- 見落としが多い
- 気づかいができない
- 発想力が貧困
……これらはすべて気づきが少ないから発生する問題です。
しかし
- 注意深いけれど、発想力がない人
- おっちょこちょいだけれど、気が利く人
のように得意な気づきと苦手な気づきを同時に持つ人もいる。
本来は誰にでも気づく力がある。
自分が欲しい気づき力を得るにはどうしたらいいのでしょうか?
準備をすれば、気づく力は格段と向上します。
目次
気づきとは
気づくの意味
気づくとは「意識している」という状態全般を指します。たとえば
- 駅から会社までの道中で、雨が降ってきたことに気づく
- 電車に乗ってから、スマートフォンを寝室に忘れてたことに気づく
- 同僚のKさんが、前髪を切りそろえているのに気づく
など普段から私たちはたくさんのことに気づいている。
上記のように「ぱっ」と意識できる気付きもありますが「お皿のしょうゆが少なくなった(から継ぎ足す)」のように、気に留めないほどの微細な気付きもあります。
気づきとはごく当たり前のことであり、その重要性によって感じ方が異なってくる。
価値観が揺さぶられる気づき
しかし普段から思う当たり前のことは、わざわざ「気づいた」なんて感じません。
気づきを意識するのは、自分の価値観に影響を与えるような場面ではないでしょうか。国語辞書にある気づきの意味は、
それまで見落としていたことや問題点に気づくこと。「小さな気付きが大発見につながる」「日々の気付きが成長をもたらす」「生徒の気付きを促す」
つまり今まで考えていなかった、または揺らいでいた考えの根拠に出会ったとき「気づいた」と強く認識するのです。
それはいわゆる「ひらめき」に近い感覚が得られたときだと思います。ひらめくと高揚感を感じ、快感を覚えるので、それが強い印象になる。
僕はひらめきが人の精神的な成長に多大な貢献をしていると考えています。
ひらめくことで得られる快感を学習すると、再びひらめきたいと意識する。それが知的好奇心につながり、学習意欲を生むのです。
話を気づきに戻します。辞書の意味を踏まえると、気づきは3種類あることがわかる。
- 日常的な気付き
- 問題を見つけた
- 解決方法を見つけた
日常的な気付き
前項で話したように、気づくことは日常的にある。
価値観を揺さぶらないような気づきも実は大切です。これは後ほど解説しましょう。
問題を見つけた
問題とは「物事へ期待している状態と、現在の状態に差が出ていること」を指します。そのような場合は往々にして困っているはずです。
「困ったなぁ」と感じたときに気づきは現れます。また「困ってそうだなぁ」と誰かを見て思うこともある。
解決方法を見つけた
問題の解決方法がわかったとき、気づきはひらめきとなり強く「わかった」と感じます。たとえば
- 学力テストで考えて答えをひらめいたとき
- 動かなくなった機械の具体的な問題点が明確になったとき
- 困っている人を助けてあげられる行動が思いついたとき
などの状況が思い当たります。ひらめきは強い快感を伴う。
以上のようにまとめてみると、気づくことの意味が見えてきます。気づくとは
行動を最適化するという目的がある。
もし気づかなかったら、雨の中で傘をさすという考えが思いつきません。機械は動かないままで、困った人に手を差し伸べられない。
つまり気づきがないと物事を良い方向へ進められないため、生活や仕事に支障をきたします。
大事なことや状況を良いように変える気づきを得られれば、人はより良い活動ができますよね。
一方で日常的な気付きの少なさに不満を感じている人もいる。また問題発見はできるけれど、解決方法がわからないという場面もある。
なぜ気づけないのでしょうか?
なぜ気付かないのか、原因を探る
知識が少ない
たとえば仕事の新人とベテランの違いのように、経験で得た知識量によって気づけることがまったく変わってきます。
極端な例ですが雨に打たれても、服がぬれる・体が冷える・汚れがつくことを知らなければ、傘を差そうという発想は生まれません。
今までの経験に従い、人間は行動を調整します。場合によっては本能にすら抗い、社会生活に順応するため行動に秩序をもたせようともします。
つまり知識がないと自分勝手な行動になる。仕事で新人が勝手なことをすると迷惑を掛けることがあるように。
問題提起をしない
知識があったとしても、問題だと気づかなければ思考は働きません。
学校で機械について学んだ人でも、通勤途中で目にする関係のない機械の故障に気づかない、そんなこともありえます。関心を持たないと問題提起はされません。
問題といえば学校のテストです。学力テストでは問題が決まっており答えも決まっている。つまり記憶を思い出せれば正答が得られます。
しかし現実の問題には決まった解答がないことが多い。カレーを作ろうと思ったら冷蔵庫に人参がなかった……その場合の答えなんてたくさんありますよね。
物事に関心を持ち問題提起をしなければ、気づきの回数は大幅に減ります。
意志の力がない
気づきは考えて能動的に生み出せます。考えることは苦しみを伴う。思考には体力が必要なのです。
思考の体力は「意志の力」と置き換えられます。意志の力は持久力と似た構造を持っている。
体力がない人は1kmのジョギングさえも苦しくて耐えられません。思考も同じです。意志の力がないと1分間まじめに考えることすらできない。
気づきが生まれない経験が続くと、考えてもしかたがないという無力さを感じる。
これは「学習性無力感」といわれ、本当はできるのに「できない」と思いこんで行動しなくなる状態を指します。
学習性無力感に関して有名な逸話があります。
幼い頃にサーカス団に捕まった象が足かせをされた。小さな象の力ではどうあがいても逃げられなかった。
逃げられないと思い続け、大人になった象。その足には足かせではなく、スカーフが巻かれているだけだった。
あきらめというのは学習され、自分の価値観となってしまう。苦しむくらいなら、やらないほうが楽だと考えるのです。
だから困難を目の前にすると、解決方法を考えず答えを求めてしまう。
車輪の再発明という慣用句が示すように、むだなことは考える必要がないかもしれません。
ただしそれは物事の優先順位を付けて、必要なことから考える態度がないと意味がない。思考停止になると人はまるで成長しなくなる。
自制心を鍛える方法を導いたマシュマロテスト。成長戦略を知る
あなたは「自制心」がありますか? ……いいえ、ありません!と言ってしまう人が大多数だ。 誘惑に負けてばかりだと、気持ちが焦る。 「次は絶対」が口癖になるが、”絶対”を守れない自分が憎い。 自制心を持て ...
言いわけ探しをしてしまう
難しい問題にぶつかったときは、解決方法が見つからないため考えることをあきらめてしまうかもしれません。
解決しないままでも、どうにかなる問題はあります。しかしそれでは不満が残ったままです。
不満が解消されないからといって、他者や物事のせいにしてはいけません。問題が解決されるわけでないので、この行動に意味がないことは明白です。
そして何かのせいにしてしまうと不満を解消した気になる錯覚を覚えます。
責任転嫁をすると快感が生じる。
人は基本的には快感を学習し後々再現しようとする。
学習性無力感のように、責任転嫁も学習されます。問題が生まれたら悪者の決めつけをしようという思考回路ができてしまう。
人に歩み寄る気持ちが持てる。苦しい仮想的有能感を手放す方法
「いつも文句ばかり言っているね」と、からかわれるように友だちに言われる。 自分でもそんな悪癖を直したいと思っているが、批判をやめることは不可能だ……。 その場にいない人の話を聞くと、価値観を認められず ...
以上のように、気づきが生まれにくい人には原因があります。
気づきというのは、ふとした時に「ぱっ」と落ちてきそうなものです。しかし実際は違い前提条件が必要になる。
気づきを増やす前提条件とは、
自分の無意識下を最適化することです。
その具体的な方法とはなんでしょうか?
気づきを生み出す5つの方法
1.勉強習慣でプライミングを生かす
知識量によって気づきは格段に増えます。だから勉強をかかさないようにします。
「勉強なんて面倒だ!」と感じる人も多いでしょう。しかし(少し小難しいかもしれませんが)理由を聞いてください。
気づきが生まれる過程にプライミングという現象が関わってきます。
プライミングとは「気づきは経験に影響される」という意味です。(実際はもう少し小難しいので詳しく知りたい方は以下の外部リンクまでどうぞ)
プライミングを体験するために簡単なテストをしてみましょう。
- 問題1:「みどり」と書いているのは左右どちらですか?
- みどり:きいろ
- ぴんく:みどり
- むらさき:みどり
- 問題2:「みどり」と書いているのは左右どちらですか?
- きいろ:みどり
- ぴんく:みどり
- みどり:むらさき
2つの問題を比較して、どちらが難しかったですか?おそらく2問目でしょう。
前提知識として緑色を知っているから、文字を識別するときに影響が出てしまう。緑色で「きいろ」と書いてあるほうを、つい見てしまいます。
みどりをイメージしたら色が思いつくので頭が混乱するんです。
それを踏まえて次の問題です。
- 問題3:「зелень」と書いているのは左右どちらですか?
- желтый:зелень
- розовый:зелень
- зелень:фиолетовый
問題3は問題2をGoogle翻訳でロシア語にしたものです。「зелень」というのは緑という意味ですが、ロシア語を知らない人は、色の違いが気になりませんよね。
というのがプライミングの基礎概念です。つまり知識がないと状況に違和感を感じない。
つまりこの仕組みをうまく利用すれば、”今”体験していることと、既にある知識が結びつき、気づきが生まれるというわけです。
プライミングを起こすには無意識下で気にかけている要素を増やす。
目の前の物事への判断に対し、無意識の情報が干渉する可能性が高まる。
そのためには一にも二にも経験です。能動的に勉強をすればよい。
仕事で新人が問題に気づけないのは知識が少なくプライミングされないからです。ベテランは知識があるから思いつくことが多い。
はじめは勉強へ取り組むのは面倒かもしれません。しかしあきらめずに続けると、知的好奇心が起こるようになります。
知識が増えることは非常に気持がよい。勉強を習慣化するのが気づきへの第一歩でしょう。
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2.潜在意識へ問題提起する
いくら知識があっても、その物事へ関心がないと気づきは生まれにくい。
そのため気づきたいと思っていることを洗い出して、問題提起する習慣を持ちましょう。
たとえば取引先(商店にしましょう)へ巡回営業をする仕事ならどうでしょうか。
御用聞きに徹するよりは、問題点や良い点を見つけて、今の状況をさらに良くしたほうが喜ばれますよね。
そこで相手のためになることを意識すれば、気付きの回数は高まる。
- 商品を手に取りやすくするには?
- 店主が思っているけれど口には出せないこととは?
- お客さんがこの店が良いかもと思える他にはない仕掛けとは?
などの自分なりに考えた問題提起を毎朝確認してから出社すれば、プライミングが起こりやすくなります。
3.解決志向になる
せっかく気づいた問題を放置しても意味がありません。誰か・なにかのせいにするのは、思考力のムダでしょう。
責任転嫁にはわけがあります。問題がある状態は不安だから解消したいと思っている。
しかしそこを踏ん張って考え、解決方法が見つかったら、ひらめきの強烈な快感を得られる。
問題を放置せず、今より良い状態にすることを求めましょう。つまり解決に向けて考える態度を持つ。
たとえばカレーを作ろうと思ったけれど、にんじんがない。そんなときは以下のように考えるはずです。
- 作るのを止める
- スーパーに買ってくる
- にんじんなしで作る
- インターネットで「カレー_にんじんなし」と検索して代案を探す
- 代わりに玉ねぎをたっぷり入れて作ってみる
- トマトをふんだん使った普段とまるで違うカレーにする
こんな簡単なことなら案はいくらでも考えられる。答えは1つではありません。決まりのない問題は自分なりの最適案を考えれば良い。
難しい問題でも考えを深める方法は、以下の記事が参考にできます。
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考えても思いつかないから苦しくなる。しかし気付きは”ぱっ”と浮かぶものではなく、徐々に形作られるという興味深い研究があります。
Tパズルというピースの組み合わせで形を作るゲームを用いた実験です。
見た目より難しいようで、はじめて解く多くの人は、試行錯誤をしないと答えが見つからない。
何度も組み直しても解らないので苦しい時間が続きますが、ある時”ぱっ”と答えがわかる……。しかし実際は徐々に答えへと近づいているらしいのです。
答えに近い形は序盤から出現するのですが、重要な形だと気づかれない。また答えと遠い形を作ってしまう……。
しかしだんだんと答えに近い組み合わせが増えてゆき、あるとき合致するということです。
参考書籍:教養としての認知科学
この研究では、ひらめきは”ぱっ”と出るわけではなく、無意識下で形成されていくということが示唆されました。
答えにたどり着かないとひらめきの快感が得られないので、途中で挫折してしまう。しかし潜在意識の中では前向きな変化が起きています。
金の鉱脈のように、掘り続ければいきなり目の前に金が現れるということです。
代わり映えのない景色に惑わされず、解決に近づいていることを覚えておく。
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5.気づいたことに気づく
何気なく起こる日常的な気付きにも、大きな価値観を揺るがすヒントが隠されているかもしれません。
当たり前のことへ意識を向けずに処理をすると、そこで得た情報へ注目できず、自分の知識・経験になることはない。
どんなことにも時には注目するように、意識をする習慣を得ましょう。たとえば
電車のドアが閉まる直前はゆっくりだな。おそらく挟まれてもケガをしないような配慮だろう。
閉まる直前……最後は丁寧なんだな……特別な配慮……
仕事の接客も、最後に個人的な感謝を一言添えたら、印象が良くなるかもしれないな。
というように日常の気付きが、自分を成長させる気付きにつながることもあります。
普段の行動を無意識で行わず、意識的に行うことは、自分自身を客観的に見る訓練になる。
自己観察はこり固まった考えを柔らかくします。ぜひ習慣づけるようにしましょう。
おさらい
何気なく気づくことも、大きな問題に気づくことも、基本的には注目するという同じ原理に従っています。
興味を持つ対象により、気づくことは人それぞれ変わってきます。そこが個性になる。だから面白いのです。
散歩をして「あっこういうことだったんだ!」と重要なことに気づく経験は誰にでも起こり得る。
(ウソという話もききますが)ニュートンがりんごの落下で重力の存在を思いついたようにあなたにもすばらしい気づきが訪れる。
そのためにはしっかりと学びを続け、
気づきやすい体質を目指してくださいね。