「いやっ」「まあ」「え〜と」などが口癖になっていませんか?
もしそうなら大損している。話し方が誠実に聞こえないのです。
多くの人は態度に表しませんが「話しても楽しくないな」とぼんやり思われていますよ。
口癖は話し相手への態度を変えれば改善できます。
少し努力すれば、人から信頼される話し方の基本は手に入ります。
目次
「いや・えー・まあ」ついつい言ってしまう口癖
否定形の始まりは印象が悪い
「いやっ、昨日ディズニーランドに行きましてね」
「いやっ」とか「でも」とか、反対意見に聞こえる口癖(くちぐせ)をよく聞きます。
某有名漫才コンテストで多くの審査員が、コメントを求められたときに「いやっ」と言って話を始めていました。
「いやっ」と言われると身構えてしまいます。特に悪い評価のコメントをしていないのに。どうしてだろう。
なぜ「いやっ」と言って話し始めるのでしょうか?
おそらく以下4つのうち、いずれかの理由があるからです。
- 相手の意見を否定したい
- 反対意見から検討する多面的思考
- 自分が今から話すことへの言い訳
- 否定するつもりがないのに口癖だから出てしまう
相手の意見を否定したい
相手を否定したいと思っていたら、「いやっ」という口癖が出てしまうのは当然です。
むしろこの場合は口癖ではなく、まっとうな言葉の使い方でしょう。
反対意見から検討する多面的思考
話を多面的に検討しようとする場合、いちばん簡単なのが反対意見を考えることなんですよね。
これは僕のクセでもあり、多くの人もこの理由で否定から話を始めていると思います。
もちろん反対だけではなく、横から、斜めからと検討したいですよね。
しかし会話は短いターン制のコミュニケーションです。考える時間が少なく反対意見しか思いつかない……ということも多い。
本当は会話を充実させたいと思っているから否定はしたくないのですが、気持ちと言動が一致しません。
そして「いやっ」をいえば言うほど、癖(くせ)になってしまう。
否定するようなことを言うつもりはないのに、口癖になってしまうとこぼれてしまいます。
自分が今から話すことへの言い訳
コンテストの審査員のように大きな責任がある発言では、自分の立場を守るために否定的な前置きをしてしまう。
この場合の「いやっ」というのは、相手の否定ではない。
「いやっ(誤解しているかもしれませんが、自分はあなたを否定していませんよ)」というむしろ相手にとって肯定的な自己否定なんです。
しかし「いやっ」という語感から生じるのは相手への否定ですよね。自己否定のニュアンスは伝わりにくい。
否定するつもりがないのに口癖だから出てしまう
これまでの3つの理由を繰り返すことで口癖が習性となってしまっている。
もはやここまで癖になると、どの話し始めでも「いやっ」と言ってしまう。
妥協型は偉そうに聞こえる
「まあディズニーランドに行ったのですが、まあ面白かったかな、まあ」
「まあ」に代表される妥協型の口癖は、話の誠実さを引き下げている印象があります。
まず「私は理解している」といったニュアンスがにじみ出て、どこか偉そうに聞こえます。
次に状況しだいですが、「まあ」の連発は言い訳の印象が強い。「これから話すことは大したことではないぞ」というように。
相手の話を重大なものとして捉えていないように聞こえる妥協型の口癖は、聞き手として悲しい気持ちになる。
しかし真剣に話していても「まあ」という口癖は出てしまいます。
これまで相手に理解をされず自己弁護を続けた結果、口癖が根付いてしまったかもしれません。
考え中の口癖はノイズにしかならない
「え〜ディズニーランドにいったのですが、え〜道に迷ってしまって、あの〜大変でした、はい。」
「え〜」「あの〜」「その〜」などの口癖は、ほとんどの人が使ってしまう。いちばん多い口癖かもしれません。
特に直接の意味を持たない単語ですが、耳触りで話の内容が聞きづらいですよね。
「え〜」というときは実際に考え中なのでしょう。だから「考え中ですよ」というメッセージが相手に伝わります。
数が少なければそれほど気になりませんが、発言の隙間を埋めるように「え〜」と言われると耳触りになる。
また焦っているような印象も受けます。
決めつけるような言葉は考えてから使う
「普通は」とか「結局」「みんな」などの決めつけるような言葉は、意味を限定します。
適切・適量だけ使う分には問題ないでしょうが、「私の意見が正しい、君は間違っている」と主張されているようで、聞き手としては気分が悪い。
何事も白黒はっきり付けたい性格の人は、決めつけるような言葉に頼ってしまう傾向がある。
もし相手をおとしめるような目的がないのなら、使わないほうがよい言葉だとは思います。
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このように
口癖には良いところがない。
それを改善するには少々の努力が必要です。
努力をしてまで口癖を止めるメリットは何でしょうか?
口癖を直すメリット
視覚的な印象が良くなる
口癖を止めるだけで視覚的な印象が良くなる?にわかには信じがたいでしょうが、実際に良くなります。
一部の言葉には対応した感情があります。
たとえば
- いや→拒絶
- まあ→優越
- え〜→迷い
- 普通は→否定
などが考えられます(あくまで一部ですが)。
つまり「いや」というだけで、眉間にシワが寄り、拒絶を示すような表情になってしまう。「まあ」と言うだけで傲慢な表情になる。
「そんな気持ちではない」と思っていても、自動的に表情は言葉に合わせて変わります。
言葉よりも表情は直感的に感情を伝えます。眉間にシワが寄っていたら「嫌な気分なんだ」と認識してしまう。
口癖を言わなければ相手に言葉の真意が伝わり、印象が良くなります。
自制心が高まる
口癖は自動的に口をついてしまう。それを制御するためには自制心を働かせる必要があります。
まばたきをしないと耐えられないように、口癖を意識的に止めることはつらい。
しかしまばたきとは違い、練習をすることで口癖は消せます。
普段から発言に注意していれば、ほかの行動に対しても自制心は高まります。
自制心を得ると、ペラペラと自分ばかり話さなくなり、相手が話す機会が増える。
一方的な会話は、一方しか楽しくない。両方が楽しい会話ができれば、相手が満足し信頼を得られます。
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話すことが自信になる
話をするスキルはどんな人でも役に立ちます。
一人でこもって誰とも話さない生活をしていない限りは、コミュニケーションの機会は必ずある。
上手に話せるようになると、自信につながります。話し上手な人は相手の話もよく理解できる傾向があるので、今よりも信頼されるかもしれません。
口癖を止めただけで話がうまくなるのでしょうか?もちろん論理的な内容の構成や、伝わるフレーズを選ぶ力などの要素が必要でしょう。
しかしまずは口癖を止めるだけでも印象が良くなる。話し上手はそこからのスタートです。口癖を止めるのは誰にでも取り組めます。
話が正しく伝わる
本当は否定したくないのに「でも」と言ってしまう。それでは聞き手がどのように解釈していいのか戸惑ってしまいます。
「え〜」ばかり言う人の会話は聞きづらい。何が言いたいのかよくわかりません。
口癖を直すだけで自分の言いたいことが意図通りに伝わる可能性が高まります。
話が聞きやすいと楽しい気分になる。対話によってさらに信頼関係を構築できます。
動画・音声コンテンツの制作に役立つ
現在のSNSはテキストベースのコミュニケーションが主体です。しかし今後は音声や動画の重要性が高まる(かもしれない)。
音声に特化した使いやすいSNSが出現したり、動画共有サイトでのコミュニケーションがしやすくなったり……変化があったら活動の場は変わっていきます。
こんなサービスも出てきている:「音声」でつぶやくSNS - PitPa(ピトパ)
メディアは参加者が少なくなったら廃れます。人が動いていったら今の楽しいSNSが終わるかもしれない。
SNSが必要と感じるならテキストに依存せずに、きれいな話し方を知っておいたほうが将来的に役に立つ。
もし動画や音声に人が流れていったら、今はインフルエンサーでも一気に影響力が無くなってしまいますよ。
余談ですが音声認識も口癖がないほうがきれいに読み取れます。
口癖をなくすことは現代人に必要なことなのです。
具体的な口癖の直し方
口癖をうなずき言葉に変える
口癖を「うん」などの肯定的な言葉に変えるだけで、ずいぶん印象が良くなります。
特に「いや」「まあ」に対して効果を発揮する。
たとえば「あそこのラーメン屋さん、人気出てきたらしいよ」と言われたら、
「いや、いつも人が並んでいるよな(行きたくないのかな……)
よりも
「うん、いつも人が並んでいるよな(良く思っているみたいだ)
と言い返せば、同じフレーズが肯定的な印象になる。
先ほど言葉に対応する表情があると言いましたが「うん」にも納得という表情がある。納得してもらえれば聞き手が安心できる。
「うん」以外にも「そう」「はい」等があるので状況やお好みに合わせて使えます。
また話しはじめの「え〜」もこれで代用できる。
はじめに「うん」と言ってしまえば、相手に「聞いているよ」と示せます。そうすれば空白があっても相手は待ってくれます。
発言を質問中心にする
会話はターン制で何度も繰り返します。しかし一回の発言で納得させようすると、力が入って口癖が出てしまう。「いや」とか「え〜」とか。
それを防ぐためには相手に話させればいい。相手が言ったことを理解するように努め、話がつながる質問を考えます。
たとえば「あのドラマ、いつも大どんでん返しで話がよくわからないよ」と言った相手に対して、
- へぇ〜どんなシーンが?
- なんであーいうふうになるのかな?
- 前からそうだったの?
と返してみる。すると相手はまたもや自分の考えを言えるので、話が弾みます。
しかし自分も話したいですよね。完全に受け身に回らないために自分なりのルールを設けてみる。
- 相手から始めたテーマは聞き手に回る
- 自分から始めたテーマは自分の意見を言う
特に「いや」などの否定形がうざく感じるのは、自分の話を奪われて持論を展開されたときです。
相手のことをわかろうとする。当然のように思えることですが、意外にできてない人が多いので、聞き手に回ると喜ばれますよ。
伝えたい要点が決まってから話す
口癖は考えずに話し始めるから、つい漏れる。言いたいことをまとめてから話せば、否定的な言葉や、断定的な言葉は出てきません。
そこで便利なPREP法という話しのテクニックがあります。
- P→Point(要点)
- R→Reason(理由)
- E→Example(具体例)
- P→Point(要点でまとめる)
つまり結論は先に話すという手法です。主に会議やプレゼンテーションなどの時間的制約がある状況で確実に話したいことを伝えたいときに用いる。
これは普段の会話から活用できます。その場合は要点・理由だけを話す。相手が理解していない場合だけ具体例を話せばよい。PR(EP)という感じで。
まずは質問を繰り返し、相手の意見を引き出しながら要点をまとめていく。要点がまとまった時点でタイミングを見計らい、端的に話をする。
そうすると内容がよく分かり聞き手は納得できる。さらに聞き手の意見も反映されているので共感も伝えられて会話が気持ちよくなります。
もし聞き手が「話を聞いてもらいたい」と感情的になっているようなら、言いたいことを引っ込める気概があると、なお素晴らしい。
ゆっくり話す
特に「え〜」は早口の人に多い。なのでゆっくり余裕を持って話すだけで次に言いたいことが思いつく。それで余白を濁すような口癖はなくなります。
ゆっくり話したほうが心も落ち着きます。
口癖は「間違ったことを言わない」「わかってないと思われたくない」などの理由で生じる自己防衛的な行動なので、焦るとなおさら増えてしまう。
会話の途中で「口癖が多いな」と判断したら、まずは口調を遅くして矯正します。
もし「え〜」と言ってしまっても、その後に十分な余韻を持てば、聞き手が話を待つ姿勢が持てる。
ダウンタウンの松本さんは、よく「え〜」と話しはじめて、ゆっくりと面白いことを言う。それが自分の言葉をぐさっと相手に刺すコツなのかもしれません。
個人的には早口でも聞きやすければ問題ないと思っています。早口で話せると緩急が付けやすい。
最終的にはどんなに早くても口癖が出ないようになれば、表現力は天井知らずに高まるでしょう。
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句点を意識する
句点とは「。」のことです。長い文章は何を言っているのか、よくわからなくなります。
え〜と、昨日さ、はじめてディズニーランドに行ったんだけれど、まあミッキーがどこにもいなくて、まあ園内を探し回ったんだけれど、え〜、面白そうなアトラクションを見つけて、まあ乗って〜、え〜
会話も同じです。句点を意識しないと話がつかめない。聞き手が話を理解する前に、どんどん場面が展開してしまう。
そして考えながら話すと、つい「え〜」や「まあ」とつないでしまう。
句点で文を区切れば言いたいことがはっきりし、なんの話をしているのか理解できる。
文の合間では、聞き手が「うんうん」「それで」と相づちを打てます。必要に応じて要点をまとめてもらってもよい。
これくらい区切ればリズム感のある楽しい会話になる。
録音して練習する
さあ実際に話してみようと言っても、根付いたクセは簡単になくなってくれません。
行動を変えるには練習あるのみです!
具体的な練習方法は
- テーマを決めてスマートフォンのボイスメモに1分間スピーチをしてみる
- 文章や動画を見た後に、動画を取りながら感想を語ってみる
- アナウンサーの話し方に重ねながら自分も言ってみる
- YouTuberになる
方法は何でもよいと思います。
大事なのは自分の話し方を確認すること。
おさらい
生まれつきの口癖は存在しません。
- 環境の影響(友人や家族の言葉が伝染る)
- 思考のクセが言葉に染み付く
というように、何かしらの原因がある。
癖は行動が習性になったものです。それを直すためには、やはり行動で上書きするしかありません。
態度が行動を決めます。つまり対話相手への態度を正せば、思考のクセが修正できる。
相手を受け止めるような話し方を覚えれば、口癖は自然に良くなってきます。
話し方がきれいな人はそれだけで信頼されやすい。
口癖の修正は投資効率のよい学習だと思います。ぜひチャレンジしてください!