仲間と共に歩む力

信頼関係とは何か?定義を考察。互いの利益を生む仕事のつながり

投稿日:2019-01-25 更新日:

信頼関係とは何か?定義を考察。互いの利益を生む仕事のつながり

ことあるごとに上司から、信頼関係の重要性を説かれる日々。

クライアントとの深い信頼関係がほしいだろ?信頼ってものが、職場でも、仕事をする上でも、いちばん大切なことなんだ。」

そんな上司の言葉にうなだれる。「信頼されたい」とこだわる理由はなんだ?打算か?

私たちの生活は、支え合いの上に成り立っているといっても過言ではありません。

野菜は農家で育ち、スーパーマーケットで販売され、消費者がお金を払って購入し、やっと食べられるというわけです。

この一連の営みは、すべて「信頼」によって成り立っているって知っていましたか?

仕事だけではなく友人や家族・恋愛でも重要な、信頼関係について、あらためて考察します。

信頼とは何か?基本的な定義

無意識でなされる信頼

朝になった。目覚まし時計が鳴り起床する。蛇口から出た水流を、手のひらで作った皿ですくいあげ、パシャッ。

新鮮で冷えたが二度寝の誘惑を断ち切る……。

私たちは常に誰かと関わっている。

この小話のように他者が作った物事に頼って、私たちの暮らしは成り立っています

  • 目覚まし時計が決まった時間に鳴ってくれるから、安心して眠りにつける
  • 安全な水が常に蛇口から出てくるから、体を清潔にしていられる

ごく当然のことでしょうか。しかし上の文章を、少し嫌な状況に変えてみましょう。

  • 目が覚めたら昼の12時だった。とっくに会社は始まっている。目覚まし時計は……動いていない。故障したようだ。
  • 顔を洗っていたら水道から黒い水が出てきた。腐肉の臭いがしてむせる。恐ろしくなって、その場から飛び退いてしまう。

目覚まし時計も水道も、自分に害を及ぼすかもしれません。そうなると「信頼できなく」なりますよね。

つまり私たちは目覚まし時計や水道を信頼していたのです。

だから安心して日常生活をおくれている。

常日頃は「私は目覚まし時計を信頼している」と考えているわけではありません。

誰かに質問されたら「そう言えば信頼しているな」と、やっと思いつく程度です。

信頼は基本的に無意識でなされる

信頼とは相手に損得を託す態度

では信頼とはなんでしょうか?

字から察するに「信じて頼る」という意味でしょう。辞書にも同じように記載されていました。

信じて頼りにすること。頼りになると信じること。また、その気持ち。

信頼(シンライ)とは - コトバンク

それでは私たちは目覚まし時計に、なにを頼っていたのでしょうか?

  • 仕事に間に合うように、目覚めさせてくれること

ですよね。起きたい時刻に目が覚めたら予定通り活動できる。

それを損得で判断すると……

と言えます。

つまり望み通りだと「利益」を感じるんです。反対に望みがかなわないと「損失」を感じる。自分の損得を外部のに委ねたのです。

では物ではなく、人への信頼について考えてみましょう。

人を目覚めさせることは、お母さん(人)にお願いしても可能です。

それを踏まえて信頼を定義してみると、

信頼とは、人や物に自分の損得を託す態度

ということで、しっくりきます。

信頼は人間関係そのもの

物への信頼は、人との関わりが生み出す

もう少し細かく定義します。工業製品など誰かが作った便利な物に向けての信頼は、2つの対象がある。

  • 概念(目覚まし時計そのものを頼るのか)
  • 物質(この目覚まし時計を頼るのか)

の2つに分けられる。これらは見限ったときに行動がどのように変わるかで見分けられます。

  • 「もう目覚まし時計なんて信用しない」→概念を見限った
  • 「他の商品を買ってみよう」→物質を見限った

物質への信頼を見限った場合、新しい商品を買うことになる。そのとき、

  • 同社の別製品を買う
  • 別会社の商品を買う

とまたまた2択が出てきます。

もし別会社の商品を買ったら、その理由は会社が信頼を失っているということでしょう。

つまり最終的には、

買った人(購入者)が見限ぎると

売った人(販売者)は信頼を失う

という人と人との関係に落ち着く。

物への信頼を突き詰めると、人への信頼に行き着くのです。

ほとんどの場合、工業製品の提供者は法人です。法人を構成しているのは人の集団なので、この記事では人として扱う。

信頼しない人は、自分への信頼を失う

また概念を発見するのは人間です(少々ややこしくなりますが……)。つまり目覚まし時計を発明したのは人間なんです。

「もう目覚まし時計なんて信用せずに、私は朝日を浴びて目覚める」という選択をするのなら、目覚まし時計という概念を見限ったことがわかる。

それと同時に発明した人を見限った、とも考えられます。

最後に朝日でも起きれなかった人はどうなるのでしょうか?

その人はまた目覚まし時計を頼るのかもしれませんし、光が差し込みにくい家の間取りを責めるのかもしれない。

しかし最終的には希望通りに起きられない自分を責めるのでしょう。

つまり自分への信頼を失うのです。

自分は物ですか?人ですか?……もちろん人です。

人の物への信頼は一時的な感覚でしょう。

最終的には人しか信頼しないんです。

以上をまとめると、

信頼とは、

人を信じ頼る気持ち

ということになりそうです。

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信頼関係はお互いの仕事の利益を高める

信頼する理由は、利益を得たいから

なぜ信頼は重要なのでしょうか?

現代人は人を信頼しないと大損するからです。

ほとんどの場合、現代社会での利益は人から人へ渡っていく。

人々は取引しないと利益が得られない

利益というと物品やサービスを想像しますよね。

  • お弁当を買って食べるのは、コンビニエンスストアを信用しているから
  • Amazonで12万円のパソコンを買おうと思えるのは、宅配会社を信頼しているから
  • 感動して涙を流し、驚いて感嘆できるのは、映画館の空間を信頼しているから

信頼がないと物やサービスの売り買いは成り立たちません

しかし利益は物やサービスだけではない。

家族や友人関係のように、売り買いがない関係でも信頼という言葉は使われています。

わかりやすいのは親子や親友のイメージでしょう。(全てとはいえませんが)深い信頼のもとに関係を育んでいる。

なんとなくおわかりでしょうが、精神的な利益というのが存在するんです。

相手を信頼すれば気持ちがポジティブになる。

ポジティブな気持ちは、

  • 安心
  • 喜び
  • 楽しさ

など多数あります。人間関係で生まれる前向きな感情は心地よい

心地よさは幸せな気持ちを感じさせる。幸せな気持ちは快感なのです。

  • 時間通りに起きられて、安心した(遅刻したら、残念だ)
  • コンビニで買ったパンが、おいしい(まずい)
  • ズッ友と居られて、癒やされる(腹が立つ)

お互いが歩み寄って良い結果が得られたら快感、悪かったら不快という仕組みが信頼関係に影響します。

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会った経験がなくても、信頼は生まれる

必然的に利害がありえない相手は信頼しようと思いません。

反対に信頼していないという意味の「不信」も生まれない。

つまり信頼・不信の態度を持たない相手に対しては、関心を持っていないのです。

関心がある人に対しては必ず、

  • 信頼を感じる
  • 不信を感じる

というような評価を繰り返して、距離感を測っている。

出会ったことがない人に対しても、関心は注がれます。

たとえばテレビでしか見たことがない芸能人との間にも、人間関係は生まれます。

面白いな、かっこいいな、感動したな

とポジティブな気分を感じたら信頼が築かれ、

つまんないな、好みじゃないな、不快だな

とネガティブな気分を感じたら不信を覚える、または関心を失って注目しなくなるでしょう。

このように信頼は知り合いでなくても成立する。つまり、

信頼は一方通行なんです。

団体への信頼、コミュニティへの信頼

前述した一方通行の例は商取引の例で表すとわかります。

メーカーは誰に商品を買われてもいいと思っている

おおよその想定ユーザーはいるでしょう。

「30代・独身・女性・お金に余裕がある・飾らないものが好き」という人向けに、2ドアの四角く飾りのない省エネの白い冷蔵庫を作ったとします。

その冷蔵庫を50代の生活に困っているブランド物好きの男性が買っても、まるで問題ないわけです。

そもそも個人を特定していない以上、一人がターゲットになることはない。

つまりメーカーは市場がターゲットなのです。

しかしそんな場合でも、ひもといていけば信頼関係が見えてきます。

  • お客さんはメーカーを信頼する
  • メーカーは市場を信頼する

メーカーは「この市場で販売したら利益を得られるかもしれない」と考えています。

お客さんがいる地域などのコミュニティを市場と呼ぶ。

コミュニティは人々の集合体なので、人同士の関わりは認められます。ただし個人的な関係とはいえませんが。

一方で消費者もメーカーなどの法人を信頼して商品を買っている。

どちらも相手を個人として見ていないのは一緒ですね。

すれ違いでも絆は深まる

それでは明確な個人同士の場合はどうなるのでしょうか?

  • 電卓会社のセールスパーソン
  • 雑貨販売店の仕入れ担当者

この二人の関係性で検討してみます。

電卓会社のセールスパーソンは営業の実績がすこぶる悪かった。しかしあるノウハウ書を読んでからは、自分の営業術に大きな変化がおきる。

何度も雑貨販売店に足を運んだセールスパーソン。始めは注文数が少なかったが、やがて大量の注文が入るようになった。

セールスパーソンは[____]を信頼する気持ちが高まっていく……

[____]には誰が入るでしょうか?選択肢を考えてみてください。例を出すと、

  • 仕入れ担当者(相手の人)
  • 雑貨販売店(法人・団体)
  • 自分の営業力(自分自身)
  • 担当を任せてくれた自社(所属する団体)
  • 電卓そのもの(個別の商品)
  • ノウハウ書(の作者、もしくはノウハウそのもの)
  • めぐり合わせ(神秘的なもの)

相手の可能性はたくさん考えられますよね。逆のケースを見てみましょう。

雑貨販売店の仕入れ担当者は電卓部門の売上の悪さに悩んでいた。

ある日、聞いたことがない会社のセールスパーソンが電卓の訪問販売にやってくる。

始めは興味が持てなくて少量だけ注文してみたのだが、商品の良いところがだんだんわかってきて、オススメしやすくなってきた。

思い切ってその電卓の注文数を増やしてみたら、従来品より売りやすい。今では当店の主力商品である。

仕入れ担当者は[____]を信頼する気持ちが高まっていく……

この場合[____]に入るのは?

  • 電卓会社のセールスパーソン(相手の人)
  • 電卓そのもの(個別の商品)
  • 電卓会社の商品開発(法人・団体)
  • 自分の提案力(自分自身)
  • 担当を任せてくれたお店(所属する団体)
  • めぐり合わせ(神秘的なもの)

対象は反対ですが内容はセールスパーソンとほぼ同じです。

もちろん信頼は一つだけではなく複数同時にできます。むしろ一つのことだけを信じて、他に関心を向けないということは少ないかもしれません。

相手の人を信頼し、商品を信頼し、自分の能力を……微妙な加減で心は動く

セールスパーソンが仕入れ担当者を信じる気持ちがあり、仕入れ担当者もセールスパーソンを信じる気持ちがあれば、があるように感じるかもしれません。

しかし信頼感はあくまで主観的なものです。全く同じ絆で結ばれているわけではない。

絆というのはお互いの主観が重なっているだけ。

ところが「絆を深める」という表現がありますが、主観が重なると信頼感は高まるのです。

お互いの信頼には相互作用が生まれる。

相互作用はお互いの信頼感を肯定的に強化する効果があります。

信頼関係はお互いが歩み寄れば深まっていく(この話は続きの記事でお話します)。

信頼関係と絆の相互作用

片方が信頼をやめると、もう片方もやめる

お互いに支え合うことで信頼関係はできています。

片方が信頼をやめたらどうなるのでしょうか?

検証するために信頼関係での利益を、双方それぞれまとめてみましょう。

行動:目覚まし時計を買う
  • 消費者:早く起きられて、仕事に間に合う
  • メーカー:お金をもらえ、豊かになる
行動:子どもがお母さんに起こされる
  • 子ども:起こしてもらえ、学校に間に合う
  • お母さん:安心できる
行動:テレビで芸能人を見る
  • 視聴者:笑える・感動できる・魅力を感じる
  • 芸能人:信頼度が高まり、企業に信頼される。自社コンテンツが売れる

簡単ですよね。お互いに得をするんです。

ではもし片方に信頼関係がなくて、行動が生まれなかったらどうなりますか?

消費者が、目覚まし時計を買わなかった
  • 購入者:起きれずに仕事に遅刻して評価が下がり不安になる
  • メーカー:お金が手に入らず、貧しくなり苦しむ
子どもがお母さんに起こすように頼まなかった
  • 子ども:遅刻して起こられて傷つく
  • お母さん:心配になる
視聴者がテレビを見なかった
  • 視聴者:なにもない(あえていうなら楽しみが減る)
  • 芸能人:関心が高まらないため、仕事が入らず、自信を失う

反対も見てみましょう。

メーカーが目覚まし時計を売らなかった
  • 消費者:手に入らないため起きれずに遅刻して評価が下がり不安になる
  • メーカー:お金が手に入らず、貧しくなり苦しむ
お母さんが起こしに来なかった
  • 子ども:裏切られた気分になる
  • お母さん:意地悪な気持ちになる
芸能人がテレビにでなかった
  • 視聴者:さみしさを感じる
  • 芸能人:いずれ関心が下がり、仕事が減り、収入がなくなり苦しむ

片方が信頼をしないため、もう片方は見込んでいたはずの利益を得られません

信頼関係を良くすることは、利益を手にするための重要な努力なんです。

この場合の利益とはお金ではなく、ポジティブな気持ちですよね。ポジティブな気持ちは幸せを感じさせる。

つまり信頼関係があると

幸せを感じる機会が増えると考えられます。

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「信頼はいらない」なんて、ありえない

利益の代表格である「お金」。これも信頼から成り立っています。

お金は商取引を安定させるために各国政府が発行している、価値の代理概念です。物品の価値を代理して表すので適切な取引ができる。

物々交換ではお互いの希望が一致しないと取引できない。好きなときに好きなものが手に入る環境が作れないので不便です。

そこで利便性を高めるためにお金が発明されました。

お金なら感じる価値の個人差が少ないので、交換がスムーズになるのです。

私たちは政府の作ったお金を信用している。だから安心して取引ができる。

つまり現代では、信頼をする態度を持たないと、一般的な生活すらおくれないんです。

おさらい

人間の営みは信頼によって支えられています。

相手を信じて頼らないと、必要なものが手に入らず、苦しむことになる。

人のことは信じないと思っている人でも、道具や食料を買わなければ生活ができません。

もちろんをするときもあるでしょう。だからといって信頼することを止めると大損です。

だからこそ前向きに、相手を信頼する態度を持つ必要がある。

次の記事で信頼についてさらに掘り下げます。

誤った価値観で人を信頼してしまうと、大変なことになるんです。

すべて読んだかな?信頼関係を築く3つの連載

  1. この記事信頼関係ってなんだ?重要性を考察。互いの利益を生む役割を築く
  2. 信頼感の醸成は2つの要素がカギ。記憶に潜む盲信のワナとは?
  3. 1/30予定3つの原則でわかる信頼関係の築き方。利益&貢献をつきつめろ!

 

  • この記事を書いた人

やくしじ

産業カウンセラー。個人向けの心理カウンセリングと、少年院のキャリアカウンセリングをしています。すべての行動には目的がある。熱意・不安・焦り・イライラなどの制御できない溢れ出す思いを全人的に受容し、自己理解を支援する。単発的な傾聴のニーズや、継続カウンセリングを通しての自己変容や目標達成を支援します。ご依頼はお問い合わせへご連絡ください。詳しいプロフィールはこちら

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