自分を支えるものといえば、家族・ペット・仲間・栄光・地域……いろいろとあるが、最終的に頼れるのは自分だ、と世間ではよく言われている。
自分というのは不確かなものだ。自分を頼るなんてイメージがわかない。
仕事で失敗したとき上司から「信念を持てばいいよ」と言われた。まっすぐな気持ちで取り組んでいないからダメだということらしい。
「信念」はものすごくあやふやだ。簡単には見つからない。
しかし信念を持てれば揺れ動く情けない自分を正し、まっすぐ誠実な生き方をする力になる。
たった1カ月で、
一生モノの信念を見つける方法を紹介する。
自分の中に眠っている信念を見つけよう
他人任せの信念はありえない
正しいと信じる自分の考え。
信念の意味はこのように定義されている。「アリは甘いものが好きだ」と考えることも1つの信念だ。つまり信じていれば全てが信念である。
アリの目の前に鶏肉とドーナツを置いたら、アリたちは鶏肉に群がった。「アリは甘いものが好きだ」という信念は覆される。
「かならず勝つ」と思って試合に出たが負けてしまう。信念は覆され心が傷ついた。他人や自分自身を責めることでいやそうとする。
しかしこのように外部の要因により覆される信念は自分を支えられない。何かのせいにすると考えは必ずブレる。
信念を作りたい人は筋が通ったぶれない考えがほしいと思っているはずなので、ここで話す信念はその思いに合わせて考える。
では自分を支える信念とは何か?
それは自分に問いかけて初めて分かる。
信念を持たないと信頼されない
誰かに「信念を持て」と言われたとき、または「信念を持ちたい」と意識したときは不満を感じているはずだ。その理由は主に3つある。
- 判断がブレる
- 努力が続かない
- 優柔不断
判断がブレる
昨日と今日で言っていることが違うなど、筋の通っていない判断を下してしまう。
周りの人を混乱させ、信頼感を失っていく。
努力が続かない
頑張ろうと決意したが、日々の重たい気持ちに心が揺れ動き、努力を維持できない。
周りの人に注目されていたが、中途半端な行動を見られて信頼を失う。
優柔不断
判断を期待されているときに優柔不断になって決断できない。人の話に影響されて気持ちが右往左往する。
周りの人は優柔不断にイライラして、信頼できない人だと思われる。
以上のように信念を持たないと社会的な信用を失う。人を指導する立場には立てないだろう。
信念を持つだけでこれらの難しいシチュエーションでも適切な判断を下しやすくなる。
自分を突き動かす根本的な思想が信念というわけだ。
根本的な信念の見本
1つの根本的な信念が決断を支える
信念は根本で一つになる。ぶれない考えはここから導かれるのだ。
自分の根本的な信念がさまざまなシーンの難しい選択で役に立つ。このように信念は入れ子構造を持っている。根本に近づくほど抽象的になり柔軟に物事の対処を行う。
よくあるシーンでは個別の決まった信念を置くといい。信念が明確だと決断が早い。人に説明を求められても適切な考えが言える。
全てのシーンで信念を持つことは無理だ。多くのシーンは根本的な信念で柔軟に対応する。
信念は自分に向き合って見つける
インターネットや書籍で自分の信念は見つけられない。信念を見つけるルールを度外視しては自分のものにはならないのだ。
信念は自分の心に向き合って見つけていく。すぐ見つかるものではない。思考を繰り返すことでやっと手に入る。
自己啓発本などは考え方の参考にとどめておく。賢人の光る言葉を題材にし自分で考えを磨けばいい。
自分の心に向き合って考える力は、抽象的な信念を具体的に活用するために必要だ。
抽象的な信念を柔軟に解釈するには、連想ができる思考力が要求される。
信念を持つためのもとは道徳にある
道徳が私益と公益を両立させる
道徳について考えると自分の大切な思いが見えてくる。つまりそれが信念になるのだ。
人々が、善悪をわきまえて正しい行為をなすために、守り従わねばならない規範の総体。(中略)、自発的に正しい行為へと促す内面的原理として働く
道徳は正しい行為をするための規範である。
正しい行為とは「社会が幸せに向かう行動」と考えてよいだろう。そのため自分自身の利益のみを追いかける信念はありえない。
自分自身の利益のために他人は傷つけられない。
価値の交換がなければ資源はいつか底をつく。社会の利益は自らの幸福にもつながるというわけだ。また度の過ぎた利己主義は法律により制裁される。
道徳心を持っていれば社会的な適応をかなえながら、自分にとって利益の多い決断が可能になるのだ。
決断を惑わすものは自分の感情
道徳を重視するのは、信念を突き通せない原因が心の中にあるから。外部要因で覆される信念はありえない。
信念は前もって考えられる恐れや欲に対して、自制心を発揮する目的を持つ。それはほとんど道徳的な課題と共通する。
道徳は人間の心の弱さによる迷いを規範によって正す。そうすれば霧が晴れたように決定事項が見えてくる。
自分なりの道徳観が信念になる
道徳は理想とする方向性が示しているが、決まった行動を教えてくれない。
道徳観に行動を強制されると自由は遠のく。
「人を殺してはいけない」というのは一般化された道徳観だ。
現代の日本人ならしっくりとくる考え方だが、時間や地域などの軸を変えると殺しは単純に良い悪いとは決められない。
- 死刑は?
- 戦争は?
- 侵略してきた宇宙人は?
- クジラが意思疎通してきたら?
このように一面から判断できない問に対して、一般化された道徳観では答えが出ない。
ほとんどの人は自分が人を殺すことはないと思っているだろう。しかし一度は考えてみたほうがいい。
生死にかかわらなくても誰かを傷つける選択は一生のうちに何度も経験する。
厳密にいえば誰でも毎日なにかの犠牲の上に生きているのだ。
世界中の人が鶏肉を食べなくなったら鶏は自分の責任で生命を全うできる。その車は動くたびに環境破壊をしている。
一般化された道徳観を疑って自分なりの道徳観を見いだす。
どんなときにもぶれない、
自分の信念になる。
1カ月でできる!根本信念の見つけ方
基本ルール
毎日30分間をかけて小学生の道徳課題について考えてみる。
と考えた人もいるだろう。しかし小学校レベルの道徳課題に自分の考えが持てている大人はめちゃくちゃ少ない。
今回は小学校高学年レベルのテーマで考えていく。テーマは小学校学習指導要領の指導要点を使う。
用意は紙やパソコン、スマホのメモ帳などの考えを書き出せるものだけだ。
毎日30分間かけるのは負担が大きいだろう。時間が取れない人はテーマに2日間かけたり、1週間で一つのテーマを終わらせたりしてももいい。
その分の期間は伸びるが、信念が決まれば自分の人生に良い影響を与える。
作業は大きく分けて3つ。
- 1〜22日目:22個のテーマを検討する
- 23〜27日目:4つの観点を整理する
- 28〜30日目:自分の根本的な信念を導き出す
テーマの検討例
テーマの検討は自由に行っていい。
しかし考えが浮かばなかったら、Q&A形式で考えを深掘りしてみよう。
まず反対意見を問題にする。それから角度を変えていろいろな問題を発見したい。
テーマ)自由を大切にし,自律的に判断し,責任のある行動をすること。
自由と、責任のある行動は矛盾する?
自由だけにこだわればどんなことでも正当化される。ずっとゲームをしていてもいい。しかし本当にするべきことは不自由なことかもしれない。
不自由に縛られなければいけないの?
例えば仕事のために新しい勉強をするのは、今よりも制限がない自由な行動を目指しているのかもしれない。よって不自由にみえても自主性があれば自由かもしれない。
自律的な判断があれば自由と責任は両立する?……
このようにどんどん深掘りしてみる。最低でも5回は深ぼろう。多ければ多いほどいいし、全く違う角度から検討してもいい。
テーマによっては拒否反応を感じるかもしれない。それでも自分なりの言葉で解釈する。素材を餌にして自分の考える力を育てるのだ。
絶対に注意してほしいことが一つ。
- 説明をうのみにせず、疑ってかかること。
もしかしたら自分の立場が明確にならないかもしれないが問題はない。
1つのテーマを通して自分がどんな道徳観を持っているのか確かめるつもりで考える。
1〜6日目:A 主として自分自身に関すること
1日目善悪の判断,自律,自由と責任
自由を大切にし,自律的に判断し,責任のある行動をすること。
2日目正直,誠実
誠実に,明るい心で生活すること。
3日目節度,節制
安全に気を付けることや,生活習慣の大切さについて理解し,自分の生活を見直し,節度を守り節制に心掛けること。
4日目個性の伸長
自分の特徴を知って,短所を改め長所を伸ばすこと。
5日目希望と勇気,努力と強い意志
より高い目標を立て,希望と勇気をもち,困難があってもくじけずに努力して物事をやり抜くこと。
6日目真理の探求
真理を大切にし,物事を探究しようとする心をもつこと。
7〜11日目:B 主として人との関わりに関すること
7日目思いやり,感謝
誰に対しても思いやりの心をもち,相手の立場に立って親切にすること。
8日目感謝
日々の生活が家族や過去からの多くの人々の支え合いや助け合いで成り立っていることに感謝し,それに応えること。
9日目礼儀
時と場をわきまえて,礼儀正しく真心をもって接すること。
10日目友情,信頼
友達と互いに信頼し,学び合って友情を深め,異性についても理解しながら,人間関係を築いていくこと。
11日目相互理解,寛容
自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,謙虚な心をもち,広い心で自分と異なる意見や立場を尊重すること。
12〜18日目:C 主として集団や社会との関わりに関すること
12日目規約の尊重
法やきまりの意義を理解した上で進んでそれらを守り,自他の権利を大切にし,義務を果たすこと。
13日目公正,公平,社会正義
誰に対しても差別をすることや偏見をもつことなく,公正,公平な態度で接し, 正義の実現に努めること。
14日目勤労,公共の精神
働くことや社会に奉仕することの充実感を味わうとともに,その意義を理解し,公共のために役に立つことをすること。
15日目家族愛,家庭生活の充実
父母,祖父母を敬愛し,家族の幸せを求めて,進んで役に立つことをすること。
16日目よりよい学校(会社)生活,集団生活の充実
先生や学校(会社)の人々を敬愛し,みんなで協力し合ってよりよい学級(チーム)や学校(自会社)をつくるとともに,様々な集団の中での自分の役割を自覚して集団生活の充実に努めること。
17日目伝統と文化の尊重,国や郷土を愛する態度
我が国や郷土の伝統と文化を大切にし,先人の努力を知り,国や郷土を愛する心をもつこと。
18日目:国際理解,国際親善
他国の人々や文化について理解し,日本人としての自覚をもって国際親善に努めること。
19〜22日目:D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること
19日目生命の尊さ
生命が多くの生命のつながりの中にあるかけがえのないものであることを理解し,生命を尊重すること。
20日目自然愛護
自然の偉大さを知り,自然環境を大切にすること。
21日目感動,畏敬の念
美しいものや気高いものに感動する心や人間の力を超えたものに対する畏敬の念をもつこと。
22日目よりよく生きる喜び
よりよく生きようとする人間の強さや気高さを理解し,人間として生きる喜び を感じること。
23〜27日目:観点別に考えをまとめる
A〜Dまでの4つの観点で自分の思考を深めた。次はこの考えをまとめていく。
1つの観点に付き4〜7つのテーマがあった。観点ごとにテーマをまとめた要約を作る。
A→Dの方向性で関わる対象は広がっていく。
- A:個人
- B:身近な人
- C:コミュニティ
- D:人のあり方
1カ月も自分のことに向き合ったら、考える力が成長している。はじめに考えたことへ違和感を覚えるようなら、もう一度考えてみよう。
細かい検討を繰り返し、洗練した考えにまとめる。
例)私の自分自身に向き合う姿勢は一言で言うと☓☓だ。いつも△△を大事にし、□□であろうとする。
28〜30日:自分の信念を決める
全てを総合して根本的な信念を見つける。改めて検討しなくても自分の信念は見えてきているはずだ。
自分の考えを支えた強固な根拠は何だったのか?それは一言で述べれる。本当にアレって思うくらいの短いフレーズになるがそれでいい。
見つけた信念を3日間かけて自分に根付いた考えなのか調べる。
机に向かって考えなくてもいい。生活の場で実際に信念を活用してみる。いつも頭の片隅に信念をおいておく。
三日間かけて検討し考えがぶれないなら、
自分の信念が見つかったのだ。
例)私の大事にしている信念は〇〇である
信念を生かすためには練習が必要だ。心が不安定になったらすぐさま思い出す。
もし決断が良くない結果を生んだとしても惑わされないようにする。1つの間違いは全体を見渡すと小さい。
信じるものがあれば、感情を支配されず幸せな人生を目指せるのだ。
おさらい
信念とは人生における普遍的な態度だと思う。
時代の移り変わりで善悪は姿を変える。コピーアンドペーストの思想を持っていると、新しい時代に対応できない。
信念を持ち社会の幸せを求めていけば、いつの次代でも人を愛し、人に愛される態度を持てる。
信念は自分の幸せを見つける道しるべになるのだ。