「いつも同じミスをしているな」と上司に言われて気づく。柔軟な発想ができない、と。
思うように仕事の成果が出ないのは、先入観にとらわれている可能性があります。
先入観は捨てたほうがよい?なかなか簡単にはいきません。思考のクセをなくすのは長い時間が必要です。だから生かしちゃえばいい。
先入観を生かすにはどうしたらいいのでしょうか?
思い立ったらすぐ行動を実践するヒントがある。
深く考えなくても行動しながら成果が向上するんです。
目次
とらわれてしまう先入観……その特徴を知る
先入観の意味
気づきは「ぱっ」と生まれてそうですが、前もって知っている知識、つまり記憶が影響しています。
新しい問題が起因となって記憶が呼び起こされ、気づきは生まれる(生まれながらにできることも、記憶としています)。
その中でも思い出しやすい記憶は気付きに直結しやすい。
ほとんど考えることなく、問題へ反応するように生まれた気づきが先入観と呼べるでしょう。
前もってつくられた固定的な観念。それが自由な思考を妨げるときにいう。思い込み。先入主。先入見。 「 -にとらわれる」
問題(起因)と強固に結びついた「記憶された概念」が先入観だと解釈できる。
思い込みが思考を阻害する
多くの問題には複数の解決方法がある。しかし物事の一つの面で解釈しようとするのが、先入観の問題点といえます。
たとえば「通勤経路を車で通って職場に通う」というケースで先入観の問題を考えてみます。
通勤経路は何度か通ると記憶しますよね。ほぼ無意識で職場までたどり着けます。しかし道中に工事現場があると、交通規制で足止めされる。
先入観にとらわれ安心しきって運転を続けると、たびたび事前に表示されていたはずの工事のサインを見逃してしまうかもしれません。
このときドライバーは運転に最低限必要な情報にしか注意をしていないので、別の道を通ったほうが早いという判断ができなかった。
しかし前もって工事が行われると情報を得ていたら、注意深くサインを追えた可能性が高い。
先入観にとらわれて行動するとトラブルを事前に予測しない。判断があらかじめ決まっているので、柔軟な行動ができません。
別のことに意識を向けられる
一方で先入観には、考えなくても行動できるというメリットがあります。たとえば運転中に別のことへ意識を向ける余裕を持てる(危険ですが)。
行動するための思考力を最小限にできるので、マルチタスク(複数の行動を同時進行する)を実行できます。
たとえば歯磨きは先入観によって動きが自動化されます(まずブラシを持って……と考えません)。その間に別のことに関心を向けられる。
このように習慣化された行動は半無意識で実行できます。
(少し違和感がある理論かもしれませんが)先入観は習慣以外の事象でも半無意識で実行しようとするので、考える資源(意志の力)を節約できます。
感情に支配された半自動的な思考
先入観には自分に都合の良さそうな判断をするという傾向が見られます。
「良さそうな」という表現でおわかりかと思いますが、あくまで最適な答えを導くわけではない。
問題の第一印象で思い出した記憶が先入観を決定づけてしまい、短絡的な意思決定をしてしまう。
問題が発生したときにまっさきに思いつく(体感する)のは感情です。
- 面倒だな
- つらそうだな
- 損しそうだな
というように感じると、行動をしない理由を記憶の中から探ってしまう。
先入観にとらわれがちな人は、安全とみなしている行動以外はしない傾向があります。つまり慣れていること以外はしたくない。
反対にポジティブな感情を抱いても短絡的な意思決定につながります。
- 楽そうだな
- 気持ちよさそうだな
- 得しそうだな
わかり易い例は宝くじです。業者の広告効果のおかげで、ポジティブな感情が生まれ、リスクを無視して購入したくなる。
宝くじはギャンブルですよね。ギャンブルは胴元が得をしないと成り得ません。
宝くじは、当たる確率が極端に低いため、当たる確率と賞金を掛け合わせた期待値(掛け金に対して戻ってくる見込みの金額)が、一枚300円のジャンボ宝くじの場合、約半分の150円程度に過ぎません。
低い当選確率を高めに見積もるワクワク感に脳内ドーパミンが関与 - JST
つまり先入観は物事の本質を知ろうとせずに、感情に任せて不適切な行動を起こすリスクがあります。
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人に先入観を持つと偏見につながる
ステレオタイプという言葉を知っていますか?
ステレオタイプ(英: Stereotype、仏: Stéréotype)とは、多くの人に浸透している先入観、思い込み、認識、固定観念、レッテル、偏見、差別などの類型化された観念を指す用語である
簡単に言うと「みんなが思っている決めつけ」です。ステレオタイプは主に人格以外の要素(見た目・出身地など)で人の特徴を決めつけることをいいます。
人に対する多くの先入観はステレオタイプにより生み出されます。たとえば
- 四角いメガネをかけている高校生は勉強ばかりしている
- 〇〇国の人は、ケチで図々しい
- ミニスカートの女性は誘いに乗りやすい
これらの印象には根拠がありません。しかしステレオタイプを持っていると、相手を決めつけてしまう。
「勉強が好き」だなんて一度も言っていない相手に対し先入観を持つと「テスト前だし、あいつを誘っても来ないよな、ガリ勉だし」と判断する。
この背景には感情に支配された半自動的な思考があります。つまり相手を類型化すれば、自分の態度を容易に決められるのです。
ちなみに職業にもステレオタイプがあります。
社会心理学者のクローディア・コーエンが以下の実験をしました。
- 実験参加者にある女性とその夫が誕生日を祝うビデオを見せた後、ビデオについて覚えていることを確認した
- ビデオを見る前に実験参加者を二つの群に分けた
- 女性を図書館司書であると伝えた群
- 女性をウェイトレス(女性のフロアースタッフ)と伝えた群
- 実験結果は有意な差が生まれた
- 図書館司書の群は、メガネ・本棚・芸術品があったとの記憶が多かった
- ウェイトレスの群は、ポップミュージック・ハンバーガー・プレゼントがネグリジェだったとの記憶が多かった
参考書籍:心理学ビジュアル百科
つまり職業から先入観を作り、女性の特徴を勝手に作り上げた結果、関心を向けるポイントが変わりました。
ステレオタイプが行き過ぎると偏見が起こります。
偏見の原因ってなに?恐怖が人間を支配する、思考のメカニズム
社会のいたるところに偏見は存在する。国籍や学歴・地域・趣味・趣向…。偏見は人間の正当な権利と自由な表現を阻害してしまう。 偏見を持っていないと思っている人は、偏見にまみれた人を偏見的に嫌う。 人々の営 ...
以上から先入観をまとめると
- 思いつきで行動を決める
という特徴が浮かび上がります。思慮深く考えないと多くの場合、誤った意思決定につながる。
先入観はないほうが良さそうですよね。
しかし先入観を生かした行動をとれば、仕事の成果を高められます。
そのために重要なことはなんでしょうか?
思い立ったらすぐ行動することです。
そして行動の精度を高める仕組みを作ります。
はじめは失敗ばかりで苦しいかもしれません。
しかしそれを乗り越えれば多くの経験をつめ、高い能力が持てるでしょう。
先入観にとらわれても、それを生かす8つの技
1.経験により成長することを知る
能力が成長する条件は前向きな経験をすることです。
何かの起因があって、自ら行動を変化させたことが経験になる。
できごとを体験するだけではありません。意識的にも、無意識的にも経験は起こります。
起因とは気づきの発生といえます。なにかに気づいたから考え方や感情は変化する。
前向きな経験とは自ら問題解決に取り組むことです。つまりあきらめずになんとかしようとする行動を指します。
実際に行動すればたくさん経験ができる。しかし何も考えてなかったら、その経験が大切なのか判断できない。
先入観を持つ人は思い立ったら行動してしまうので考えません。この短所を補うためにいくつか仕組みを作れば、先入観を生かす戦略が立てられます。
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2.ぶつかったら別の方法を実行する
とりあえず前に進むというのが先入観的思考術と言えます。しかし失敗してしまうこともあり、または先入観が邪魔をして行動を起こせないこともある。
先入観的思考術の約束として、進めなくなったら別の案を立てて進むと自らに約束します。
お掃除ロボットは壁にぶつかったら回転して別の方向を向き、前に進み続けるようにプログラムされていますよね。
「あれ、行動が止まったな」と感じたら、即座に先入観を取っ払い、別の方法を模索するようにします。
試行錯誤を続けることが経験を増やし、精度の高い行動につながる。
感情が邪魔をして前に進めなくなっているときは、あきらめたくなるかもしれません。
もし別の案が思いつかなかったら周りの人を頼っても良いと思います。
とにかく行動をするというのが、先入観にとらわれる人の打開策です。誰かに頼っても、誰でも考えそうなことでも、恐れずに一度試してみます。
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3.行動からデータを集める
- 思い立ったら
- すぐ行動
では試行錯誤の効率は低い。なので
- 思い立ったら
- すぐ行動して
- 書き出す
のように行動が終わった後に感じたことを書き出します。
たとえばテレアポでウォーターサーバーの新規顧客を開拓する。相手の印象で話し方を変えれば、訪問の約束が取り付けやすいと仮定しましょう。
「思い立ったらすぐ行動」なら、とにかく電話をかけまくるという戦術になる。
「思い立ったらすぐ行動して書き出す」なら、相手と話した印象と、話した内容のキーポイントを見つけて書き出す。
というように具体的なデータ収集を取り入れます。
4.試行錯誤をする
行動を何度か重ねると、書き出したデータからさまざまな情報を抜き出せます。
- おじさん(ぽい声)が出たら、すぐに電話を切ろうとするな
- おばあちゃん(ぽい声)が出たら、よくわかりませんとしか言わないな
- 若い女性(ぽい声)は、費用のことに食いついたな
これらをもとに新たな戦術を構築する。その場合も思いつきで問題ありません。
- おじさんには短い質問をして、反応が薄かったら早めに切り上げよう
- おばあちゃんが理解しやすいメリットを始めに言おう。ポットでお湯を沸かす必要がないなど。
- 若い人には比較をして費用のメリットを伝えよう
というように思いついたことを次々と実行していきます。そうすることで自然に試行錯誤ができる。
一連の作業を繰り返すことで、多くの情報が手に入ります。たとえ先入観で行動したとしても、精度が高い戦術が生まれやすくなる。
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5.一歩上の成果を目指す
「思い立ったらすぐ行動して書き出す」という仕組みでは独自の目標を立てていませんでした。成功か失敗は誰かが立てた基準で評価している。
たとえば「アポイントを3件・売上100万円・月末までに納品」のような量的目標になることが多いでしょう。
この目標を達成していれば、とりあえず成功と言えます。しかし能力の向上を計るのなら上を目指したい。
そこで現状維持以上の成果を目指すために、少しでも結果を更新するように心がけます。
小さな改善の積み重ねても目標を達成できないのなら、抜本的に戦略を変える方法を考えます。
そのときは少し行動を止めて考えてもよい。信頼できる仲間に迷わず相談するという行動の速さが求められます。
6.学びを続ける
試行錯誤を続けると、思いつけるアイデアが多くなる。そうなると先入観とは呼べないレベルのひらめきが生まれる可能性が高まります。
気づきというのは問題と記憶が関連づくことで生まれます。つまり情報を多く持っていれば、気づきの質も変わってくる。
そのためには学びを習慣化します。知的好奇心を持って仕事の情報、または仕事に関係のない文化・学問に触れて新しい経験を積む。
思いついたらすぐ行動しても、一発で良い成果を出せる確率が高まります。
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7.ブレーンを作る
どうしても熟考しないといけない仕事もありますよね。
たとえば新入社員に向けて演説をする場合。思いつきで配慮のないことを言ってもいけませんし、かといって当たり障りのない言葉では意味がない。
先入観で行動するわけにはいけない仕事に対して、自ら立ち止まって考えられるのなら問題がない。
しかし自分でどうしても考えるのが苦手なら、アドバイスをくれる人を多く見つけておくとよいでしょう。
思い立ったらすぐ行動できる人は、アドバイスをもらったら悩まずに実践する行動力がある。
反対に考えるのが好きな人は行動より思考に重点を置きます。行動してくれる人はありがたい存在なのです。
8.完璧を目指さない
とにかく思いついたらすぐ行動に移すことが大切です。そのためには完璧を目指す時間がもったいない。
アイデアが理解できるレベルまで作り込む。とりあえず効果が分かればよいのです。
たとえば企画書を作るのなら、企画書の企画書(プロトタイプ)を作って誰か(依頼主が一番良い)に見てもらう。
それで意見をもらいデータを集めてから、試行錯誤してプロトタイプを何度か作り、最終形を目指します。
行動から得た経験を重視します。そのためにはスピーディな試行錯誤が必要です。
おさらい
先入観にとらわれる人は考えるよりも行動する傾向を持っています。
しかしネガティブな感情が邪魔をして、行動を起こさない言い訳を考える「行動」を選択してしまうといけません。
必ず問題を解決する行動を起こします。そのためには熟考をしなくてもよい。何度も試行錯誤すれば自ずと良い状態に向かっていく。
思いついて即行動をしたら必ずデータを抽出する。簡単な内容でも良いので、書き出すなどアウトプットをします。
頭で考えると思い込みが繰り返して、さらに先入観が固定されます。書き出すと公平に情報を見られるので、違うアイデアが生まれやすくなる。
試行錯誤は成長の基本です。
すぐに行動ができる人はとにかく回数を重視しましょう。
特に序盤(入社したて・新業務など)は考えるよりも行動したほうが早く成長できると思いますよ。