同期のカオリはいつも忙しそうにしている。どうやら「信頼感が高い」と上司から評価を得ているようだ。
彼女の周りでは良い雰囲気が醸成されている。職場の中で信頼関係を築くコツを知っているらしい。私にも教えてくれ……!
会社などの組織や地域・家庭では信頼関係が重要と、社会は私たちに口を酸っぱくして教えてくれます。
例え信頼関係がない職場だったら……想像したくないですよね。裏切りが横行し誰も頼れない中で活動しなければならない。
私たちに欠かせない信頼感はどうしたら高められるのでしょうか?
あなたの心は2つのメリットを信頼関係に求めているのです。
目次
仕事の信頼関係を築くために大切な「信頼感の醸成」
信頼とは「態度」、信頼感とは「感情」
個人的な解釈では、信頼とは「対外的な態度」の一種だと考えています。
態度は相手に対して行動を示します。相手を頼りたいなら、態度を示さないとなりません。
何によって信頼という態度は作られるのか?
それを知るために信頼の感覚的情報を検知したときに生まれる「信頼感」について押さえる必要があります。
信頼と信頼感は別の概念として考えたほうがわかりやすい。
少々強引に聞こえるかもしれませんが、信頼感を持っていても相手を信頼していない、という状態はありえる(後ほど説明します)。
お互いの交流が繰り返されると、損得が生まれる取引が行われます。物質的利益(お金・物など)の有り無しは問いません。
- 物質的利益あり:商取引(商品の売買)の場合
- 購入者:お金は支払ったけれど、期待通りの効果が出て満足できた
- メーカー:商品を購入してもらったので収入が入って豊かになり安心した
- 物質的利益なし:カフェで友だちに悩みを聞いてもらう
- 悩んでいる人:友だちが優しい態度で聞いてくれたから、苦しさが和らいだ
- 聴いた人:力になれたことが伝わった。貢献できてうれしくなった
お互いの心がポジティブに変化した場合、相手への好意が高まります。
利益を生む取引を繰り返すと、徐々に「この人は安心できるな」と感じられる。
つまり安心して頼れるという感覚が強くなります。
主に2つの要素が働くことで信頼感が増す。
- 明らかな利益を求める
- 安心感により無意識で信頼する
1.明らかな利益を求める
得をしたと感じたら快感を覚える。その結果、気持ちよくさせてくれた相手に対しての好意が深まります。
商取引ではお金と品物を交換しますよね。消費者がお金を支払ったら、販売者は商品を引き渡します。
前もって消費者は品物の価値を見積もる。「この品物だったら10,000円払ってもいいかな?」のように考えるわけです。
品物の購入に至った消費者は、自分の予測通りの商品だったら満足を感じます。
または予測を上回ったら感動し、下回ったら不満を感じる。
一方で販売者はそもそも利益を見込んで販売しているので、品物が売れただけで得を感じます。
利益を感じるのは商取引だけではありません。
普段の生活から私たちはさまざまな場面で得を感じている。例えば
YouTubeを何気なく見ていたら、ある投稿者の動画が面白かった。
その投稿者の個人ページをみると、おもしろそうなタイトルの動画が並ぶ。いくつか視聴したら期待通り面白かった。
気に入ったので、そのチャンネルに登録した。今でも定期的に視聴している。
例をもう一つ、
関連会社から出向してきた男性は、向井理さん似の超イケメン。しばらくのあいだ自分と外回りを同行するように決まった。
話してみたらとにかく優しくて気が利く。ルックスだけではなく性格にも好感を持った。
取引先の女性とすれ違うと、よく振り返られる。なんだか私まで誇らしい気分になれる。
いつの間にか同行を待ち望む自分がいる。毎日会社に行くのが楽しい。
つまり、
もう一度同じ経験をしたいと思えるほど、
明確な利益があれば、信頼感は高まります。
この明確な利益を得ることが、信頼感に求める一つ目のメリットです。
2.安心感により無意識で信頼する
初めて合った人をなぜか信頼した経験はないでしょうか?
利益を得る前から、出会って間もない対象に信頼感を覚えることがあります。
それは自分の無意識下にある記憶が、相手を好意的に評価しているからでしょう。
その例でわかりやすいのは権威です。
肩書や一定の職業には信頼感を呼び起こす力が備わっています。
呼び出しの声に導かれ診察室へ入る。初めて見る白衣を着た先生の前に座ると、私の体が緊張した。
先生の言うことへ黙って耳を傾ける。専門用語が多くよくわからなかったが、なぜか疑う気持ちは起こらなかった。
悪い体調を自分では治療できないから病院に行く。病院という存在を経験的に信頼しているから頼るのです。
しかし初めて見る先生をなぜ信頼してしまうのでしょうか?
病院の中には医者が無条件に含まれると考えるからでしょう。病院にひも付いている信頼が、医者にも適用されるということです。
また医者は先生と呼ばれるように、昔から上級の職業だと考えられている。医者を立場が上の存在だと感じ、緊張してしまう人もいるでしょう。
このように権威には安らげる感情ではなく、高い能力を好意的に評価する信頼感が働きます。
もうひとつ権威の例を見てみましょう。下の2つを読んでどちらが信用できそうか選んでください。
- 名前を聞いたことのない会社が販売している、1,000円のダイエット補助食品
- 大手製薬会社が販売している、10,000円のダイエット補助食品
まずほとんどの人は下の10,000円の商品の方が効き目は高いと信頼する。知名度や価格の高さを見て、無意識で権威を感じるからです。
大手製薬会社の商品は高いというデメリットがあるため、お金に余裕がある人が購入しそうです。
この2つの商品の効き目が、実際は全く同じだったったとしても、一般人には判断が難しい。
そのため効き目が良さそうな10,000円の商品がよいものだと信じこめば、迷う心を落ち着かせられます。
実際に効き目がよいと思い込めば、なぜか治療効果が良くなっちゃう。気分的に良いって信じ込む「プラセボ効果」ってやつです。
無意識の信頼は権威の他にもあります。
- 人生について相談したとき、若者の意見より、年長者の意見が正しいと思いこむ
- 信頼している別の人に、新しく出会った人の顔や雰囲気が似ているなら信頼する
- 感覚的な言葉が羅列するより、状況を想像できるチャッチコピーをうたう広告に誠実さを感じる
これらについても具体的な根拠がないのに、なぜか信頼感が増す。
もちろん人によっては感じ方が異なるので、若者の意見を信用する人もいる。
信じる理由は人それぞれあるのです。
つまり無意識のうちに信頼する理由は、
- これまでの経験で安心する理由を手にしており、その理由が新しい存在に適用された
からです。新しい存在に出会ったときは、無意識で自分の記憶を掘り起こし相手がどんな人間か評価する。
評価しないと接し方がわからないからです。ポジティブな評価をすると、出会って間もないのに信頼できます。つまり、
安心したいから信じる、というわけでなのです。これが2つ目のメリットになる。
- 利益
- 安心
一言でまとめると
利益を安心して得られる感覚
が、信頼感なのです。
これでは信頼関係は築けない。盲信しがちな2つの危険な傾向
根拠がないのに信じる、盲信は危険
次は短絡的な信頼「盲信」について押さえていきましょう。
信頼するための具体的根拠がないのに、相手に対して好意的な印象を持つことです。いくつか例を出すと、
- 一目ぼれの恋をして相手に尽くしたいと接近を試みたが、付きまとわないでと嫌がられた
- ブランド物を身にまとった人から金持ちになれるノウハウを教えるセミナーを紹介され、高額のお金を支払ったが効果はなかった
- 隣に住んでいる農家の人を信じて高額な無農薬野菜を毎日購入していたが、ある日農薬を使っていることが判明した
あえて悪い結果の例にしました。もちろん短絡的な信頼でも、相手が自分の利益を考えてくれれば信頼関係は成立します。
ただし信頼は成功体験の積み重ねによって築き上げられる。
相手が信頼に足り得るかわからないのに、大きな投資をして損得を委ねるのは危険でしょう。
盲信しそうな考え方の過ちを押さえて、失敗を未然に防ぎたいですよね。
2つの盲信しやすい傾向を知り、安全な人間関係を育みたい。
- 表面的な情報に心を揺さぶられる性格
- 見れば見るほど好きになる
1.表面的な情報に心を揺さぶられる性格
前述でも説明しましたが、信頼を築く・崩すの判断は、自分の記憶がもとになっています。
例えばお兄さんが大好きな人は、お兄さんに雰囲気が似た人に対して信頼を感じやすい。
表面的な情報とは人が表現・表出している情報です。読み取りやすく個人を「こんな人ね」とラベル貼りをするときに使う。
- 優しいお兄ちゃんに似ている、優しそうな人
- 一流大を卒業しているので、正しいことを言う人
- ブランド物を身につけているから、お金持ちの人
一方で簡単には「信じない」と信じ込む人もいるでしょう。
- 優しいお兄ちゃんに似ているから、疑ってかからなければ行けない人
- 一流大を卒業しているので、決められたことしかできない人
- ブランド物を身につけているから、人をだましそうな人
信じやすい人はだまされる危険が高まる。
一方で信じないようにしている人は相手の良いところに気づく機会を失います。
特に偏見や差別のような攻撃的な思いを持ってしまうと、相手を傷つけてしまう。
相手を評価するために、表面情報が欠かせないのは間違いありません。
しかし相手がどんな人か慎重に判断したほうがいい。表面情報に翻弄されて相手にだまされるかもしれない。
表面情報の例をいくつかあげましょう。
- 容姿
- 身なり
- 言動
- 職業
- 学歴
- 評判
- 自作のプロフィール
などです。まだまだたくさんあると思います。
気をつけなければならないのは、これらの情報は発信者が統制できるってことでしょう。
つまり表面情報を信じ切ると、相手の思惑通りに信頼させられる。
誠実な人が相手ならよいですが、相手があなたをだまそうとしていたら……恐ろしいですよね。
偏見の原因ってなに?恐怖が人間を支配する、思考のメカニズム
社会のいたるところに偏見は存在する。国籍や学歴・地域・趣味・趣向…。偏見は人間の正当な権利と自由な表現を阻害してしまう。 偏見を持っていないと思っている人は、偏見にまみれた人を偏見的に嫌う。 人々の営 ...
2.会えば会うほど好きになる
「そんなに顔は好みじゃないけれど……」私が毎日通うコンビニで勤めている笑顔が優しい店員さんが、だんだんステキに見えてくる。
特筆して嫌なところがない人と毎日会う機会があれば、その人は記憶の思い出しやすい場所に居座ります。
相手へ注意を払うことは、関心といいますよね。
関心を向けた回数が多ければ相手への興味が高まる。これが親近感につながるのです。
ある対象に何度も繰り返して会うことで、徐々に好感を持つ事がある。それを心理学では「単純接触効果」と呼びます。
毎朝通っていたコンビニで勤める、私が気になっている店員さん。その人が翌年の新入社員として自分の会社に入社してきたら……?
運命的な出会いを感じるかもしれません。会っているだけで性格を知らないのに、信頼感を意識してしまう。
また単純接触効果は人だけに限定せず、物質や情報にも影響します。
ドラッグストアで目薬を選んでいるときに、ある商品を陳列棚に見いだす。
家に帰って毎週楽しみにしているテレビ番組を見ていたら、買った目薬のコマーシャルが流れていた。
ってことも考えられます。毎週欠かさずに見ていた目薬を、知らない間に信頼していたんですね。
好きの反対語は無関心?嫌い?この論争を終わらせる心理学的考察
「気にすんなって、”好き”の反対は”無関心”だから。」と、ドヤ顔でいう友だち。何度その定型文を聞いたことか。 好きの反対は嫌いじゃないか!?と友だちにツッコミたくなるも根拠を示せないので我慢。そして思 ...
おさらい
信頼できると評価する感覚「信頼感」は、さまざまな要素で揺れ動きます。
自分の損得を相手に委ねるという、自分自身への影響が強い行動をしているわりに、けっこういい加減な理由で相手を信頼してしまう。
フィーリングで出会った人に好意を持ってしまうのは、今までの記憶が影響しているんです。過去の情報でしか相手を評価していない。
一目惚れや親近感など、それらが悪いとは思いません。
しかし自分の中に信頼感を評価する太い一本の軸を通していないと、信頼感は必ず揺れ動いてしまいます。
次の記事で信頼をするための大切な軸についてお話ししましょう。
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