ご近所さんからの食べ物のおすそ分け、友人からの物の押し付け、上司からの微妙な誕生日プレゼント……
欲しいものだったらいいけれど、必要ないんだもん。
いただきものの波風立てない断り方を知りたいなぁ……
貰い物ってなかなか断りにくいですよね。
断ることに悪気はないよって伝えたいけれど、相手に「拒否された、ムカつく!」って思われるかもしれない。
相手に嫌な思いをさせず、貰い物を断る方法はあるのでしょうか?
心を受け取ったことを、しっかりと伝えられればいいんです。
目次
断れないと感じる自分の心理
価値を見いだせない物はじゃまになる
もらって嬉しいプレゼントがある一方で、いらないと感じるものもあります。
「欲しい」と思えないものは、自分にとってじゃまになるんです。
自分の価値観や状況に合わないものへは、価値を感じられません。
例えば嫌いな食べ物は見るだけで嫌ですよね。人は嫌いなものを見ると、ストレスを感じて不安になるんです。
嫌いじゃない食べ物でも大量にもらいすぎると、腐ること・同じメニューが続くことを考えると、げんなりしてしまいます。
Tシャツ自体は欲しいと思っているのに、センスと合わないTシャツは着たくないので、タンスの肥やしになってしまう。
つまり自分の欲求を満たせなさそうなもの、もらうことで負担になりそうなものは、ほしくないと感じるんですね。
心理的に安心できない相手からはもらいたくない
一方で必要なものでも「もらいたくないなぁ」と感じることはあります。
贈ろうとしてくれている相手を信用できなかったり、仲良くしたくなかったりした場合です。
例えばどんなに自分のセンスにぴったりと合ったアクセサリーでも、ストーカーからもらったものは身につけたくないですよね。
もう会いたくないのにプレゼントを受け取ると、いつか恐ろしいことが起こりそうな気がします。
また、この人に借りを作りたくないなぁという相手がいるかもしれません。
ライバル関係だったり、その人に劣等感を覚えていたり……
自分が下だと感じたくない相手からは、対等以上の関係でありたいと思ってしまうから、物を受け取りたくないんですね。
つまり自分が傷つくのを避けるためにもらいたくない、という心理があるのです。
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傷つけたくないし、傷つけたくないから断れない
友だちの愚痴を聞いているときに「愚痴るくらいなら直接言えばいいのに」なんて思いませんか?
自分の意見をはっきり伝えられない人を見ると、もどかしい気持ちになります。
だけど自分でもはっきり断れないときがありますよね。
どういうときでしょうか?
気遣いが必要な間柄だと、断るのが難しく感じてしまうんです。
人によるとは思いますが、相手によって断りやすさは違います。
例えば配偶者の両親からの貰い物は断れないのに、自分の両親なら「ごめんね、たくさんあるからいらない」っていいやすい。
例えば私(著者)の場合、自分の両親なら贈り物を断ったとしてもアフターフォローが容易なので、関係性が心配にならないんですね。
ある友達に「これあげるね」といらないものを渡されたら受け取ってしまうのに、全く知らない人からだと怖くて受け取れない……
全く知らない人とはそもそも関係性がないので、もらうこと自体が不自然ですし、断ったあとのリスクもありません。
反対にもともと他人だった配偶者の両親や、何でも言える間柄ではない友達からの贈り物は断りにくい、と感じる人は多いでしょう。
断ることで相手を傷つけるのではないかと心配し、反対に相手からは傷つけられるのではないかと不安になっちゃうんです。
相手との信頼関係が安定しておらず、なおかつ関係を続けなきゃならない相手にはどうしても、気遣いしてしまうんですね。
相手の心を受け取れば、貰い物を丁寧に断れる
アサーションで気持ちを尊重して受け取る
ではどうやって貰い物を丁寧に断り、その後の関係を良くしていけるのでしょうか?
気持ちを受け取る
という使い古されたフレーズを、誠心誠意に行動で示すことが必要なんです。
気持ちを受け取るための行動にはアサーションが求められています。
実のところアサーションという単語を辞書で引くと「断言」と書いていますが、今回は用いるのはこの意味ではありません。
参考:assertion とは 意味・読み方・表現 | Weblio英和辞書
カウンセリング心理学でいうところのアサーションとは、
(1)自分の意見,考え,気持ち,希望,欲求などを、率直に正直に適切な方法で伝える。
(2)自分の基本的人権と相手の基本的人権を相互に尊重する精神で行うコミュニケーション。
引用(PDFファイル):第9分科会 ワークショップ カウンセリング技法Ⅲ 「アサーション・トレーニング」
つまり相手を傷つけないように十分配慮しながら、率直に断る技術が求められている。
アサーションで求められるのは、自分も相手も尊重した態度です。
しっかりと相手を理解しようと試みて、その気持ちを受容し、かつ自分の思いを正直に言おうとする態度が大切なんです。
いらないものを渡されてすぐ退ける前に「なんでこの人は、これをくれようとしたんだろう」と相手の心情に思いを馳せる。
この態度は交流分析(心理療法の一つ)の「人生の立場」から学ぶことができます。
私もあなたもOKってやつですね。
興味があったら以下のリンクより自分の人生の立場を確かめてみてください。
「お気持ちだけ頂戴します」とよく単純に言いますが、本当に気持ちだけを受け取るには、真心を持って相手に向き合わなければできないのです。
心が贈られるから、心を受け取ればいい
人生の立場などを考えると、自分だけが「あなたもOK」だと感じているように思えるかもしれません。
しかし贈り物をくれる人が「あなたもOK」だと感じている可能性は非常に高いです。
そもそも相手に喜んでもらえないようなら、贈り物をする意味を感じられませんよね。
人に物を贈る人は、相手に肯定的感情を抱いてほしいと考えています。
- 贈った物が喜ばれることで感謝されたい
- 受け取った人の役に立ったと感じたい
- 要らないものを捨てるのがもったいないから、使ってくれる人がいたら納得できる
- 関係を続けたい人には物を贈ることが礼儀だという信念を持っている……など
これらのようなコミュニケーションを積み重ねることで、お互いの関係性をより良くしていきたい、と物を贈る人は考えています。
つまり贈った人は物を渡しているようで、本心ではその裏に隠している思い(心)を受け取って欲しいと感じているんです。
しかしアサーティブではない人は、物へのお礼は伝えられますが、相手の心には注目できません。
- 贈った人→心を贈る
- アサーティブではない受け取った人→物を受け取る
以上から贈った人とアサーティブではない受け取った人のやりとりは、贈ってくれた人とすれ違っていることがわかります。
こんなことがないように、受け取る人もアサーティブに心を受け取りたいですよね。
心を受け取ってお礼を言うと「あなたの味方ですよ」というメッセージが伝わり、お互いの関係に安心感が広がるんです。
そして必要ないのなら、物は受け取らなくてもいい。
多少は相手が残念がるかもしれませんが、自分の気持ちへ正直になって、頂いてもうまく活用できないことをしっかりと伝える。
誠実な気持ちの交流が、人間関係を育てていくんです。
例文:物は断って気持ちを受け取る会話術
実際の会話ではどんなふうに断ればよいのでしょうか?例文を2つ用意しました。
ケース1、近所のおばさん(Aさん)からお菓子を大量にもらった
ケース2、夫の母親から子供のおもちゃをたくさん貰う
これらの会話の流れを以下にまとめてみました。
- 思いを受け取る
- どうしても断らなければならない理由を言う
- 必要なら、中間の案を出す
- 再度、その思いがうれしいことを伝える
この流れを守ると、人の優しさをしっかりと受け止めつつ、やんわり丁寧に断れますよ。
後日、再開した時の対応
後日、貰い物を断った人に会ったら「先日はごめんなさい」というのはNGです。
断ったことは良くないことだという印象を与えてはダメ。
代わりに「先日は本当にありがとうございました」と言いたいところですね。
思いを受け取っているのだから、感謝するのが適切なんです。
もし断れなかったら・・・
押し切られて断れないときもある。そんな時は無理に断らずに受け取りましょう。
しかしそれを使い切れないのなら、前もって「もしかしたら使い切れないかもしれないので、どうしても必要な人がいたら分け与えて良いですか」と伝えておきましょう。
他の人に渡す時は、元々くれた人の話をして「その人に会ったら、お礼を言ってください」と一言添えたいところです。
人は回り回って誰かに感謝されると、とても嬉しくなりますよ。
おさらい
今回の記事の内容をまとめますね。
- 趣味趣向や価値観は人それぞれで、もらうと邪魔なものがあっても当然
- 安心しあえている関係でないと、断ることで相手を傷つけそう、相手から傷つけられそうだと感じる
- 「私もあなたもOK」の態度を持ち、相手の好意を受け止めてしっかりお礼を言う
- ものが必要ない理由を、相手の気持ちに配慮しながらわかりやすく正直に伝える
対人関係を円滑にするコツは、相手の気持ちをしっかりと受け止めて、自分の気持ちを知ってもらうことでしょう。
人とのちょっとしたすれ違いを放置しておくと、今後の関係は悪くなってしまいます。
このような問題を対人関係構築のチャンスに変えるには、思いやりと勇気が必要なんですね。