一生懸命反復して勉強し、難関校に合格する。これまでの学習方法でもその目標は十分に達成されます。それでもアクティブラーニングが必要なのでしょうか?
社会人になって初めて知る、答えのない世界の恐ろしさ。アクティブラーニングの効果は、新社会人が身につけてほしい、生きる能力のためにあります。
目次
アクティブラーニングが効果的と考えられる要素
従来の学習とアクティブラーニング、学びの質が違うようです。
学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。
アクティブラーニングの目的は、汎用的能力を高めることと言えます。汎用的能力とは、仕事などの社会の場面で生かされる社会人の基礎力と言い換えられます。
認知的、論理的〜と言われても、抽象的でよくわかりませんね。少しかみ砕いてお話します。
①事実と考えを分け、思慮深く思考する
事実とは、その問題で実際にわかっていることです。
考えとは、その問題や事実から想像できる可能性や、考えに影響する要素と解釈してください。
筋道を立てて考えるには、思考の整理が必要です。事実と考えを明確にし、考えるための材料とする。それは結論を導き出す近道と成るでしょう。
そして、事実と考えを分けることで、批判的思考力の向上へつながるでしょう。
- 批判的思考力とは
- 問題を単純化(ステレオタイプ化)することなく、考えられる根拠を多様な視点から詳細に分析する力のこと。複雑な問題に取り組むときには、発揮したい能力
アクティブラーニングで学ぶには?
例えば、グループワーク。大きな紙に思いついたことを付せんをペタペタ貼り付ける。それをグループで話し合いながら事実と考えに分類する。そこからさらに考えを深める……。
図表を用いる、マインドマップを作るなど、いわゆるロジカルシンキングのツールを使うと、自分の考えがより見えてくるので取り入れましょう。
②自分の心を見つめ、立ち止まって考える
「なぜ今、私はこの気持ちなのだろう」「友達がいったことをどのように受け止めればいいのかな?」
自分の心を見つめるとは、内省(ないせい)をする事。内省をする力と習慣が身につきます。
内省をする習慣がつくと、感情に振り回されず、注意深く考える力がつきます。
友達と考えが違っても、その考えを受け止め違いを分析する。それを自分の考えに取り入れる。
内省は先ほど述べた批判的思考の一要素でもあり、認知・思考力を高める重要な活動です。
そして、メタ認知の能力が発達します。
- メタ認知とは
- それを、自分がどうやって知りゆくのか(認知)
- その認知を、自分がどう取り扱っているか(方略)
- その認知で、自分はどう感じているか(情動)
- このように、自分の認知をモニタリングする機能のこと
メタ認知能力が向上すると、内省をする時の材料が大幅に増えます。
深く考える力につながり、さらに自分の心を適切に扱える。心がたくましく育ち、少し傷ついただけでは落ち込みません。
アクティブラーニングで学ぶには?
話し合いの前に「自分の意見を言う」「相手の考えのよいところを見つける」「考えを受けてどう感じたか発表する」など、活動に枠を設けると良いですね。
内省的な思考が引き出しやすい環境を整えましょう。
③他人を認め、問題を協力して解決する
友達と一緒に協力して課題解決する、アクティブラーニングの王道です。そこでは必ず、コニュニケーション能力を駆使します。周りの人を傷つける態度では、話は深まらず学びの質は下がります。
「相手の考えを受け止めて、自分の意見を伝える。」「初めから否定せず、多様な考えがあることを喜び協力して検証する。」このような活動をすれば、チームワークも高まり、学びが加速するでしょう。
学習外での友人関係も改善するでしょう。むやみに人に同調して築いた、神経質な友人関係を見直せます。どんな友達にも関心が高まり、その人の行動、考えに感動できる感性を持てる。大人にとっても最重要スキルですね。
アクティブラーニングで学ぶには?
課題の難易度を、個人では難しくグループで何とか解けるレベルに設定しましょう。
そうすると、個人がコミュニケーション能力を駆使して、グループで課題に取り組みます。その結果、課題解決時の達成感が高まり、集団凝集性(グループの価値がUP、仲間意識がUP)が深まります。
④経験して学び、一生モノの知識にする
まず、人間の記憶にはいくつか種類があります。そのうち勉強には「意味記憶」と「エピソード記憶」が主に関わってきます。
- 意味記憶とは
- 長期記憶の一種で、単語(意味・概念)が関連する他の単語に結びついて記憶されている(意味記憶のネットワークモデル)。
- エピソード記憶とは
- 長期記憶の一種で、事象や出来事が時間や場所に結びついて記憶されている。
両方とも長期記憶です。学んだことがこの段階まで到達すれば、記憶を忘れ(思い出せない)にくくなっているはずです。
しかし、おぼえたいことを意味記憶にするには、かなり反復して練習しなければいけません。
あなたは高校時代に習った数学の公式をはっきりと覚えていますか?そう、通常意味記憶には、多大な時間が必要なのです。
そこで、エピソード記憶です。おぼえたいことを時間や場所に結びつけて記憶します。
アクティブラーニングは活動が中心。学ぶ時に経験した出来事や苦労・喜びが記憶に結びつき、忘れない記憶に変容するのです。
また、記憶を思い出す(再生)ときには手がかりが必要です。意味記憶は、それを再生するための手がかりを別におぼえなければなりません。
エピソード記憶は、おぼえたいことに活動が関連します。例えば、覚えた経験(時間)、理科室で〜(場所)、情景(映像)などが関連するので、再生にとても有利です。
アクティブラーニングで学ぶには?
活動に物語性を取り入れる、活動の段階を明確にする(個人→ペア→グループなど)、教室を出てみる。など、色々な事例を参考にして、活動のバリエーションを増やすと良いでしょう。
それと、必ず振り返りをするようにしましょう。記憶はインプットとアウトプット双方がないと定着しません。振り返りをして脳にしっかりと記憶の痕跡を残しましょう(脳の可塑性)。
まとめ
アクティブラーニングは何に効果的か。
その答えは「感情に惑わされず深い思考をし、仲間と協力して課題に取り組み、忘れない学びをする。そして、人を平等に認める優しい心を育む。」
最後に、この記事は子供のアクティブラーニングについて述べています。しかし、大人にもアクティブラーニングを実施してもらいたいのです。私たちはアクティブラーニングで学んだ経験が少ないのですから。
日常で使えるアクティブラーニングを用い、大人も能力を高めましょう。これからは知的基盤社会と言われています。生涯学習に取り組みましょうね!