思っていることが罰を生む。
主に仕事に関わるのは「社会的な責任」と「逸脱が許されない責任」の2つである。その他の2つも影響はするのだが、今回は深く考察はしない。
責任の重さは社会との関わりにより生まれているのだ。本当は社会的な責任を果たさなくてもよい。
少し暴論に感じるかもしれないが、考え方次第だといえば納得できないだろうか。
つまり責任は恐れなければ怖くない。
責任とは価値を増幅させること
責任とは前向きな行動を起こすときに生まれる概念だ。仕事により価値を増幅し人々に利益をもたらす。
責任は取らなくても何も失わない。しかしそれでは秩序を失い組織は自然に壊滅へ向かう。
企業は価値を提供して収入を得ている。価値が提供できなくなったら自然に顧客が離れていく。
給料をもらっている人が全く働かないなら責任の放棄だ。この場合は労働者の怠慢が客観的に証明できるのでクビにできる。
仕事としてやるべきことをすれば、会社の利益が増えなくても仕事をしたことに違いはない。
組織は利益が出なかった要因について計画が間違っていたことを疑うべきだ。個人を悪者扱いにはできない。
- 計画が成功する条件は整っていたのか
- 時期は適切だったのか
- 任せた人は適任だったのか
やることをしっかりやっていれば、個人は損害の責任を取らなくてよい。
しかし罪の意識は個人を苦しめる。
組織のために良いことをしようとしているのに恐ろしい気持ちになるのが責任の怖いところだ。
個人的な責めは恐れにより生まれる
罰は社会との関わりによって生まれる。社会とは自分を含む人間関係だと定義する。仕事仲間や取引相手だ。
責任を恐れる心は主に3つの要素が生み出している。
- 周りを気にする心
- 成功への依存心
- 周囲の恐れが自分に向く
周りを気にする心
具体的な罰がないのに失敗を恐れるのは、よい結果を出さないとだめだという思い込みが原因だ。
「結果を出さないと周りに認めてもらえない」「失敗したらダメなやつだと思われる」と恐れてしまう。
責任を果たせば貢献の喜びや自尊心の高まりにより幸せな気分になる。
しかし喜びへの欲求より恐れが上回った場合、行動の動機は周りから認められたらよいという消極的なモチベーションが生まれる。
主体性を持つための考え方
成功への依存心
「仕事で成功を続けて出世する」そんな確実ではない人生計画では失敗が許されない。
失敗をして評価が下がることが罰になるので、できそうにないチャレンジを恐れるようになる。
成功だけに喜びを感じるのは危険だ
周囲の恐れが自分に向く
「自分はルールを守りがんばったけれど失敗した……しかし周りの人から容赦なく責められる。」
そんな場合は他人の責任転嫁だと思って間違いない。周りの人は組織の問題として考えたくないのだ。
悪者を作ってしまえば不満をぶつけられる。誰かを責めていると自分の責任から現実逃避できる。社会的な責任の罰はこうやって生まれるのだ。
しかしルールに違反していない限り具体的な罰はない。あるのは他人による心理的な責めが存在するだけだ。
責任は自分をスーパー成長させる。
責め苦を軽減し前向きに仕事へ取り組める責任の活用方法は4つある。
プレッシャーを破り、責任を生かす4つの作戦
1.ルールを徹底的に守る
絶対にルール違反をしない。
法律や社則を守るだけではない。仕事の行動で好ましいと考えられていることは積極的に守る。
企画は正しく行動することが前提で考えられる。
- 不正をしない
- 脚色をしない
- 省略しない
- やりすぎない
- 残業で調整しない
- 流されない
それらを冒してしまうと企画どおりにことが進まず効果測定ができない。
たとえ成果が出なくても次につなげるために行動の検証は必須なのに、ズルをするとまともな検証ができないからだ。
この6つについて以下で解説する。
不正をしない
重大なルール違反に該当する行為だ。賄賂を渡す・売上を操作する……など。
不正により成果が出たとしても永遠には続かない。不正にはお金や時間がかかる。なによりいつかはバレる。
懲戒処分や刑事罰を受けるのは、今後の人生にハンディキャップを背負うだろう。
脚色をしない
少しシビアだが、売上の帳尻合わせのために同僚や友人などにお願いして買ってもらうのにも注意する。
これらはルール違反ではないが、お願いは何度もできない。
売る予定があるのなら予算に組み込むべきで、帳尻合わせに使うのは成果に色付けしているだけだ。
もちろん帳尻合わせに使わず、通常営業で友人が商品を気に入って買ってもらうのはOKだ。
省略しない
決められた行動があるのなら守る。たとえ仕事が早く終わるとしても省略してはいけない。
多くのミスは省略行為から発生する。
面倒でも決められた報告はしなければならないし、手順通りに進めないと漏れが発覚した後処理のほうが大変だ。
省略はズルである。成果が良くないときにズルが発覚したら責められるのは当然だ。
仕事の効率化は人に説明して納得してもらえることをする。省略したほうが合理的なら事前に周りの理解を得たほうがよい。
残業で調整しない
企画は業務の倫理に従って組まれなければならない。それなのに残業をしなければ終わらないのなら企画自体がおかしい。
長時間働いて数字を良くするのは脚色と取られても仕方がない。しかも本人はがんばったと思ってしまうので評価が悪いと納得ができないだろう。
残業ばかりになりそうなら責任者に相談し、超過勤務を踏まえた目標や予算に修正したい。
残業をやめて空いた時間は、学びで自分の能力向上を目指す。
例えば新たなアイデアを出すための資料や学習書を読んだり、信用できる仲間と食事をしながら相談する。
流されない
真面目にがんばる人を嫌う集団が存在する会社も多いだろう。
彼らは「そんなに頑張らなくてもいいのに」「サボろうぜ」と悪魔のささやきをしてくるのだ。
そんな人たちに気を使って流されてしまっては、嫌われるのを恐れる人生が確定する。
敵対的な姿勢を取る必要はない。(それでもいいが)
素直に「この企画が楽しいからやる気になっているだけだよ」と相手を非難せずに断る。
断るのが面倒なら普段から防衛線を貼っておく。
いつも整理整頓をするなど規律がある行動をして、しっかり者をアピールしておく。
プラスアルファで社内の整頓にまで目を光らせれば、不良たちは自分たちが悪いことをしているように思えてくるのだ。
主体性を持つ具体的な方法
2.人を巻き込む
良好な人間関係を作るためにも信頼できる相談相手を作っておく。
自分一人で抱え込んで仕事をしない。何をしているのか周りの人に理解されないからだ。
あまりに行動が不透明だと周りの人に勝手に妄想されて、思わぬ誤解を受ける可能性がある。
「〇〇さんは出世がしたくてたまらない」「仕事に囚われている」というように。
ちょっとしたことでも悩みがあれば誰かに相談する。指摘されたことについて必ず考える。
アドバイスは採用してもしなくてもどちらでもよい。しかし考えた結果は相手にフィードバックする。
要は「あなたのおかげで気づけた」と思ってもらうのが重要だ。仲間だと認識してもらうことで応援者になれる。少なくとも敵ではなくなる。
相談相手は企画の責任を持つ上司が最有力だが、同僚・先輩・後輩など誰でもよい。
誰かを巻き込むとその人が口コミを広げる。良い内容の口コミは社内に応援ムードができる。
成果が良かったら称賛され、悪くてもねぎらってくれる。
人間関係を作る仕事術
3.全ては素材と考える
PDCAサイクルが代表するように、計画・実行・検証のサイクルを循環させれば行動は最適化される。
アイデアのもとになる素材が多くあれば、計画も検証も幅が広くなり改善を目指しやすい。
考える素材は失敗から簡単に見いだせる。問題点を抽出しやすいのだ。
ルールを守ってコミュニケーションが取れていれば、恐ろしいのは失敗をして劣等感を覚えることだけ。
劣等感を感じないためには、努力に目を向けて自分をねぎらうのが一番だ。
努力を最適化するために効果測定をするポイントを何度も作っておく。目標を細かく刻み短期目標を設定するのだ。
積極的に失敗を積み重ねて何度も小さな改善を積み重ねれば成果が向上する。
行動の最適化サイクルは以下のように行われる。
- 要素を絞り改善案を考える(要素が多すぎると効果に影響を与えた要因がわからない)
- 短い期間で検証する
- 要素の影響を測定し評価する
- 繰り返し
この考え方は「新商品の開発」でも「コンビニのレジ打ちを早くする」でも同じだ。どんな行動にも使える。
要素は可能な限り一つに絞る。しかし時間がない場合は増やしてよい。測定の精度は落ちるがしかたがない。
成果を向上させる唯一無二の方法は、試行錯誤の繰り返しだ。
短期目標の設定方法
4.一年間くらせる準備をする
責任を恐れる気持ちは「仲間はずれにされる」「失敗して出世の道が途絶える」など、会社に依存することで発生する。
それを防ぐのはいつでも自立できる安心を得ておくのが好ましい。
具体的にはこの2つだ。
- 貯金
- 技術
貯金
貯金の額は1年のあいだ無職で暮らせる額を目指そう。
日本での一人暮らしなら最低でも200万円。もちろん金額は個人の裁量で決めればよい。
経済的な依存は自分の意見を言えない一番の原因になる。
お金を貯める考え方
技術
仕事を辞めた後に前より条件が悪い仕事には付きたくない。そのためには自分の得意を見つけて磨く。
面接でアピールポイントがあれば、デキる人だという印象を持たれやすい。
また確立した技術があれば独立もできる。
鍛える技術は自分の好きなことなら何でもよい。今の仕事に関連するものなら接する時間が早く成長も早いだろう。
アピールポイントは具体的なほど魅力がわかりやすい。
「マーケティングが得意です」よりも「マーケティングに必要な心理学の知識はすべて頭に入っています」のほうがよりグッとくる。
自分を磨けばどんな種類の困難でも柔軟に対処できる資質が付く。
興味があることを積極的に伸ばす習慣を身につければ、
成長するために責任を取りたくなる。
おさらい
責任を取ることで生まれる恐れは
- 自分に対しての失望
- 他人に嫌われる心配
がもたらしていると考えてよいだろう。
自分の考え方を調整できれば、恐れは次第に無くなるのだ。
責任を取ることで
- 信頼が得られる
- 人間関係が良くなる
- 自分の成長につながる
と良いこと尽くめになる。
責任を前向きに考えて、自分を成長させよう!