「どうしてわかってくれないの?」
喜んでいない好きな人の様子を見てがっかりした。褒め言葉は皮肉だと捉えられてしまう。
私は相手を思いやっているのに。
なんて言ったら、喜んでくれるんだろう……?
言葉のコミュニケーションは思い通りに行きませんよね。家族・友達・仕事、または女性・男性で、嬉しい言葉は変わるような気がしてややこしい。
LINE(ライン)だったら気持ちは伝わるのに、ビジネスメールだったら……も~ちんぷんかんぷんですよね。
嬉しい一言はどうしたら言えるのでしょうか?
感情表現には基本の「型」があるのです。
簡単に覚えられる基本型を知って、相手を喜ばせましょう。
目次
言われて嬉しいのは、自分が「うれしく」なる言葉
気持ちよいから嬉しい
ポジティブな感情は気持ちよさを感じるから生まれます。嬉しいということは快感なのです。
たとえば誰かの言葉を聞いてうれしくなるのは、
- 楽しさ
- 安らぎ
を感じて心地よくなったからですよね。
自分が認められることを言われたり、不安が解消されたりするとうれしくなる。
基本的に快感は正しい行動の結果として学習されます。つまり嬉しい気持ちになったら、再度その言葉を聞きたいと考える。
嬉しい言葉を求めることで心のエネルギーが増え、前向きな気持ちで日々の生活や行動に取り組めます。
また学業やスポーツ・仕事などでは、叱るよりも褒める指導方法が良いという傾向が強まってきました。
褒めた場合とけなす(感情的に叱り、おとしめる)場合で、スポーツ競技の上達速度を比較した研究があります。
その結果……褒めたほうが良いとわかりました。
参考文献:指導者の言葉かけが子どものやる気と認知に及ぼす影響
嬉しい気持ちになるのは、前向きに社会生活を送る上で重要なことなのです。
嬉しさの生起条件
基本的にはポジティブな行動が嬉しさを生みます。
- ホームランを打ったら、みんなが喜んでくれた
- 道を渡るお年寄りの手助けをしたら、何度も感謝してくれた
- 髪を切ったら、彼氏に可愛いねと言われた
しかし(個人差はありますが)攻撃性の高い行動でも、興奮による高ぶりが快感を生む。それを嬉しいと感じてしまう可能性があります。
- トラブルに納得がいかずクレームを続けたら、特例で交換対応してくれた
- 気に食わない人を脅したら、おびえて許しを求められた
- 問題を起こした有名人をSNSで批判したら、逃げるようにアカウントを削除した
しかしネガティブな行動でおきた喜びは、相手を傷つけてしまう。いずれ人望を失い困るのは必然なので、避けたほうがよいですよね。
自分も相手も喜べたら、またお互いで喜び合いたいと思える。信頼し合えば持続的に嬉しさを感じられるので、人間関係が良くなっていきます。
またテレビで感じの良い笑顔を見せるタレントを見ると気分が良くなるように、喜びは人を介して伝たわる。
相手にも自分にも優しくできたら、みんなが笑顔になれる。
笑顔は幸せを伝え、より多く嬉しさが生み出されるのです。
言葉の解釈は個人的
言葉を発する行動は、人間が持つ特徴的な表現方法です。相手に何かしらの影響を与えようと意図している。
しかし自分で表現したいことは、そのままでは伝わらない。
言葉や表情・文脈・状況などが影響して情報が作られ、それを相手は受け取ります。
受け取って感じた気持ちが基となり、相手なりに情報を解釈するんです。
たとえばスポーツの試合で負けた友だちを(裏表なく純粋なつもりで)励まそうと思って、
どんまい、どんまい、しかたがないよ。
と笑顔で伝えました。それを受けて友だちは、
あいつは試合に勝ったから、余裕の笑顔ができるんだ。私の練習量が少なかったから、馬鹿にして「しかたがない」とか言うんだ。
と間違って解釈されるかもしれません。喜ばせるつもりで言葉を相手に伝えても、期待通りに受け取られるかわからないのです。
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文章とは厄介なもので(当然ですが)日本語が読めない人にとっては、日本語の文は理解できません。
つまり言葉(文章)は具体的な意味が決まっていない。理解できなければ無意味です。
言葉が温かかったり、冷たかったりするのは人それぞれの感じ方でしょう。
読み手の解釈により感じ方はまったく違う。言葉の意味を正しく伝えたいなら、それなりに配慮した表現を選ぶ必要がある。
嬉しい一言で相手に喜んでもらうにはどうしたらいいのでしょうか?
表現の論理的構造を知って、
相手に正しく気持ちを伝えましょう。
論理的構造と言われても、なかなか難しく感じますよね。しかし簡単ですよ。たった3つの要素を理解すれば良いだけです。
言われ嬉しい言葉の論理的構造とは
表現は3つのレベルで行われる
先ほど3つだと紹介した要素は以下のとおりです。
- 感情
- 態度
- 具体化
感情は「喜び」ですよね。それがレベル1です。
次はコミュニケーションのために、態度を表わします。それがレベル2。
最後の具体化はより詳しく伝えるために用います。残ったのはレベル3ですね。
実は言葉選びはこの3つを組み合わせることで構築されます。たとえば
- 態度だけ:ありがとう(態度)
- 感情・具体化:うれしい!(感情)説明がわかりやすかった(具体化)
- 感情・態度・具体化:うれしい!(感情)ありがとう(態度)説明がわかりやすかった(具体化)
上から下に向けて文が複雑になっているのが、おわかりでしょうか。複数のレベルを組み合わせたほうが表現は正確に伝わります。
次の節で3つのレベルを詳しく説明します。
レベル1:「感情」を示さなければ伝わらない
前節の例文で「ありがとう」と、一言どころか一語の表現がありました。
これでは短すぎて気持ちが伝わりにくい。
もし無表情で「ありがとう」と言われたら、どのように感じますか?
ありがとう
つまり文脈(言葉が話された状況)によって、言葉の感じ方は変わってくるのです。
「ありがとう」というフレーズは、相手に感謝の意を伝えたい気持ちで生まれている。
喜びをもたらしてくれた相手にお礼を言いたい。つまり喜んでいるから感謝したいのです。
最初に喜びを伝え、感謝の言葉はその後に述べたほうが相手に伝わります。
ありがとう
よりも
うれしい、ありがとう
のほうがメッセージは正しく伝わる。
感情の表現は言葉以外の方法でも伝わります。とりわけ表情がいちばん使いやすい。
ありがとう
満面の笑みなら喜びを表現できますよね。
では顔が見えないLINE(ライン)のような文字のコミュニケーションではどうすればよいでしょうか?
ありがとう(*^^*)
このように顔文字や絵文字で表情を代用すれば、喜びを伝えられます。
しかし顔文字などの新しい記号の文化になじめていない人は、こういった表現を軽薄に感じるかもしれません。
できるだけ感情表現は省略せずに「うれしい、ありがとう」と言ったほうが確実に気持ちを伝えられると思います。
余談ですが、感情には対応する表情がある一方で、お礼などの態度は表情を持たない、と僕は考えている。
試しに怒った顔で「うれしい」と言ってください。
うれしい
胸がモヤっとするような違和感を覚えるはずです。
反対に怒った顔でありがとうと言っても、そこまで気にならない(僕だけかもしれませんが)。
ありがとう
不思議ですよね。つまりありがとうは思いを込めず口先だけで言えてしまうんです。
相手に誤解させないために、うれしい、ありがとうと感情を告げるクセを付けましょう。
レベル2:「態度」を示し反応を促す
反対に「うれしい」とだけ言っても、感謝の気持ちは伝わりません。
会話は相手の反応を求めている。だからどんな反応をしてほしいのか、態度を示す必要があります。嬉しい気持ちを示す態度は2つ。
- 称賛
- 感謝
称賛
喜ばせてくれた相手をたたえる態度です。
自分が感じた驚きの気持ちで相手を持ち上げます。たとえば
- すごいね
- すばらしい
- ステキ
などでしょうか。
感謝
相手にお礼を言いたい気持ちです。自分の嬉しさを相手の功績と認め、返礼を表します。
- ありがとう
- 感謝します
- サンキュー
以上2種類の言葉は日常的に使われる表現なので、上手に用いないと少し形式的に聞こえるかもしれません。
このように態度は感情を示すわけでもなく、何が嬉しかったのか伝えるわけでもない。
その二つの中間に位置しているクッションのような役割を持ちます。
しかし態度を示すことは非常に重要です。相手も自分と同様に喜びの反応を求めている。
感情だけ示しただけでは、コミュニケーションに物足りなさを感じてしまいますよね。
たとえば自分の子供にプレゼントをしたら、以下のように答えたとします。
うれしい(キャッキャと喜ぶ様子を見せる)
言ったのが3〜4歳の小さな子供なら、違和感がないかもしれません。
しかしこれが小学生の返答だとしたら「プレゼントをもらったら、ありがとうでしょ。」と指導したくなる。
つまり感情だけを伝えると、どうしても子供っぽい印象を与えてしまうのです。
嬉しい一言を伝えたかったら、必ず態度を示しましょう。
うれしい、ありがとう(キャッキャと喜ぶ様子を見せる)
こんなふうに言えば、相手に気持ちが伝わりやすくなります。大人のたしなみとして、喜びは態度と合わせて表現しましょうね。
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レベル3:「具体化」したら嬉しさが正確に伝わる
うれしい、ありがとう
と言われるだけでも、相手に気持ちは伝わります。しかしまだ物足りないと感じませんか?
残念ながらいつも一辺倒な言葉だと次第に慣れてしまい、ありがたみを失ってしまうんです。
一言のバリエーションを増やしたほうが、相手はいつも新鮮な気持ちで喜べる。
うれしい(感情)ありがとう(態度)の後に続くのは、なぜ嬉しいのか?を説明する「具体化」です。
具体化には4つの要素があります。
- 能力
- 過程
- 信頼
- 期待
能力
多くの場合すごかったと感じたときは、相手の能力について感想があるはずです。
- あのフリーキックは、あなたにしか決められなかったよ
- 説明がわかりやすかった
- おしゃれなマフラーだ、よく見つけたね
「あなたは優れている」と評価すれば、相手は優越感にひたれ嬉しくなる。
過程
相手の成功をねぎらい、努力を褒めたたえます。
- 長い間、お疲れさま
- 練習の成果だね
- あきらめずによくがんばった
結果までの過程を褒めることで、相手は苦労が報われた気がします。
信頼
「あなただから」と特別化することで、信頼を伝えます。
- 一緒にいたい
- 安心して任せられる
- あなたしかいない
自分が特別だと思えれば、相手もあなたを信用します。
期待
未来に向けて勇気づけをします。
- 君ならできる
- 夢はきっとかなう
- 幸せな家庭を築こう
その他の3つとは違い、自分の感情はそれほど影響しません。とりわけ相手を動かすメッセージに聞こえます。
以上です。具体的に伝えれば何について語られているのか理解でき、解釈の助けになる。
しかし具体化だけの例文では、いまいち感情が伝わりません。
それどころか上から目線に聞こえたり、反対に懇願されているように聞こえたりするかもしれない。
相手を嫌な気持ちにさせる可能性だってありますよね。
正しく感情を伝えるためにはレベル1・2をうまく組み合わせます。具体化が効果的に働き心地よい一言になるんです。
- やった〜!(感情)すごいね(態度)、あのフリーキックはあなたにしか決められなかったよ(具体化)
- (満面の笑みで[感情])長い間ありがとう(態度)、お疲れさま(具体化)
- うれしい(感情)、ありがとう(態度)。これからもずっと一緒に居たいよ(具体化)
- やったね(感情)、おめでとう(態度)。次の課題も君ならできる(具体化)
どうでしょうか。ずいぶん気持ちの良い一言になったはずです。
また具体例は他の具体例と併用して使えば、表現がふくよかになる。次の例を声に出して読んでみてください。
やった〜!すごいね、あのフリーキックはあなたにしか決められなかったよ(具体化)、練習の成果だね(具体化)
なかなかしっくりくる、嬉しい一言だと思います。
最後に3つのレベルを表で見てみましょう。
感情だけだと子供っぽい。態度だけだと伝わらない。理由だけだとえらそう。
全てバランスよく混ぜると、嬉しい一言になる方程式が理解できましたか?
相手はなぜ自分が褒められているのか(感謝されているのか)理解できなければ、素直に喜べません。
感情の表現や理由を伝えることで、自分の喜びが相手に正しく伝わりやすくなるんです。
表現が思いつかなければ、具体化の4つを思い出してください。
- 良かった所は?(能力)
- 何をがんばっていた?(過程)
- どんな気持ちで見ていられた?(信頼)
- 相手は目標にたどり着けそう?(期待)
以上のような相手の良いところを見つけるには、
観察が何より重要です。
関心を持って相手と接すれば、嬉しい一言は簡単に見つかります。
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[発展版]もらって嬉しい言葉のコツ
誠実さが持続的な喜びをもたらす
嬉しい一言の基礎は「感情・態度・具体化」を適切に組み合わせることです。それは理解できたと思います。
言葉はコミュニケーションのためにある。良質なコミュニケーションを積み重ねると、信頼関係が生まれる。
信頼関係ができあがってる仲の良い友達や家族では、お互いが好意を持っていることを知っています。
そんな2人なら長々と説明しなくても、「ありがとう」の一言で理解できるかもしれません。
つまり信頼関係を育めば、どんな一言だって嬉しく感じられる。
相手を信頼する条件とは?
たくさんあると思いますが、ここでは2つ例を出します。
- 持続的で良質なコミュニケーション
- 誠実さ
持続的で良質なコミュニケーション
あまり信頼していない状態では、相手がどんなつもりで言葉を伝えようとしているのか、疑いを持ってしまいます。
そのため「感情」「態度」「具体化」を適切に織り交ぜて、わかりやすく思いを伝えるように心がける。
嬉しい一言を受けて喜ぶと成功体験が生まれる。
成功体験の積み重ねが、お互いの好き合う気持ちを育てていきます。
結果として信頼し合うようになる。
誠実さ
いくら嬉しい言葉を伝えても、ウソを言ったり、だまそうとしたりすると、相手に対しての警戒心は消えません。
たとえ相手を喜ばせたくても、ウソはいけない。
嬉しくもないのに嬉しいと言えば、細かな表情の違和感を察知され、疑いはますます膨らむでしょう。
反対に誠実であり続ければ、信頼が高まり関係は良くなるはずです。
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スパイシーなフレーズで想像力に訴える
これまでの例文では、わかりやすく気持ちを伝えることに重点を置きました。
正確に理解されると確実に喜べるので安心できますが、少し真面目すぎて窮屈かもしれません。
そこで(たまに)あえて基本を無視してみる。ポイントは相手が文脈を想像できるフレーズをつくることです。
- 他の男性(女性)といたら、息が詰まっちゃうんだ
- 嬉しくなかったと言えば、ウソになっちゃうでしょ?
- あなたと暮らしていたら、思い出があふれかえりそう
これまでに説明した基本構造を全て無視したフレーズです。
それでもお互いに好意があれば、都合が良いように解釈してくれるでしょう。たとえば
- 他の男性(女性)といたら、息が詰まっちゃうんだ
と聞いたら、
自分となら安心できるってことかな?うれしい!
と解釈してくれる。相手の言葉をそのまま受け取るよりも、想像力を駆使しなければ解釈は広がらない。
そのため頭の中に嬉しいイメージが強く残り、喜びを増す効果が期待できます。
しかし相手の想像が追いつかないと理解してもらえない一言なので、お互いの信頼関係が十分に高まってから使いましょう。
表情やムード(状況)に気を配って親近感を高めていれば、効果的に活用できると思います。
大切な感情を大切な人に伝えるために、一芝居うってもバチは当たりませんよ。
おさらい
関係性を深めるコミュニケーションでなによりも重要なのは、感情を伝えることでした。
「ありがとう」とだけいっても、形式的に聞こえてしまいます。言葉にして嬉しいと語れば、相手も自分が肯定された気分を得られ嬉しくなる。
しかし一辺倒なフレーズではこれまた形式的に聞こえるので、なぜ喜んでいるのかを具体的に伝えたほうが良いでしょう。
誠実で相手を思いやるコミュニケーション力があると、誰にとっても優しくできます。
信頼関係を築くために小手先の言葉ではなく、心からの思いを伝えるようにしてくださいね。