構築した信頼関係が崩れるとつらい。まじで苦しくなる。
職場・営業先などのビジネスシーン、恋愛・家族などのプライベート、このような人間関係では信頼の築き方がなにより肝要なのだ……。
自立して生きていく以上、人との関わりは最重要項目と言えます。
信頼関係を築き上げるにはどうしたら良いのでしょうか?
ややこしい信頼という概念を、簡単な定義でまとめました。
健全な関係を新たに築くために、信頼の基礎となる2つの価値観と、3つの原則を知りましょう。
目次
信頼関係の築き方で注意すること。2つの価値観を見失うと破綻する
信頼を支える2本の価値観「利益・貢献心」
基本的に信頼は心地よい感情です。
相手を信じて頼れるなら安心感が抱けますよね。
まずは信頼を支える2つの価値観を確認しましょう。
- 利益
- 貢献心
利益
自分のためになることを利益といいます。信頼して相手を頼る理由は利益を得たいからです。
貢献心
「相手のためになりたい」と思う気持ちが貢献心です。多くの場合、信頼する相手には好意を抱いているので、積極的に貢献したいと感じます。
以上、2つの価値観があるおかげで、信頼は信頼でありえるのです。
しかし信頼に必要な価値観を失うと、相手を頼る気持ちが悪い結果を及ぼす。
片方が自分勝手な態度を取ると、信頼が破綻して自分か相手どちらかが不利益になる態度を持つ。それらの態度は3つあります。
- 自己犠牲
- 我がまま
- 屈服
信頼とはまた違ったニュアンスに聞こえる3つの概念ですね。
なかなか難しい「自己犠牲」
自分の利益を受け取らず、相手に尽くそうという態度です。
非常に優しさあふれる言葉に聞こえますが、利益のない奉仕活動は与える側にとって苦痛でしかありません。(まるで意思のないロボットのように)
相手のためだけを考えて行動をしても、通常は精神的な利益を得ます。
- 喜んでくれたなぁ
- 助かってうれしいなぁ
- 力になれて幸せだなぁ
というように心地よさを感じる。精神的な利益を拒否し、ただただ相手のためになる行動するのは基本的には無理です。
自己犠牲だと主張しても、目的が達成されたら精神的な利益は自然に生まれる。
わざわざ幸せな感情を拒否する意味などありませんので、素直に感じたほうが得でしょう。
いじめを見かけても普段は見て見ぬふりをしている。
だけど大切な友だちがいじめられているのは見過ごせない。そう思って不良の前に立ちふさがった高校生。
何度か殴られて痛い思いをしたけれど、助けられたことに誇りを感じる。
助けた側も精神的に満足できてこそ、利他的行動は成り立ちます。
基本的に利益が得られず自己犠牲になってしまう行動はありません。無理やり例を挙げるとしたら、与える側に重大な損害が出たときでしょう。
落ちてしまった自分の赤んぼうを守るために、川へ飛び込んだ母親。
子どもをすくい上げ、なんとか川岸まで連れていったが、母親は力尽き溺れて死んでしまった。
赤んぼうはまだ小さく、このことを記憶していない。
この例に精神的な利益がないとは言い切れないので、自己犠牲になるのかはわかりません。母親は精神的に満足して亡くなったのかもしれない。
また子どもが大きくになってから感謝することで、母親は報われるのかもしれない。不適切かもしれませんが、あえて例を出しました。
「我がまま」は相手を食い物にする
自分の利益を求めて相手を頼りますが、相手の利益にならないことを求めてしまう状態です。
貢献心がまるでなく、自分勝手な行動で利益を奪い取り相手を苦しめます。
我がままな行動をされても、相手が自分なりに納得すれば精神的な利益を得られますよね。
しかし多くの場合、相手は渋々わがままな人の言いなりになって(または強引に奪われて)資源を渡すことになるでしょう。例をいくつか上げると、
- おもちゃを買ってくれない親に対して文句を言う子ども
- 好きな相手につきまとうストーカー
- 気に入った商品を盗む万引き犯
子どもの我がままはまだ許容できるかもしれませんが、下の2つは悪行と考えられる行動です。
我がままな態度を向けられると多くの人は反発し、信頼関係が勢いよく失われていきます。
知らずに「屈服」している関係に注意
他者や環境(コミュニティなどの社会や政治情勢)に要請されて、やらなければ苦しむ状況に追いやられる。
そうすると相手に屈服した態度を持ちます。
屈服はポジティブな行動ではありません。したくないことを強制的にやらされているのです。
多くの場合は我がままの相手側になるでしょう。
不信を感じている相手に対して屈服している状態はイメージが付きやすいと思います。
- 拷問と引き換えに強制労働させられる奴隷や戦争捕虜
- 辞めたら無職になることを恐れ、楽しいと思えない労働に従事せざるを得ない会社員
- 自分がいじめのターゲットになることを恐れ、クラスメイトを見捨てる学生
屈服した場合でも取引は発生しています。したくないことをする・しないの選択で、身の安全をはかりにかけている。
基本的には嫌な気分になるので、精神的な報酬はないと考えられます。
例えば給料がもらえるなど明確な利益があっても、精神的に苦しめられていると安心感は得られない。
この他に信頼を感じている人に対して屈服するというねじれた状況があります。例えば、
- 嫌われたくないから、子どもに何でも買い与える親
- 相手を愛し続けるからこそ、別れられないDV被害者
- 成約がほしいけれど困難な状況で、不正をするセールスパーソン
相手に対して好意的な信頼感を持っているのに全く安心しておらず、相手に屈服することで身の安全を得ようとしています。
つまり不適切な依存関係とのことですね。
このように相手に悪い習性があっても許容し続ける、囚われた人間関係を「共依存」と呼びます。
共依存は我がままな行為にも考えられますが、相手を失いたくない気持ちを恐れている自分の心に屈服した態度と僕はとらえています。
信頼というのは、自分も相手も利益が出るような行動を目指す態度です。お互い信頼の態度を持ってはじめて信頼関係は生まれます。
ということは信頼関係があるなら、
相手の利益を追求すれば、
自分の利益も得られるんです。
つまりギブアンドテイクの「ギブ」だけ考えていれば、自然にテイクがくる関係が好ましい。
我がままな相手とは信頼関係が築けません。パートナー選びを妥協せず、我がままな相手に流されない態度が求められます。
嫌な人とは関係を断ち切ってもいいのですよ。
まあしかしなるべく価値観を共有する努力してみましょう。
精神的余裕がない人を考察。心に余裕を持つための7ステップ
「うるさい」 つぶやいて、”はっ”と気づく。そんな不満を今まで口にしたことはなかった。 不満げな表情を浮かべる同僚を横目に、私の心がうめいている。 「苛立ちたくない。嫌な人だと思われたくない……。」 ...
それでは最後に、信頼関係を実際に築く方法をお伝えします。
3つの原則から学ぶ、仕事の信頼関係の築き方
1.顧客などの相手側に儲けさせる
前述で相手の利益を考えればよいとお話しましたが、それを繰り返すことは損した気分になるかもしれない。
損をしたくないから利益を渡すのが怖くなる。そんな気持ちは誰でも抱えていると思います。
実のところ儲け(もうけ)させると言っても利益の分配は1:1なのです。
言っていることが矛盾している思いますよね。
しかし利益には
- 目に見える利益
- 精神的な利益
の2種類がある。
それが理解できれば相手を儲けさせる方針で活動を続けられます。
まず目に見える利益と精神的な利益を見比べてみましょう。
- 目に見える利益
- お金
- 物質
- 地位
- 名誉
- 土地
いわゆる地位財ですね。一般的に利益として考えられているものです。
- 精神的な利益
- 喜び
- 安心
これらは非地位財と呼べ、心地よい2つの感情に代表されます。2つ例を上げてみましょう。
- 毎朝、子どもを起こす
- 子ども:起こしてもらったおかげで、学校に間に合う
- 親:子どもが学校に行けたので安心する
- 共同で取り組んだ利益の分配
- 相手:儲けの6割、多くもらえてうれしい
- 自分:儲けの4割、相手が喜んでくれてうれしい
えっ、納得できないって?でしょうね。
親子の例なら納得できるでしょうが、下のビジネスの例は明確な損に感じますから。
相手のほうが仕事への貢献度が高ければ問題ありませんが、同じ貢献度なら同じように分配するべきですよね。
特にビジネスでは目に見える利益がほしいから活動をしているはずです。
むしろ喜びのためだけに相手へ奉仕するような会社員は、即刻クビになるでしょう。クビになるのなら、喜びや安心は得られません。
しかし目に見える利益が少なくなっても納得できる理由がある。それは、
期待値です。
相手との信頼関係を長期的に考えて、いちばん期待値が高くなる方針を考える。
長い付き合いを合計して一番儲かる方法を考えるってことですね。
先ほどの2つの例に期待値という概念を意識して見直しましょう。
親:子どもが規則正しく学校に行くので、遅刻などの余計なストレスを感じずにのびのび学業に専念できるから、安心できる
このように期待を明確にすることで、結果として得られる精神的な利益にも納得感が出ます。
ビジネスのほうが期待という面ではわかりやすいと思います。相手には既に明確な利益がありますよね。自分の方はどうでしょうか。
自分:儲けの配分は相手より少ない。有利な条件を得た相手は、この仕事への意欲が高まるだろう。
相手は仕事を手放したくないと思うはずなので、今後も自分をパートナーとして選ぶ可能性が高まり安心できる。
この共同作業においての発言力が高まるので仕事がやりやすくなってうれしい。
というような期待が見えてきます。
これらを見込んで取引をすれば精神的な利益が十分に得られるので、ストレスなく共同作業ができるはずです。
ただし儲けを多めに渡すほど余裕がない状況もあるでしょう。
目に見える利益以外にも、相手に得をさせる方法はたくさんあります。
- 相手より多めに仕事をしてあげる
- 実績を公開するときに、相手の貢献度がより高いと関係者に伝える
- プロジェクト内での相手の地位を自分より高める(が仕事は同等以上におこなう)
相手にとってプラスになることを続けていくと、仕事は成功と考えられます。
成功体験を積み重ねることで、信頼関係は強くなる。
このように期待値を想定しながら長期的な視点で考えると、信頼関係を築き上げられるんですね。
また自分の利益が副次的な2つの理由で高まる可能性があります。
- お返しがしたい心理
- 信頼の口コミ伝搬
お返しがしたい心理
なにかをもらったら返したくなる。心優しい人はそう思うはずです。これを心理学では「返報性の原理」と呼びます。
つまり目に見える利益を相手に譲っても、次の機会は相手がお返ししてくれる可能性が高い。
結果として相手も精神的な利益を強く感じ、信頼関係向上につながるでしょう。
ただし金銭的な利益のお返しをすることにストレスを感じる人もいます。
そういった場合は、別の方法で相手の利益になることを探したほうがよいでしょう。
例えば相手の良いところを関係者に伝えれば、相手も自分のことを悪くは言わないと期待できます。
信頼の口コミ伝搬
うれしかったことは友だちに言いたくなり、また自分の好きな人は仲間に紹介したくなるものです。
このように一つの場所で信頼関係が築けると、別の人も名前が知れ渡りやすい。
地道に良い成果を出していれば、評判が高まり新たなチャンスが生まれるはずです。
これらのような副次的な利益も見込めるので、基本は相手に儲けさせる戦略を立て信頼関係を築いていきましょう。
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2.安心感をデザインする
そもそも「怪しい人だ」と思われるようなら、信頼関係構築の機会を失います。
相手に話をしてもよい存在だと思われるように、最低限の信頼感を抱いてもらう必要がある。
まずは見た目、次に話した印象を良くするように注意して、相手と接していきます。
少し本題とずれますが、なぜ印象が重要かというのをよく説明してくれる「メラビアンの法則」から見ていきましょう。
人が話す時に、相手に与える印象はボディランゲージからが55%、声のトーンからが38%、言葉そのものからは7%しかないのです。
つまり
- 身ぶり手ぶり・表情などの視覚情報が55%
- 話した感じなどの聴覚情報が38%
- 話の内容などの言語情報が7%
の順で意思伝達における重要度は決まってくるということです。メラビアンの法則を意識して上手に会話を心がけたいですね。
話を戻します。これを飛躍して考えると、見た目で「信用ならない」と思われたら、いくら性格が良くても話すらできないのです。
- うさんくさい、だまされそう
- 不潔だ、するべきことを、おろそかにしていそう
- ケバい、真面目に仕事をする気があるのか?
と思う人は多い。
よく採用面接では見た目が一番大事と言われますよね。
普段から自分が相手からどのように見えるのか意識しておく。
それが新しい出会いを大切にして信頼関係を築いていく上で重要なことなのです。
いくつか注意したいポイントを上げてみる。
- 身体は清潔か(髪形・爪・口の周り・入浴をしているか)
- 身につけているものは適切か(洋服は清潔か・洋服や化粧は派手すぎないか・香水は匂いすぎていないか)
- 好意的に見える笑顔を向けているか
- 相手を優先して会話ができているか、聴き上手か
- だらけた姿勢をとっていないか
- 視線を泳がせず、話に集中しているか
以上の項目とメラビアンの法則を意識すれば、第一印象でつまずくことは少なくなるはずです。
ただし外見の問題は、自分自身では気づきにくいものなので、(恥ずかしいでしょうが)気の置ける友だちなどに聞いてみましょう。
「いや・えー・まあ」口癖は嫌われる…口癖を直す具体的な方法
「いやっ」「まあ」「え〜と」などが口癖になっていませんか? もしそうなら大損している。話し方が誠実に聞こえないのです。 多くの人は態度に表しませんが「話しても楽しくないな」とぼんやり思われていますよ。 ...
3.職場で特に大事!勇気を持って言いにくいことを言う
最後にこれらの印象を生かすために、1つ意識してほしい重要な点があります。
- 勇気を持って言いにくいことを言う
もちろん相手をおとしめるようなことを言ってはいけません。
信頼関係を構築する上で逃れられない問題点を解決するために、勇気を持って発言するということです。
頼っているのに提案すれば、相手の行動を変えるように促すことになる。お互いさまですが。
基本的に人は自分の行動に対して干渉されることを嫌います。だから相手が気分を悪くするような意見は言いたくない。
それでも遠慮せずに問題解決のために指摘をすることで、さらに良いアイデアを生み出す効果がある。その効果を捨てるなど、もったいないのです。
片方が指摘すると「指摘していいのかな?」と相手も思えます(返報性の原理みたいですね)。
そこで相手が指摘してくれたアイデアを喜んで受け入れれば、言った側は役に立ててうれしくなる。
反対に相手が遠慮しているなら問いかけて意見を促します。
出会った頃は傷つけられたくない気持ちが障壁になって、言いたいことが言えない状態だと思われる。
勇気を持って指摘し合うことで心を開いて話し合えるようになり、信頼関係が築き上げられます。
これを説明するGoogle社が提唱した「心理的安全性」という用語がある。
チームの生産性のカギを握るのは、社員の心理的安全性(Psychological Safety)であることがわかっています。
要するに、「こんなことを言ったら叱られるかもしれない」「バカにされるかもしれない」といった不安を感じることなく、チームメンバーの誰もが安心して働ける心理状態を作る
引用書籍:0秒リーダーシップ:「これからの世界」で圧倒的な成果を上げる仕事術
心理的安全性を確保すれば、お互いのアイデアが相乗効果を生みます。問題の解決案が多様化し、良い成果が出やすくなる。
成功体験がより多く、また強い成功体験として積み上げられて、信頼関係はさらに強化されるでしょう。
おさらい
信頼とは相手を頼る気持ちですが、ただ頼りっぱなしでは成立しません。
お互いの利益のために協力して取り組む関係を構築する必要があります。相手に貢献したい気持ちを大切にする。
利益を求める気持ちと貢献心が失われると、人間関係はいびつになり、お互いを苦しめる壊れた関係に落ちていく。
お互いが相手の利益を考えて行動できれば、結果としてWin-Winの関係が築けますよね。
その関係をより多くの人たちと広げるために、自分の印象に気をつけて、出会いのチャンスを広げましょう。
最後にお互いのためになることなら遠慮せずに言い合える関係づくりが、長きにわたって信頼関係を積み立てるいちばんのポイントです。
勇気を持って大切な相手に向き合ってくださいね。
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