したいことがある。願いもある。しかし自分を高める努力ができない。
「やるやる」と口ばかりで自分を裏切ってきた。最近は「やる」とすら言えなくなる。「自分には努力をする才能がない」そんなふうに思う……。
努力は誰でもできる。
方法を知らないだけだ。
つらい我慢は必要ない。楽に我慢できるコツがある。
当たり前のように努力ができだしたら、人生が楽しくてしょうがない!
目次
努力が続かない人の勘違いと改善策
努力という誤解
努力(どりょく)とは、目標を実現するために、心や身体を使ってつとめること。
努力は苦しいと思われている。なぜ苦しいことをするのか?
「報酬」があるからだ。
報酬が支払われるから努力ができる。この構図は誰にでも当てはまる。
しかし多くの人はその努力に耐えられず挫折をしてしまう。資質や才能がないと言う理由で諦める。
資質や才能のせいで努力ができない?それは勘違いだ。
誰でも報酬のために努力をしている。仕事・勉強・部活……なぜ好きでもない満員電車に乗れるのだろうか。人の営みとは努力によって成り立っている。
それなのになぜ「できない努力」があるのだろうか?
それは体を痛めつけるほど執着して取り組むのが努力、という誤解により生まれる。
例えば最高のヴァイオリニストになるためには、誰よりも多く……一日に20時間も練習をすればいいのか?
練習をすることが目的ではない。成長をすることが目的だ。がむしゃらにがんばっても方向性が間違っていたら成長の効率は悪い。
第一線のヴァイオリニストは一日に4時間30分しか練習をしていないと聞いたことがある。科学的な分析を経て最高の練習プランを考えたのだろう。正しい努力は適度に行われる。
20時間……はやりすぎかもしれないが、たくさん練習をするのが悪いわけはない。
しかし練習時間が多いことに依存して科学的な考察をしないのは、いつまでたっても非効率だと気づけない。
我慢は訓練で楽になる
努力は計画と行動によって成立する。計画をたてるのも実行するのも自制心がなければ成り立たない。
努力に先立つのは自制心、いわゆる我慢が必要だ。
我慢とは自分の欲求の反対を選択する行為だ。お菓子が食べたいのに食べない、練習したくないのにするといった具合に。
我慢はつらい。しかし我慢は慣れれば楽になる。慣れてしまえば努力は習慣に変わる。
例えばハーフマラソンを走り切ると言う目標で、ランニングをはじめたとしよう。
今は2キロ走るのが限界だ。高い目標を前にして諦めないために無理をしない練習の計画を立てる。
2キロしか走れない人が、いきなり21.0975キロを走ってみようとは思わないだろう。今週は3キロ、来週は4キロ……というような徐々に負荷を高める計画を考えるはず。
最終的に本番でハーフマラソンを完走すればいい。目標を確実にかなえるために、計画を立てたのだ。
体力をつけるのと同じように、我慢にも段階はある。計画を立て徐々に慣らしていけば、いつの間にか我慢は楽になってくる。
短期目標に対して努力をする
目標の人と言ったら、その道の第一線のプレーヤーというのが一般的だ。
例えばイチロー選手になるための練習ってなに?それが分かればみんなスーパープレイヤーだ。
正しい練習プランがわからないから、とりあえずたくさん練習をしてみよう!……
それだと練習を頑張ってもイチロー選手に近づける気がしない。高すぎる目標を追いかけたために成果が出ず、ストレスが積み重なる。そして燃え尽きる。
つまり始めから高望みしたので、報酬が得られないことに我慢できずに挫折してしまった。
次は目標を野球部のコーチに設定した。そのコーチは元地元高校の球児だ。うまいと入ってもプロには遠く及ばない。
そのコーチの実力を目指して一生懸命練習した。日々コーチの実力に近づくのがわかるからうれしい。
しかしコーチより速いボールを投げたその日から、なぜか練習に行く気持ちがなえてしまった。
つまり低い目標を設定してはじめはやる気になった。しかしすぐに結果が出て目標を見失った。
「自分はうまい」と思う自尊心は心地よい。その自尊心に浸り続けては成長が止まる。
このように目標設定とは高すぎてはダメ、低すぎてもダメ。最適な目標設定は、高い目標と低い目標の良いところを組み合わせて生まれる。
高い目標のメリットは「理想的な自分になれる」こと。目標を達成したら第一線で活躍できる。人を引っ張る立場になり、社会的な価値が高い。
低い目標のメリットは「見通しが立ちやすい」こと。自分を分析して能力の向上を確かめられる。そのため計画がすぐに立ち、目標も達成しやすい。
高い目標「最終目標」を低い目標「短期目標」で刻む。そうすれば挫折の可能性は減る。
短期目標はこの記事でよくわかります
計画を立てる意志力
意志力とは我慢の原動力だ。目標に向かっていく意志があるから、我慢をすることになる。
努力は選択の連続で成り立つ。
- 計画を立てたらはじめなきゃいけない。計画を立てるか?あきらめるか?
- 計画を立てた。本当に始めるか?あきらめるか?
- 今日もトレーニングするか?今日はサボるか?
- 目標に達しなかった。計画を立て直すか?そのまま続けるか?あきらめるか?
一度「やる」と決意しても、努力をする限り選択は続く。
実は、努力はテクニックで継続できる。
しかし、はじめの一歩だけは、自分の内側から意志の力を振り絞らなければならない。
はじめの一歩とはなにか……それは計画をたてるためにペンを持つことだ。
ペンを持って目標に向き合う。つまり自分を変える決意だ。
決意することを考えただけで、心は拒否反応を訴えてくるかもしれない。しかし悩みを解決しようと思ってインターネットで検索した人は、すでにスタートラインに立っている。
怖がらずにペンを持ってほしい。そうすれば希望が生まれる。
適切な計画が継続の鍵
選択のたびに意志力を使う。厳しすぎる計画を立ててしまうと、日々の消耗が激しくて挫折してしまう。目標が簡単すぎると、成長の実感を得られない。
そのため、能力向上が確実に認められる水準かつ、達成可能な目標を立てる必要がある。
人は大きな願望を持つ。少年は大谷翔平選手を夢見る、ミュージシャンは武道館を満席する野望を持ち、80キロの人は50キロになりたいと願う。
それを実現するために短期目標を立てるのだが、理想の自分に引きづられて、自分の実力を多大評価する傾向がある。
少年はいきなりホームランを連発できない。チケットノルマを達成できないミュージシャンはスカスカの会場でライブをする。体重を一気に減らすと体が悲鳴を上げる。
短期間で実現でき、能力の向上が認められる短期目標をしっかりと立てる。「厳しいけどこれくらいならどうにかなる」と感じるくらいの練習メニューを立てる。それを毎月、着実に達成していく。
その繰り返しが、努力と報酬のバランスを整え、継続的な努力を可能にする。
一方で、目標は結果を見るまで安心できない。不安になりやる気を削がれるかもしれない。
しかし、この練習メニューをやりきれば目標が達成できるという自信があれば、不安に悩まされることはない。
もし、目標が達成できなくても、自分で決めた練習メニューをやりきったという自信はできる。次の計画も自分ならやりきれるという自信は、努力を続ける大切な要素だ。
努力する力が身につくアイデア
努力の段階
努力ができる人は、すでに下地ができているから努力を継続できる。しかし、努力ができない人はこれから意志力を付けていく必要がある。
意志力は「個性」と「学習」により育っていく。個性は生まれつきの性質だ。もともと執念深かったり、もともと気弱だったり、こういった個性を後から変えることは難しい。
しかし、学習は何歳になってもできる。自分の意志力を高める学習をしていけば、遅かれ早かれ実用的なレベルでの努力は実践できる。気弱でも強気に出られるコツを得る。
これから「努力体質の基礎を作る方法」を説明する。
その前に努力形成には3つの段階がある事を知ってほしい。
- 成功体験を積む
- 1日をデザインする
- 高みを目指す
1.成功体験を積む
成功体験を積み、努力を習慣化する。
いきなり無理な努力をせずに、1つの短期目標を確実に実行していく。自分を思い通りに動かせるという、自己統制感を作っていく。
2.1日をデザインする
1日のスケジュールを決め、習慣によって自分をコントロールする。その場の感情で流されにくくなる。
したいことの優先順位を決め必要なことから実行していく。
休むことも計画に入れ自分の意志で休む。例えばダイエット中でも食事制限をしない日を作る、漫画を読む時間を作るなど能動的に楽しむ。
3.高みを目指す
自分の限界を決めずにひたすら高みを目指す。一般的な努力のイメージだ。
しかし時間をかけることにこだわらず、適切な方法を科学的に模索する。
以上のようにじっくり基礎からステップアップしていく。
今回は、「1.成功体験を積む」について解説する。
自己認識をする
短期目標をスタートする前に自己認識を練習する。自己認識は自己統制の基礎だ。
自己認識は鏡を見ているように自分の存在を感じる感覚である。鏡を見た時はキメ顔になるだろう。顔を意図的に緊張させているのだ。
気を抜くと体は歪んでいく。意識してその歪みに耐えてみる。職場などの他人に監視されている状況で、自分を統制する練習をすればいい。
無理をせずちょっとした努力でかなうものが理想的だ。例えば、
- 背筋を伸ばして座る
- すれ違いで必ず挨拶をする
- 静かにキーボードを操作する
- 汚い言葉を使わない……など
いくつか選んで練習してみるといい。これに取り組むと意志力が鍛えられる。
自己認識で意志力を鍛える方法
考えることを思い出す
誘惑に流されるから努力が続かない。
自分を冷静に見つめれば誘惑に逆らえる。
「自分がこんなふうに考えたからそれをしたんだ」という具合に、今・何を・どんなつもりで考えているのか考える。これを「メタ認知」という。
「メタ認知」で現状の自分を知ったら「どうしたら誘惑に負けないだろう?」という改善案を検討する。
行動とは考えることによって良い方向に進められる。流されているままでは何も変わらない。
はじめは誘惑にあらがえなくても良い。後から考えることを思い出して、実際に考えてみる。
考えることにも意志力は使われている。はじめは苦しくても考えることを続けられれば、次第に習慣になる。
「私は、考えて行動を変える」と心に刻みつける。
こうなったら、努力の下地はできたも同然だ。
「したいこと」の動機を分類する
「したいこと」には必ず目指そうと思った「動機」がある。
動機が不明確だと周りの声に影響され、いつも不安がつきまとう。
そのためにしたいことを分析して、自分でも理解していない「潜在的動機」を明らかにしておく。すると「こんなふうに言われても気にしない」というように対処を決められる。
動機の分類は以下の3つのステップで行う。
- 目標の設定
- 誰に向けて
- 不安の予測と対処
目標の設定
したいことがなにか具体的にする。「やせた〜い」とかじゃダメ。
ダイエットをして、80キロを50キロまで落としたい。
誰に向けて
誰にどう思われたいからその欲求が出たのかを検討する。もちろん自分自身の気持ちでもいい。
痩せたら、きれいになって自分に自信がつく。
痩せたら同僚に馬鹿にされない。
痩せたら婚活パーティーでモテるかもしれない。
不安の予測と対処
不安になって諦めないように、前もって対象方法を考えておく。
なかなか痩せなかったら?→体重はすぐには減らない。停滞期というのもあるらしい。もし1カ月経っても結果が出なかったら、ダイエットを成功した友だちのAちゃんに相談しよう。
同僚に無理だと笑われたら?→言わせておけばいい。結果を出せば何も言われない。むしろ、自分がきれいになりたいと思っているから痩せるんだ。他人は気にしない。
今のままでも仲のいい男性ができたら?→体重を落とせば他の不安が消える。その人も太っているから好きとは限らない。もしそうだとしても自分の体重を他人に支配されたくない。
以上のように不安に対してどうするか決めておけば、自信のなさによるあきらめは前もって防げる。
しかし不安は心の隙間から忍び込んくる。行動をはじめた後でも、不安を感じたらすぐに対処を考える。
努力の実行(30日間チャレンジ)
30日間チャレンジというのは、Google社のエンジニア:マット・カッツさんがTEDでプレゼンテーションした努力のテクニックの1つだ。
今までの自分を変える目標を1つだけ立てて、30日間続けるというシンプルな内容だ。これには「努力初心者」が取り組みやすい要素が詰まっている。
努力に必要な能力は意志力だ。意志力が自分を統制し、我慢をさせ、やるべきことを選択する。
どんな選択でも同じ意志力を使う。ジョギングに行くのも、満員電車に仕方なく乗るのも、歯を磨くのも。「トイレを流すためだけの意志力」はありえない。
努力に慣れていない人は、一度に複数の努力はできない。意志力が足りないのだ。
意志力を育み成功体験を得るには、なにか1つに特化する。ダイエットをしたいのなら、ダイエットに意志力を使う。その間ねぼすけを止める努力はしないほうが良い。
急がずに一つのことだけ達成してみよう。成功体験が自己統制の習慣を作る。習慣になれば複数のことでも同時に取り組めだす。
30日間チャレンジの目標設定では3つの要素に気を配る。
- 難しさ
- 時間
- タイミング
難しさ
例えば初めてピアノを引く人が、いきなりショパンの幻想即興曲を課題にするのは無理だろう。バイエルに挑戦するなど、初心者向けの課題を選ぶ。
時間
全く練習をしていなかったのに、いきなり5時間も集中力は続くのか?毎日1時間だけ取り組んでも十分な進歩だ。1時間が無理そうなら15分でもいい。まずはスタートをきるのが大事だ。
タイミング
することが決まったら「いつするか」をはっきり決めておく。
早朝・家に帰ってすぐ・夕食後・休日の午前中……など、そのタイミングになったら必ず行動を起こす。
何よりも大事にしたいのは、変わりたいという気持ちだろう。その思いに押されて無謀な挑戦をせず、自分のコーチになったつもりで練習計画を立てればいい。
おさらい
私は「なぜ努力ができないのか……努力をする才能がないのか……」と悩む時期を長々と過ごしてきた。変わろうとできずに、不幸な気持ちを抱えたまま、ずっと。
ある日に高熱が出た。2日続いた発熱から冷めた頭でふと「今日から変わろう」と考える。それから徐々に努力が習慣となり、自分の成長を楽しめるようになった。
私が努力を続けられているのは、仕組みを考えるすべを知っていたからだと思う。
たった一回の変わろうと思う勇気と、考えるすべを知っていれば、努力は誰でも継続できる。
まずはペンを取って計画を立ててみよう。